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第81回日本循環器学会学術集会(JCS 2017)2017年3月17〜19日,金沢
国際的レジストリー研究GARFIELD-AF:日本人集団からの知見
2017.4.10
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JCS 2017取材班
是恒之宏氏
是恒之宏氏

 GARFIELD-AFの日本人集団は,全体集団とくらべて,直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)の投与率が高く,脳卒中発症率はわずかに低く,大出血発現率および全死亡率も低い傾向-3月18日,第81回日本循環器学会学術集会(JCS 2017)にて,是恒之宏氏(国立病院機構大阪医療センター院長)が発表した。

●背景・目的

 GARFIELD-AFは,新規に(6週以内)非弁膜症性心房細動(NVAF)と診断され,脳卒中リスク因子を1つ以上有する患者を対象に,抗血栓療法と転帰の関係を検討する国際共同観察研究である1)。患者登録は5つの連続コホート(1つのコホートの登録期間が終了後,次のコホートの登録を開始)に分けて行い,第1コホートのみ,新規患者の前向き登録と,心房細動の確定診断をうけた患者の後ろ向き登録を半数ずつ行った。

 2009年12月~2016年8月,35ヵ国から57,262例(前向きコホートは51,270例)が登録された。このうち,日本からは4,858例が登録され,国別で第一位の登録数となった。今回,日本人患者について,抗血栓療法の投与状況ならびに1年予後を解析し,全体の結果と比較した。

●結果

1. 患者背景

 日本から登録された患者は,全体とくらべ高齢で(平均年齢71.2歳,69.7歳),75歳以上の患者が多かった(42.0%,37.4%)。女性の割合は40.2%,44.2%と全体と同程度であり,平均BMIは低かった(24.0,27.8)。

 また併存疾患は,うっ血性心不全は,日本24.6%,全体19.8%,高血圧既往67.3%,76.3%,糖尿病18.3%,22.1%,脳卒中/TIA既往9.5%,11.4%,慢性腎臓病(グレード≧3)9.6%,10.3%に認めた。血管疾患(末梢動脈疾患または急性冠症候群をともなう冠動脈疾患)は8.4%,14.7%と,日本で少なかった。

 平均CHA2DS2-VAScスコア(日本3.0点,全体3.2点)は全体と同程度であり,スコア分布はともに3点がもっとも多かったが,日本では低スコア例の割合が若干高かった。HAS-BLEDスコアは平均値(1.2点,1.4点),スコア分布ともに全体と類似していた。ともに1点がもっとも多かったが,日本では低スコア例の割合がやや高かった。

2. 抗血栓療法の投与状況

(1)抗血栓療法の推移

 GARFIELD-AF全体における抗凝固薬の投与率は,第1コホート(登録期間2010~2011年)で57.4%であったが,第5コホート(同2015~2016年)では71.8%まで上昇した。また,DOACの投与率は,第1コホートでは4.2%であったのに対し,第2コホート(同2011~2013年)13.8%,第3コホート(同2013~2014年)26.3%,第4コホート(同2014~2015年)37.2%,第5コホート43.1%と徐々に増加した。これに対し,ワルファリン,アスピリン単独の投与率は,コホートが新しくなるにしたがって減少した。

(2)地域別の比較

 地域別に比較したところ,アジアでは他地域にくらべ,アスピリン単独の投与率が高かった。ただし日本に限定すると,GARFIELD-AF全体とくらべて,第1コホートからアスピリン単独投与率が低く,抗凝固薬投与率が高いという特徴がみられた。コホートが進むにしたがって,DOACの投与率が急激に高くなり,この傾向は全体と比較してもより顕著であった。

 抗血栓療法の投与状況が日本と他のアジアの国々と異なっている理由としては,各国におけるDOACの承認日や承認条件の違い,さらに健康保険制度の違いがあげられる。また,日本ではガイドライン2)において,抗凝固薬(DOACまたはワルファリン)が推奨され,リスクが低い場合も抗血小板薬の推奨がない点も一因と考えられる。

(3) CHA2DS2-VAScスコア別の投与状況

 GARFIELD-AF全体では,CHA2DS2-VAScスコア0点でも約半数にOACが投与されていた。その一方で,6点以上でもOACの投与率は約60%に留まっており,低リスク例に対するオーバーユーズ,ならびに高リスク例に対するアンダーユーズの傾向が認められた。

 日本でも,CHA2DS2-VAScスコア0点に対し,約半数にOACが投与されており,2点以上に対しては,約80%にOACが投与されていた。

(4)HAS-BLEDスコア別の投与状況

 GARFIELD-AF全体では,HAS-BLEDスコアの上昇にともなってアスピリン単独の投与率が上昇し,抗凝固薬の投与率が減少する傾向がみられた。一方日本では,HAS-BLEDスコアの違いによる抗凝固薬投与率の違いはほとんどみられなかった。ただし,HAS-BLEDスコアの上昇にともない,直接トロンビン阻害薬より第Xa因子阻害薬が選択される傾向がみられた。

3. 1年予後

 第1~4コホート(日本3,720例,全体39,898例)における追跡1年後の脳卒中/全身性塞栓症の発症率は,日本1.32%,全体1.43%であった。また,大出血はそれぞれ0.32%,0.87%,全死亡は1.83%,4.24%と,全体にくらべて日本で低い傾向がみられた。

●まとめ

 NVAFの国際的レジストリーであるGARFIELD-AFに登録された患者のうち,9.4%が日本からの登録であった。日本人NVAF患者における脳卒中発症率は全体にくらべわずかに低く,大出血発現率および全死亡率も低い傾向がみられた。日本は他の国にくらべ平均余命が長いことから,全死亡の結果に違いが生じた可能性がある。その他にも大出血が少なかったこと,OACが適切に処方されていたこと,医療機関への受診が比較的容易であることなどが,日本で予後が優れていた理由として考えられる。

 GARFIELD-AFの解析は現在進行中である。今後,患者背景,治療状況,臨床予後に関するさまざまなデータが蓄積されていく予定である。

文献

  • Bassand JP, et al., GARFIELD-AF Investigators. Two-year outcomes of patients with newly diagnosed atrial fibrillation: results from GARFIELD-AF. Eur Heart J 2016; 37: 2882-9.
  • 日本循環器学会.心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版).http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2013_inoue_h.pdf


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