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第42回日本脳卒中学会学術集会(STROKE 2017)2017年3月16〜19日,大阪

急性期病院でのDOAC導入症例における転院後の継続状況

2017.4.11
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STROKE 2017取材班
貫井咲希氏
貫井咲希氏

 急性期病院において,直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)が導入された症例が転院する際,回復期病院への転院では投与が継続されていることが多かったが,療養型病院や老人保健施設への転院では,多くの場合ワルファリンへの変更を余儀なくされている-3月16日,第42回日本脳卒中学会学術集会(STROKE 2017)にて,貫井咲希氏(聖マリアンナ医科大学神経内科)が発表した。
(指導医:同准教授・秋山久尚氏,同教授・長谷川泰弘氏)

●背景・目的

 DOACは,臨床試験でワルファリンと同等またはそれ以上の有効性および安全性が確認され,2011年より使用可能となった。近年,非弁膜症性心房細動による心原性脳塞栓症の発症抑制について,ワルファリンに代わりDOACが導入される例が増えている。しかし,急性期病院からの転院先において,DOACが引き続き処方されているか否かの実態は十分に把握されていない。本研究では,急性期病院からの転院先を対象に,アンケート調査を行った。

●方法・対象

 2016年7~9月,急性期病院である聖マリアンナ医科大学病院より,転院先として頻回に利用されている近隣の33病院・施設(回復期リハビリテーション病院[回復期病院]10施設,療養型病院10施設,老人保健施設[老健]13施設)の責任医師を対象に,抗凝固薬,特にDOACの使用状況についてのアンケート調査を行った。回答は無記名式で,回復期病院5施設,療養型病院5施設,老健13施設の合計23施設より回答が得られた。全体の回収率は69.7%であった。

●結果

1. DOAC服用例の転院受け入れ時の状況

 DOACを服用している患者の転院を決定する際,転院先の施設において受け入れに抵抗や問題があったかどうかについて,DOAC発売当時と現在に分けて尋ねた。「問題なし」の回答は,回復期病院では発売当時の80%から現在は100%,療養型病院では20%から60%,老健では31%から39%となった。転院前に薬剤変更を求めたケースは,回復期病院では発売当時の20%から現在では0%,療養型病院では60%から40%,老健では69%から62%であった。療養型病院では,発売当時20%がDOAC処方を理由に転院を断ったと回答したが,現在では0%であった。

2. DOAC投与例に対する対応

 DOAC発売当時,療養型病院では4/5施設,老健では11/13施設でDOACを採用していなかった。抗凝固療法について複数回答で尋ねたところ,療養型病院では3施設,老健では10施設でDOACからワルファリンへ,また,それぞれ1施設,2施設では抗血小板薬へ変更していた。

 現在は,回復期病院では全13施設で4種類すべてのDOACを採用していた。療養型病院でDOACを採用していたのは2/5施設で,このうち4種類すべてのDOACを採用していたのは1施設のみであった。老健では6/13施設で何らかのDOACを1種類のみ採用していた。4種類すべてを採用していた施設はなかった。

 前医から処方されていたDOACと同じ薬剤がない場合の対応については,療養型病院(5施設)ではワルファリンへ変更するとの回答が3施設,その施設で採用されているDOACへ変更が1施設,抗血小板薬へ変更が1施設であった。老健(13施設)ではそれぞれ7施設,4施設,1施設で,未回答が1施設であった。

 現在もDOACを採用しない理由について自由記述で尋ねたところ,「薬価が高い」が9施設で,「中和ができない」「出血合併症が怖い」がそれぞれ1施設ずつあった。

●考察

 DOAC発売当時,急性期病院でのDOAC導入症例は,療養型病院や老健への転院に困難をともなうことがあった。現在,それは解消されつつあるが,いまだに不十分である。転院のために抗血栓薬の変更が必要とされる場合や,転院後の病院・施設でDOACからワルファリンや抗血小板薬への変更となる可能性も示唆された。

 今回は限定的な地域,少数施設におけるアンケートであり,詳細な実態をとらえるためには,調査地域や対象施設数の拡大が必要と考えられた。

●結論

 急性期病院においてDOACが導入された症例が転院する際,回復期病院への転院では問題なくDOACが継続されていることが多かった。しかし,療養型病院や老健では,薬価が高いなどの理由でDOACが採用されていない施設があり,転院時には多くの場合ワルファリンへの変更を余儀なくされているという実態が示された。


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