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第81回日本循環器学会学術集会(JCS 2017)2017年3月17〜19日,金沢

リバーロキサバンによるアテローム性動脈硬化抑制の可能性

2017.4.7(5.26修正)
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JCS 2017取材班
伊藤祐輔氏
伊藤祐輔氏

リバーロキサバンは第Xa因子(FXa)によるprotease-activated receptor-2(PAR-2)経路の活性化を阻害し,オートファジーを活性化することで,アテローム性動脈硬化を抑制する可能性を示唆-3月17日,第81回日本循環器学会学術集会(JCS 2017)にて,伊藤祐輔氏(東京医科歯科大学循環器内科)が発表した。

●背景・目的

 FXaはアテローム性動脈硬化の進展に重要な役割を果たしている1)。これまでに,直接FXa阻害薬であるリバーロキサバンが急性冠症候群患者の心血管死を減らすことや2),マクロファージによる炎症反応の活性化を阻害して,動脈硬化性プラークの進展を阻害することが報告されている3)

 FXaによるアテローム形成はPAR-2活性化を介していることが示唆されている4, 5) 。また,マクロファージ内のオートファジーはアテローム性動脈硬化に対して保護的に作用し6),オートファジーの機能不全はインフラマソームを活性化させ,アテローム性動脈硬化を進展させるとの報告がある7)

 そこで,FXaがPAR-2経路の活性化を介して,マクロファージ内のオートファジーを抑制することにより,炎症反応を活性化し,アテローム性動脈硬化を進展させているとの仮説を立て,検証を行った。

●方法・結果

1. FXa活性とオートファジーの抑制

 高脂肪食を20週間与えたApoE欠損型マウス(高脂肪食+ApoE欠損型マウス)は,野生型マウスと比較し,血漿FXa活性が有意に上昇し,アテロームが形成された。しかし,リバーロキサバン(12mg/kg/日)投与により,血漿FXa活性は有意に低下し,アテローム領域は有意に縮小した(p<0.05)。

 さらに,アテロームに存在するマクロファージ内のオートファゴゾーム数を観察したところ,高脂肪食+ApoE欠損型マウスと比較してリバーロキサバンを投与した高脂肪食+ApoE欠損型マウスでは,その数が有意に増加していた(p<0.05)。

2. mTORリン酸化を介したオートファジーの抑制とインフラマソームの形成

 つぎに,RAW 264.7マクロファージ(RAW cell)を用いたin vitroの検討を行った。RAW cellに7-ketocholesterol(7KC)処理を行い,オートファジーを誘発。ウエスタンブロッティング法によりLC3-II蛋白(オートファジーのマーカー)の発現を確認した。そこにFXaを添加したところ,オートファゴソーム数は有意に減少し,LC-3-II蛋白の発現も抑制されていた。また,FXaの添加によってmTORリン酸化も促進されていた。ここにリバーロキサバンを追加すると,FXaによるオートファジー抑制作用は減弱し,mTORのリン酸化も抑制された。

 以上の結果から,FXaはmTORのリン酸化を介してオートファジーを抑制しており,このシグナルはリバーロキサバンにより阻害されることが示された。

 また,7KC処理を行ったRAW cell にFXaを添加すると,インフラマソームを形成する蛋白(NLRP3,Caspase-1),およびインフラマソームの活性化で放出されるIL-1βの発現が亢進することも明らかになった。ここにリバーロキサバンを追加すると,これらの発現は抑制された。in vivoにおいても,免疫染色法を用いて,高脂肪食+ApoE欠損型マウスのアテローム中にNLRP3が発現していることを確認した。一方,リバーロキサバンを投与した高脂肪食+ApoE欠損型マウスでは,NLRP3の発現が著明に減少していた。

 in vitroおよびin vivoの検討から,FXaによってインフラマソームの形成が誘導され,それをリバーロキサバンが阻害することが示された。

3. PAR-2経路を介したインフラマソームの活性化

 つぎにPAR-2欠損マクロファージを作製し,7KCによりオートファジーを誘導した。このマクロファージにFXaを添加しても,mTORリン酸化およびインフラマソーム形成の亢進はみられなかった。この結果から,FXaによるインフラマソームの活性化には,PAR-2が関与していると考えられた。

 高脂肪食を与えたApoEとPAR-2遺伝子の二重欠損型マウスは,高脂肪食+ApoE欠損型マウスと比較して,アテローム性プラーク領域が有意に減少していた(p<0.05)。

●結論

 FXaはmTORのリン酸化を含むPAR-2関連シグナルの活性化を介してオートファジーを阻害し,インフラマソーム形成を増強させることでアテローム形成を促進させることが明らかになったが,これはリバーロキサバンにより抑制された。

文献

  • Bohm A, et al. Cardiovascular role of angiotensin type1A receptors in the nucleus of the solitary tract of mice. Cardiovasc Res 2013; 100: 181-91.
  • Mega JL, et al; ATLAS ACS 2-TIMI 51 Investigators. Rivaroxaban in patients with a recent acute coronary syndrome. N Engl J Med 2012; 366: 9-19.
  • Hara T, et al. Rivaroxaban, a novel oral anticoagulant, attenuates atherosclerotic plaque progression and destabilization in ApoE-deficient mice. Atherosclerosis 2015; 242: 639-46.
  • Bono F, et al. Factor Xa activates endothelial cells by a receptor cascade between EPR-1 and PAR-2. Arterioscler Thromb Vasc Biol 2000; 20: 107-12.
  • Sandberg WJ, et al. Inflammatory interaction between LIGHT and proteinase-activated receptor-2 in endothelial cells: potential role in atherogenesis. Circ Res 2009; 104: 60-8.
  • Liao X, et al. Macrophage autophagy plays a protective role in advanced atherosclerosis. Cell Metab 2012; 15: 545-53.
  • Razani B, et al. Autophagy links inflammasomes to atherosclerotic progression. Cell Metab 2012; 5: 534-44.


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