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第81回日本循環器学会学術集会(JCS 2017)2017年3月17〜19日,金沢
リアルワールドの幅広い層の日本人NVAF患者におけるリバーロキサバンの有効性および安全性-EXPAND study
2017.3.23
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JCS 2017取材班
山下武志氏
山下武志氏

リアルワールドでリバーロキサバンを服用している幅広い層の日本人NVAF患者において,脳卒中/全身性塞栓症発症率は1.0%/年,大出血発現率は1.2%/年-3月18日,第81回日本循環器学会学術集会(JCS 2017)にて,山下武志氏(心臓血管研究所所長)が発表した。

●背景・目的

 直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)の非弁膜症性心房細動(NVAF)患者に対する有効性および安全性は,第III相臨床試験で示されている。しかし,第III相臨床試験は厳格な患者選択基準およびプロトコールのもと行われるため,多様な背景を持つ患者が存在するリアルワールドでのデータ収集が求められている。

 そこで,日本のリアルワールドにおけるリバーロキサバンの有効性および安全性を評価するため,Evaluation of effectiveness and safety of Xa inhibitor for the prevention of stroke and systemic embolism in a nationwide cohort of Japanese patients diagnosed as non-valvular atrial fibrillation(EXPAND)studyが行われた。

●方法・対象

 本研究は,実地臨床下でリバーロキサバンが処方されたNVAF患者を対象とした,医師主導の前向き観察研究である(NCT 02147444,UMIN ID 000009376)。2012年11月~2014年6月,全国の684施設から7,178例を登録し,2016年3月までを観察期間とした。このうち,リバーロキサバン非服用例,研究参加同意撤回例など12例を除く7,166例をベースライン時の解析対象,さらに追跡不能25例を除く7,141例を有効性および安全性解析対象とした。平均観察期間は897日であった。

 有効性主要評価項目は脳卒中または全身性塞栓症(SE),安全性主要評価項目はISTH出血基準の大出血である。

●患者背景

 平均年齢は71.6歳で,男性が67.8%を占めた。平均体重は62.8kg,平均クレアチニンクリアランス(CLcr)は69.7mL/分であった。平均CHADS2スコアは2.1点(0~1点37.4%,2点28.9%,3点以上33.7%),平均CHA2DS2-VAScスコアは3.4点(0~2点32.0%,3~6点64.4%,7点以上3.5%),平均HAS-BLEDスコアは1.4点(0~2点88.8%,3点以上11.2%)であった。心房細動の病型は発作性44.8%,非発作性(持続性/永続性)55.2%であった。

 全体の93.9%に何らかの合併症または既往歴があり,高血圧は70.9%,うっ血性心不全は26.0%,糖尿病は24.3%,狭心症は11.6%,脂質異常症は41.9%,脳卒中既往は21.4%に認められた。

 リバーロキサバンは56.6%に標準用量(15mg/日)が投与されていた。39.7%はワルファリン使用歴があり,14.4%は抗血小板薬を併用していた。

 本研究のCHADS2スコア分布を日本における他の心房細動患者を対象とした観察研究と比較すると,J-RHYTHM Registry(同スコア0~1点49.6%)1)よりもFUSHIMI AF Registry(同36.9%)2)に近かったが,本研究ではFUSHIMI AF Registryより高血圧が多く,75歳以上が少ないという差異がみられた。

●結果

1. 有効性主要評価項目

 有効性主要評価項目である脳卒中/SEは176例(1.0%/年)に発症した。CHADS2スコア別でみると,0~1点では0.5%/年,1~2点では0.9%/年,3点以上では1.7%/年と,スコアが高くなるにしたがい発症率の有意な上昇が認められた(log-rank検定 p<0.0001)。また,CHA2DS2-VAScスコア別でも,スコアが高くなるにしたがい発症率の有意な上昇がみられた(p<0.0001)。

 副次評価項目の発現率は,主要心血管イベント(脳卒中/SE /心筋梗塞/心血管死)1.66%/年,脳卒中0.97%/年,脳梗塞0.74%/年,出血性脳卒中0.23%/年,一過性脳虚血発作0.21%/年,SE 0.03%/年,深部静脈血栓症/肺塞栓症0.03%/年,急性心筋梗塞/不安定狭心症0.20%/年,経皮的冠インターベンション/冠動脈バイパス術0.25%/年,心血管死0.72%/年,全死亡1.60%/年であった。

2. 安全性主要評価項目

 安全性主要評価項目である大出血は215例(1.2%/年)に発現した。HAS-BLEDスコア別では,0~2点では1.2%/年,3点以上では1.8%/年と,スコアが高くなるにしたがい発現率の有意な上昇が認められた(log-rank検定 p=0.0131)。

 大出血の内訳は,頭蓋内出血0.48%/年,消化管出血0.31%/年,その他0.45%/年であった。頭蓋内出血について,CHADS2スコアが高くなるにしたがい発現率の有意な上昇が認められた(p=0.0312)。CHA2DS2-VAScスコア別でも,有意ではないが同様の傾向がみられた(p=0.0739)。

3. 患者背景別の主要評価項目

 患者背景別に主要評価項目を解析したところ,65歳未満(1,436例)における脳卒中/SEの発症率は0.65%/年,大出血の発現率は0.73%/年,65~74歳(2,786例)ではそれぞれ0.87%/年,0.96%/年,75歳以上(2,919例)では1.31%/年,1.73%/年と,高齢になるにしたがい発症率の有意な上昇が認められた(log-rank検定,脳卒中/SE:p=0.0022,大出血:p<0.0001)。

 腎機能について,CLcr 30mL/分未満(133例)では脳卒中/SEの発症率は0.98%/年,大出血発現率は2.93%/年,30~49mL/分(1,347例)ではそれぞれ1.52%/年,1.83%/年,50mL/分以上(5,326例)では0.85%/年,1.05%/年と,腎機能の程度によって発症率に有意な差が認められた(脳卒中/SE:p=0.0026,大出血:p<0.0001)。

 体重は低くなるにしたがって脳卒中/SEの発現率の有意な上昇が認められたが(p=0.0250),大出血については,体重との関連はみられなかった。性別およびNVAFの病型では脳卒中/SEおよび大出血との関連を認めなかった。

4. 他の観察研究との比較

 参考として,欧州を中心に行われたリアルワールドにおけるリバーロキサバンの有効性および安全性を検討した研究XANTUS 3) *との比較を行った。XANTUSの平均年齢は71.5歳と本研究とほぼ同様であり,男性は59.2%と少なく,平均体重が83.0kgと高値であった。平均CHA2DS2-VAScスコアは3.4と,本研究と同値であった。

 XANTUSにおける脳卒中/SEの発症率は0.8%/年(6,784例中51例),大出血の発現率は2.1%/年(6,784例中128例)であった。

●結論

 EXPAND studyは,幅広いNVAF患者を対象とした,日本におけるリバーロキサバンの使用実態を検討するための医師主導型前向き観察研究である。本研究における脳卒中/全身性塞栓症発症率は1.0%/年,ISTH出血基準の大出血発現率は1.2%/年であった。

*:海外のリバーロキサバンの用量は日本と異なり,NVAF患者における虚血性脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制に対する用法・用量は20mg 1日1回(CLcr50mL/分未満では15mg 1日1回)である。

文献

  • Atarashi H, et al; J-RHYTHM Registry Investigators. Present status of anticoagulation treatment in Japanese patients with atrial fibrillation: a report from the J-RHYTHM Registry. Circ J 2011; 75: 1328-33.
  • Akao M, et al; Fushimi AF Registry Investigators. Current status of clinical background of patients with atrial fibrillation in a community-based survey: the Fushimi AF Registry. J Cardiol 2013; 61: 260-6.
  • Camm AJ, et al; XANTUS Investigators. XANTUS: a real-world, prospective, observational study of patients treated with rivaroxaban for stroke prevention in atrial fibrillation. Eur Heart J 2016; 37: 1145-53.


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