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第81回日本循環器学会学術集会(JCS 2017)2017年3月17〜19日,金沢
ワルファリンからリバーロキサバンへ切り替えた非弁膜症性心房細動患者における治療満足度-SPAF-QOL
2017.4.10
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JCS 2017取材班
是恒之宏氏
是恒之宏氏

ワルファリンからリバーロキサバンに切り替え後の非弁膜症性心房細動(NVAF)患者の治療満足度は向上し,特に切り替えによる負担軽減,利便性,全般的満足度の向上が示唆された-3月17日,第81回日本循環器学会学術集会(JCS 2017)にて,是恒之宏氏(国立病院機構大阪医療センター院長)が発表した。

●背景・目的

 心房細動治療ガイドラインでは,脳梗塞発症リスクが中等度以上の心房細動患者に対して抗凝固療法が推奨されており1),長期にわたり抗凝固薬を服用する必要がある。しかし,アドヒアランス不良や服薬継続不良が問題となっており,それらの解決には患者の治療満足度向上が重要とされる。

 SPAF-QOL研究では,ワルファリン投与時の治療満足度が,リバーロキサバン投与への切り替えにより改善されるかを検討した。また,使用実態下における,副作用,有効性および安全性イベントの観察も行った。

●方法・対象

 本研究は,医薬品の製造販売後の調査および試験実施の基準のもと,日常診療下における情報を収集した特定使用成績調査(製造販売後調査)である。

 調査期間は2012年4月18日~2016年3月31日で,対象は脳梗塞および全身性塞栓症の発症抑制を目的として,ワルファリンが長期間投与されており(2ヵ月以上が望ましい),リバーロキサバンに切り替えた(過去のリバーロキサバン服用歴なし)成人とした。全国の124施設から741例が登録され,回答が一度もなかった35例を除いた706例が解析対象となった。

 リバーロキサバン投与開始時,3ヵ月後,6ヵ月後の計3回,各時点の直近2~4週間を振り返り,治療満足度について患者自身が調査票に記入,施設からの郵送にて回収した。調査票の回収率は3ヵ月後603例(85%),6ヵ月後569例(81%)であった。

 調査票は,抗凝固療法に関する評価尺度(anti-clot treatment scale:ACTS©)および投薬治療の満足度に関する質問票(treatment satisfaction questionnaire for medication:TSQM©)日本語版を用いた。両スケールとも,高スコアが高い満足度を示す。

ACTSの評価項目(スコアの範囲:負担12~60,利益3~15)
・治療の負担(食事制限,他剤との飲み合わせ,出血の副作用,血液検査などの12項目)
・治療の利益(治療への信頼や安心感などの3項目)

TSQMの評価項目(スコアの範囲:すべて0~100)
・治療の有効性(予防の効果,症状改善の2項目)
・治療の副作用(副作用の有無,機能的・感情的な副作用など4項目)
・治療の利便性(薬の使いやすさ,簡便さ,服用頻度など3項目)
・治療の全般的満足度(治療のよい点に関する満足度など2項目)

●患者背景

 安全性解析対象691例の平均年齢は73.5歳,64.4%が男性で,平均体重は62.5kgであった。平均CHADS2スコアは2.3点,平均CHA2DS2-VAScスコアは3.5点,平均HAS-BLEDスコアは2.1点であり,CHADS2スコアの分布は,XAPASS(使用実態下におけるリバーロキサバンの安全性,有効性情報の収集を主目的とする特定使用成績調査)とほぼ同様であった。また,クレアチニンクリアランス別の分布は30mL/分未満1.3%,30~49mL/分23.9%,50~79mL/分49.5%,80mL/分以上18.5%であった。リバーロキサバンは48.3%に15mg,51.7%に10mgが投与されていた。

 併存疾患は,うっ血性心不全26.8%,高血圧77.0%,糖尿病31.4%,脳卒中/TIA既往21.0%であった。

●結果

1. 安全性・有効性イベント

 全出血は39例,9.40%/年に発現した。このうち重大な出血は0.93%/年,頭蓋内出血は0.23%/年であった。これらの結果は,XAPASS(全出血4.84%/年,重大な出血1.02%/年,頭蓋内出血0.43%/年)とほぼ同様であった。また,有効性解析対象655例において,脳梗塞は4例,0.96%/年(XAPASSでは0.90%/年)認められた。

2. 治療満足度

(1)ACTS

 治療の負担に関する満足度は,ベースライン時(51.0)にくらべリバーロキサバンへ切り替え3ヵ月後(54.6)および6ヵ月後(54.5)で有意に高かった(p<0.001)。治療の利益に関する満足度は10.1→10.2→10.1と,切り替え前後での変化は認めなかった。

(2)TSQM

 ベースライン時,リバーロキサバンへ切り替え3ヵ月後,6ヵ月後の各項目の推移は,治療の有効性(ベースライン時61.3→3ヵ月後65.1→6ヵ月後65.5),副作用(82.5→86.0→87.0),利便性(60.5→67.1→66.8),全般的満足度(59.9→65.4→65.6)であり,全項目および全時点で,ベースラインと比較して治療満足度が有意に高かった(すべてp<0.001)。

●研究の限界

 参加した124施設に地域の大きな偏りはなかったが,調査参加医療機関および参加患者に関して,選択バイアスが生じた可能性がある。また,患者の要望による切り替えは17%と比較的少数であったが,リバーロキサバンへの切り替えは担当医により判断されたため,もともとワルファリンに対し不満足であった患者を切り替えたなどの状況があった場合,選択バイアスが生じた可能性がある。さらに,調査票が回収できなかった患者の多くで治療満足度が改善していなかった場合,結果に影響した可能性がある。

 なお,本研究は単群調査であったため,ワルファリン群とリバーロキサバン群における治療満足度を直接比較したものではない。

●結論

 本研究における安全性および有効性イベントの発現率はXAPASSの結果と同様の傾向を示した。ワルファリンからリバーロキサバンに切り替えたNVAF患者の治療満足度は,切り替え後有意に上昇した。特に,リバーロキサバンへの切り替えによる負担軽減,利便性,全般的満足度の向上が示唆されたが,抗凝固療法に対する信頼や安心感については,変化はみられなかった。

 本研究結果より,実臨床におけるアドヒアランスや服薬継続を向上させるための有用な情報が得られた。本結果の臨床的意義については,更なる検討・考察が必要である。

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