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第81回日本循環器学会学術集会(JCS 2017)2017年3月17〜19日,金沢
リバーロキサバン投与下の非弁膜症性心房細動患者における母集団薬物動態および薬力学解析-CVI ARO study1より
2017.4.5(5.25修正)
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JCS 2017取材班
鈴木信也氏
鈴木信也氏

 日本人の非弁膜症性心房細動(NVAF)患者において,リバーロキサバンの血中濃度およびプロトロンビン時間(PT)を測定し,薬物動態および薬力学モデルを構築-3月18日,第81回日本循環器学会学術集会(JCS 2017)にて,鈴木信也氏(心臓血管研究所付属病院循環器内科医長)が発表した。

●背景・目的

 リバーロキサバン投与下の日本人NVAF患者における薬物動態および薬力学解析に関する情報は十分ではない。そこで今回,CVI ARO 1試験のサブ解析として,リバーロキサバンの薬物動態および薬力学特性に関する検討を行った。

 なお,CVI ARO 1試験は,日本人NVAF患者を対象に,リアルワールドでリバーロキサバンを服用している患者での各種バイオマーカーの分布特性,ならびにそれらの臨床的有用性や限界点について検討するための単施設研究である。

●対象

 2015年1~6月,リバーロキサバンが投与されたNVAF患者101例を登録し,血液サンプルが入手できた98例を本解析の対象とした。リバーロキサバンの投与量は,15mg/日が86.7%,10mg/日が13.3%であった。

●方法

 リバーロキサバンの血中濃度ピーク値(服用の2~4時間後)およびトラフ値(服用の22~26時間後)について,直接法(液体クロマトグラフィータンデム質量分析法[LC/MS/MS]を用いた測定)および間接法(血液サンプルの抗Xa活性を測定し,検量線からリバーロキサバン血中濃度を推定する方法)にて測定した。さらに,同一の血液サンプルを用いて,PTを測定した。

 なお,PTは試薬による違いを検証するために,国内で頻用されている5つの試薬(Thromborel S,ThromboCheck PT,STA Neoplastin Plus,Hemos IL RecombiPlasTin 2G,ThromboCheck PT Plus)を用いた。

 母集団薬物動態および薬力学モデリングには,Phoenix ver1.4を用い,1-コンパートメントモデルを適用した。

●結果

1. 患者背景

 対象患者は平均年齢68.2歳,平均身長168.4cm,平均体重69.0kg,平均BMI 24.3で,男性が84.7%を占めた。10.2%がCYP3A4あるいはP-糖蛋白阻害薬を服用していた。

 ピーク時およびトラフ時の各種臨床検査値はそれぞれ,アルブミン4.2g/dL,4.2g/dL,ヘモグロビン14.4g/dL,14.0g/dL,ヘマトクリット42.1%,40.8%,総ビリルビン0.9mg/dL,0.9mg/dL,AST 26.2IU/L,25.7IU/L,ALT 21.9IU/L,21.2IU/L,クレアチニン0.93mg/dL,0.92mg/dL,クレアチニンクリアランス75.0mL/分,76.2mL/分であった。

2. 母集団薬物動態解析

 対象患者のリバーロキサバン血中濃度を直接法で測定した場合,母集団平均クリアランス(CL)は4.40L/時,母集団平均分布容積(V)は38.2L,母集団平均吸収速度定数(Ka)は1.37/時と推定された。間接法で測定した場合,母集団平均CLは4.94L/時,母集団平均Vは53.3L,母集団平均Kaは1.24/時と推定された。いずれの測定法を用いた場合も,腎機能,肝機能,CYP3A4阻害薬/P糖蛋白阻害薬がCLに影響を与えることが明らかになった。

 母集団薬物動態解析から推定した血中薬物濃度(population prediction model)と実測値との相関は,直接法でR2=0.6849,間接法でR2=0.6635であった。患者ごとの変動を考慮したindividual prediction modelによる推定値では,直接法でR2=0.8050,間接法でR2=0.7722となった。

3. 母集団薬力学解析

 つぎに母集団薬力学解析により,推定PT値を算出する方程式を求めた。Hemos IL RecombiPlasTin 2Gを用いた場合に関しては,以下の方程式で推定PT値が得られることが示された。

PT(秒)=12.1+0.0323×リバーロキサバン血中濃度(ng/mL)

 他の4つの試薬に関しては,いずれもヘマトクリット値によって傾きを補正する必要があり,ThromboCheck PT Plusでは年齢,Thromborel Sではアルブミン値による補正も必要であった。

 推定PT値(population prediction model)と実測PT値の相関性を試験薬別にみると,R2は0.6451~0.7161であった。患者ごとの変動を考慮したindividual prediction modelによる推定値では,STA Neoplastin Plus R2=0.9891,Thromborel S R2=0.9718,ThromboCheck PT R2=0.9865,Hemos IL RecombiPlasTin 2G R2=0.9910,ThromboCheck PT Plus R2=0.9846であった。

●考察

 今回算出した薬物動態学的パラメータをリバーロキサバンの第II相臨床試験1)あるいはJ-ROCKET AF 2)のデータと比較すると,CL(CVI-ARO 1:4.40L/時,第II相:4.72L/時,J-ROCKET AF:4.73 L/時)およびV(38.2L,42.9 L,43.8 L)は同程度であったが,Ka(1.37/時,0.60/時,0.62/時)については差異がみられた。

 しかしながら,Ka値をもとに最高血中濃度到達時間(Tmax)を算出したところ,CVI-ARO 1試験のTmaxは1.97時間,第II相試験のTmaxは3.46時間となり,いずれも最高血中濃度に達する時間帯を示しており,両者の差異は重要なものではないと考えられた。

 リバーロキサバンによるPTの変化は,PT測定に用いる試薬によってばらつきがあり,リバーロキサバン血中濃度とPT値との相関性が高くない試薬も存在する3)。しかし,薬理統計モデルを用いた予測式を適用することで,用いる試薬に関係なく,高い精度でPT値を予測できることが示唆された。

●結論

 リバーロキサバン血中濃度を直接法および間接法にて測定し,薬物動態モデルを構築した。また,国内で頻用されている5つのPT測定試薬について,薬力学モデルを構築した。両モデルによって算出された推定値は実測値と良好な相関関係が確認された。

文献

  • Tanigawa T, et al. Model-based dose selection for phase III rivaroxaban study in Japanese patients with non-valvular atrial fibrillation. Drug Metab Pharmacokinet 2013; 28: 59-70.
  • Kaneko M, et al. Confirmation of model-based dose selection for a Japanese phase III study of rivaroxaban in non-valvular atrial fibrillation patients. Drug Metab Pharmacokinet 2013; 28: 321-31.
  • Suzuki S, et al. Response of prothrombin time to rivaroxaban in Japanese patients with non-valvular atrial fibrillation: Characteristics of 5 representative reagents in Japan (CVI ARO 1). Thromb Res. 2017; 150: 73-5.


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