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第81回日本循環器学会学術集会(JCS 2017)2017年3月17〜19日,金沢
HAS-BLEDスコアはアブレーション周術期における出血リスク層別化にも有用-JACRE Registryサブ解析
2017.4.12
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JCS 2017取材班
井上耕一氏
井上耕一氏

modified HAS-BLED(mHAS-BLED)スコアは,非弁膜症性心房細動(NVAF)患者のカテーテルアブレーション周術期の出血リスクの層別化に有用である可能性が示唆された。同スコア3点以上では,周術期の出血リスクが顕著に上昇していた-3月17日,第81回日本循環器学会学術集会(JCS 2017)にて,井上耕一氏(桜橋渡辺病院循環器内科部長,心臓・血管センター不整脈科長)が発表した。

●背景・目的

 高周波カテーテルアブレーション(以下,アブレーション)は,心房細動に対する治療法として重要な選択肢となるものの,出血リスクをともなうことが知られている。加えて,アブレーション周術期には塞栓症リスクの抑制を目的に抗凝固薬が投与されるため,出血にはさらなる注意が必要となる。抗凝固療法中の出血リスクの層別化には,HAS-BLEDスコア,ATRIAスコア,ORBITスコアなどが用いられている。アブレーション周術期の出血性合併症リスクの層別化の指標は,まだ確立していない。

 JACRE Registryは,アブレーション周術期における抗凝固薬の至適投与方法を検討する,前向きの登録観察研究である。本研究はそのサブ解析として,HAS-BLEDスコアがNVAF患者のアブレーション周術期における出血リスクの層別化に有用であるか検討を行った。

●方法・対象

 JACRE Registryの対象は,20歳以上のアブレーション施行予定のNVAF患者で,3週以上前からリバーロキサバンまたはワルファリンが投与されている症例である。アブレーション禁忌例,リバーロキサバン/ワルファリン禁忌例, 2ヵ月以内に血栓塞栓症または心筋梗塞を発症した患者,他の試験への参加者,医師より不適切と判断された症例は除外した。リバーロキサバンは15mg 1日1回を食後投与(クレアチニンクリアランス30~49mL/分では10mg 1日1回),ワルファリンはPT-INRが 2.0~3.0(70歳以上は1.6~2.6)となるよう用量調節した。

 JACRE Registryにおけるアブレーション施行後30日以内の出血について,リバーロキサバン群(1,118例)では重大な出血が0.4%,重大でない出血が2.4%,ワルファリン群(204例)ではそれぞれ1.5%,3.4%であった1)。本解析では,HAS-BLEDスコアの項目の「不安定なINR」を除いたmHAS-BLEDスコアと出血発現率の関連についての検討を行った。

●結果

 単変量解析の結果,慢性腎臓病,貧血または出血の既往,アルコール(8ユニット/週以上),抗血小板薬の使用,mHAS-BLEDスコアが出血に有意に関連する因子であった。多変量解析の結果,貧血または出血の既往(ハザード比[HR]4.395,95%信頼区間[CI]1.406-10.736,p=0.014)および抗血小板薬の使用(HR 3.39,95%CI 1.466-7.053,p=0.006)が出血の独立リスク因子として同定された。上記の項目はすべてmHAS-BLEDスコアに含まれるため,アブレーション周術期の出血と同スコアの関連性が示唆された。なお,同スコアについては,多変量解析は行わなかった。

 スコア別に出血発現率をみたところ,2点までは約3%であったのに対し,3点では8.5%,4点以上では33.3%と3点以上で顕著に上昇しており,3点未満で2.8%(35/1,266例),3点以上で12.5%(7/56例)と有意差が認められた(p<0.001)。

 薬剤別に出血発現率を比較すると,リバーロキサバン群では0点3.0%,1点2.3%,2点3.7%,3点0%,4点以上28.6%と4点以上で,ワルファリン群ではそれぞれ5.4%,3.0%,0%,22.2%,50.0%と3点以上で,顕著な上昇がみられた。3点以上の症例について解析したところ,リバーロキサバン群における出血は5.6%(2/36例)と,ワルファリン群25.0%(5/20例)にくらべ有意に少なかった(p=0.028)。

●考察

 J-RHYTHM Registryにおいて,抗凝固療法中の日本人心房細動患者は,mHAS-BLEDスコアが3点を超えると重大な出血のリスクが高くなることが報告されている2)。本解析でも,mHAS-BLEDスコア3点以上が,アブレーション周術期出血性合併症高リスクの指標として有用であることが示唆された。

 アブレーション周術期のリバーロキサバンの投与については,ビタミンK拮抗薬と同等の安全性がランダム化比較試験VENTURE-AFで報告されている3)。また,メタ解析でも直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)は,ビタミンK拮抗薬にくらべ重大でない出血のリスク比が0.69,95%CI 0.56-0.85(p=0.0003)と低く,DOACはワルファリンにくらべより安全に投与できるとされている4)

●結論

 mHAS-BLEDスコアは,NVAF患者のアブレーション施行周術期の出血リスクの層別化に有用である可能性が示唆された。同スコア3点以上では,周術期出血リスクが顕著に上昇していたが,リバーロキサバンはワルファリンにくらべ高リスク患者における出血発現率が低かった。

文献

  • Okumura K; JACRE Investigators. Efficacy and Safety of Rivaroxaban and Warfarin in the Perioperative Period of Catheter Ablation for Atrial Fibrillation - Outcome Analysis From a Prospective Multicenter Registry Study in Japan. Circ J 2016; 80: 2295-301.
  • Okumura K; J-RHYTHM Registry Investigators. Validation of CHA₂DS₂-VASc and HAS-BLED scores in Japanese patients with nonvalvular atrial fibrillation: an analysis of the J-RHYTHM Registry. Circ J 2014; 78: 1593-9.
  • Cappato R; VENTURE-AF Investigators. Uninterrupted rivaroxaban vs. uninterrupted vitamin K antagonists for catheter ablation in non-valvular atrial fibrillation. Eur Heart J 2015; 36: 1805-11.
  • Santarpia G, et al. Efficacy and Safety of Non-Vitamin K Antagonist Oral Anticoagulants versus Vitamin K Antagonist Oral Anticoagulants in Patients Undergoing Radiofrequency Catheter Ablation of Atrial Fibrillation: A Meta-Analysis. PLoS One 2015; 10: e0126512. doi: 10.1371/journal.pone.0126512.


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