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第81回日本循環器学会学術集会(JCS 2017)2017年3月17〜19日,金沢
日本の心房細動患者に対するリバーロキサバンのリアルワールドでの評価-XAPASSより
2017.3.29
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JCS 2017取材班
小川聡氏
小川聡氏

リバーロキサバンが投与された非弁膜症性心房細動(NVAF)患者における出血性事象および心血管関連の有害事象の発現率は,高リスク患者を含め,第III相試験のJ-ROCKET AFと一貫した結果-3月18日,第81回日本循環器学会学術集会(JCS 2017)にて,小川聡氏(国際医療福祉大学三田病院名誉病院長/小川聡クリニック院長)が発表した。

●背景・目的

 Xarelto post-authorization safety & effectiveness study in Japanese patients with atrial fibrillation(XAPASS)は,使用実態下におけるリバーロキサバンの安全性,有効性情報の収集を主目的とする特定使用成績調査(前向き観察研究)である。本研究では,第III相試験であるJ-ROCKET AF 1)との対比,投与量別および高齢者などのサブグループ別の結果も検討した。

●方法・対象

 脳梗塞または全身性塞栓症の発症抑制のためにリバーロキサバンが投与されたNVAF患者11,309例を登録した。本剤投与開始から2年間を標準観察期間とし,評価は6ヵ月,1年,2年の時点で実施した。その後,最長5年間の予後観察を行う予定である。 2016年9月時点での安全性解析対象は9,896例,心血管関連の有害事象解析対象は9,862例で,平均観察期間は552±382日である。主な評価項目は,出血性事象および心血管関連の有害事象(脳卒中,全身性塞栓症,心筋梗塞)である。

●患者背景

 XAPASSの安全性解析対象症例の平均年齢は73.1歳,男性62.0%,平均体重は61.4kgであった。一方,J-ROCKET AFのリバーロキサバン群(639例)ではそれぞれ71.0歳,82.9%,64.3kgであった。クレアチニンクリアランス(CLcr)30mL/分未満の症例は,XAPASSでは2.8%,J-ROCKET AFでは0%,30~49 mL/分はそれぞれ20.9%,22.1%,50~79 mL/分は42.8%,51.3%,80 mL/分以上は25.6%,26.6%。また,平均CHADS2スコアは2.2点(J-ROCKET AFでは3.3点),平均CHA2DS2-VAScスコアは3.4点,平均modified HAS-BLEDスコア(PT-INRおよび肝機能に関する項目を除外)は1.5点であった。

 併存疾患は,うっ血性心不全が24.8%,高血圧が74.9%,糖尿病が22.5%,脳卒中/TIA既往が23.5%に認められた。J-ROCKET AFではそれぞれ41.3%,79.5%,39.0%,63.8%(全身性塞栓症を含む)であった。

 またXAPASSでは,35.2%にワルファリン,16.0%に非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC),13.9%に抗血小板薬の服用歴があった。J-ROCKET AFではそれぞれ90.3%,0%,38.0%であった。

●結果

1. 出血性事象

 すべての出血事象は,XAPASS では695例,4.69%/年に発現した。このうち重大な出血は1.09%/年,頭蓋内出血は0.49%/年であり,これらの結果は,J-ROCKET AFの結果を下回っていた(J-ROCKET AFでは,すべての出血事象 18.04%/年,重大な出血3.00%/年,頭蓋内出血0.65%/年)。

 高リスク患者について,高齢者(75歳以上)における重大な出血は1.46%/年,頭蓋内出血は0.63%/年(J-ROCKET AF 1~4)ではそれぞれ5.01%/年,1.47%/年),腎機能障害患者(CLcr 30~49mL/分)ではそれぞれ2.00%/年,0.81%/年(同5.09%/年,1.32%/年),脳梗塞/TIA/全身性塞栓症既往患者では1.75%/年,0.87%/年(同2.40%/年,0.62%/年)であった。これらの結果は,いずれもJ-ROCKET AFとおおむね一貫した結果であった。

2. 心血管関連の有害事象

 心血管関連の有害事象は,XAPASSでは225例,1.47%/年に発現した。このうち,脳卒中/全身性塞栓症は1.32%/年,脳梗塞は0.97%/年で,J-ROCKET AFと一貫した結果であった(J-ROCKET AFでは,心血管関連の有害事象1.49%/年,脳卒中/全身性塞栓症1.26%/年,脳梗塞0.80%/年)。

 高リスク患者について,高齢者(75歳以上)における脳卒中/全身性塞栓症は1.84%/年,脳梗塞は1.42%/年(J-ROCKET AF1~4)ではそれぞれ2.18%/年,1.25%/年),腎機能障害患者(CLcr 30~49mL/分)ではそれぞれ2.21%/年,1.64%/年(同2.77%/年,1.66%/年),脳梗塞/TIA/全身性塞栓症既往患者では2.58%/年,2.01%/年(同1.66%/年,1.10%/年)であった。

3. 腎機能と投与量

 腎機能別にリバーロキサバンの投与量を検討した。本来10mg投与対象であるCLcr 50mL/分未満の2,336例のうち,257例に15mgが投与されていた(オーバードーズ例)。一方,本来15mg投与対象であるCLcr 50mL/分以上の6,769例のうち2,417例に10mgが投与されていた(アンダードーズ例)。

(1)患者背景

 患者背景をみると,CLcr 50mL/分未満の症例において,オーバードーズ例は10mg投与例(適正減量例)にくらべ若齢で(平均年齢はそれぞれ78.8歳および81.4歳),平均CHADS2スコアは低かった(2.6および2.9)。また,CLcr 50mL/分以上の症例において,アンダードーズ例は15mg投与例(適正投与例)にくらべ高齢で(平均年齢はそれぞれ74.8歳および68.0歳),平均CHADS2スコアは高かった(2.3および1.8)。

 投与量毎のCLcrの分布をみると,10mg投与例数がもっとも多かったのは45~50mL/分であった。また,60mL/分を境界として15mg投与例が10mg投与例を上回った。CLcr 50mL/分以上の患者に10mgを投与した理由(複数回答)として,出血リスクに対する懸念が45.5%とほぼ半数を占めた。その他,高齢(27.1%),腎機能低下(19.5%),低体重(3.0%)などがあげられた。

(2)転帰

 腎機能およびリバーロキサバンの投与量別に転帰の解析を行った。重大な出血は,CLcr 50mL/分未満の症例において,適正減量例で2.04%/年,オーバードーズ例で2.38%/年,50mL/分以上の症例において,アンダードーズ例で0.88%/年,適正投与例で0.78%/年であった。

 心血管関連の有害事象は,CLcr 50mL/分未満の症例において,適正減量例では2.83%/年,オーバードーズ例では0.79%/年,50mL/分以上の症例において,アンダードーズ例では1.43%/年,適正投与例では0.96%/年であった。脳梗塞は,CLcr 50mL/分未満の適正減量例で1.81%/年,オーバードーズ例で0%/年,50mL/分以上のアンダードーズ例で0.96%/年,適正投与例で0.65%/年であった。

 なお,これらの結果は患者背景が異なり直接比較ができないため,今後より詳細な検討が必要である。

4. 脳卒中/TIA既往の有無別の転帰

 脳卒中/TIA既往の有無別(既往2,329例,非既往7,567例)に患者背景ならびに転帰を検討した。既往例は非既往例にくらべ高齢で(平均年齢はそれぞれ75.6歳および72.4歳),男性が多かった(64.6%および61.2%)。また,CLcr 50mL/分未満(31.3%および21.3%),10mg投与(55.3%および47.9%),抗血小板薬服用歴(20.1%および12.0%)の割合が高く,平均CHADS2スコアが高かった(3.8および1.7)。

 重大な出血は既往例1.77%/年,非既往例0.90%/年,心血管関連の有害事象はそれぞれ2.90%/年,1.08%/年,脳梗塞は1.96%/年,0.69%/年に認められた。

●まとめ

 リバーロキサバンを投与されたNVAF患者(安全性解析対象は9,896例,心血管関連の有害事象解析対象は9,862例)に対し,平均552日の追跡を行った。重大な出血は1.09%/年,心血管関連の有害事象は1.47%/年であり,J-ROCKET AFとほぼ同様であった。

文献

  • Hori M, J-ROCKET AF study investigators. Rivaroxaban vs. warfarin in Japanese patients with atrial fibrillation – the J-ROCKET AF study –. Circ J 2012; 76: 2104-11.
  • Hori M, J-ROCKET AF Study Investigators. Rivaroxaban vs. warfarin in Japanese patients with non-valvular atrial fibrillation in relation to age. Circ J 2014; 78: 1349-56.
  • Hori M, J-ROCKET AF study investigators. Safety and efficacy of adjusted dose of rivaroxaban in Japanese patients with non-valvular atrial fibrillation: subanalysis of J-ROCKET AF for patients with moderate renal impairment. Circ J 2013; 77: 632-8.
  • Tanahashi N, J-ROCKET AF Study Investigators. Rivaroxaban versus warfarin in Japanese patients with nonvalvular atrial fibrillation for the secondary prevention of stroke: a subgroup analysis of J-ROCKET AF. J Stroke Cerebrovasc Dis 2013; 22: 1317-25.


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