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欧州心臓病学会学術集会(ESC 2017)2017年8月26〜30日,バルセロナ
第Xa因子による動脈硬化進展の機序とリバーロキサバンの影響-PAR-2経路を介したオートファジーの抑制によるインフラマソーマ形成の促進をリバーロキサバンが抑制
2017.10.6
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ESC 2017取材班
前嶋康浩氏
前嶋康浩氏

第Xa因子(FXa)はPAR-2経路を介してオートファジー活性を抑制し,インフラマソームの形成を増強させ,アテローム性プラークの進展を促進させた。これに対し,リバーロキサバンはFXaに阻害的に働くことで,動脈硬化の進展を抑制する可能性が示唆-8月26日,欧州心臓病学会(ESC)にて,前嶋康浩氏(東京医科歯科大学医学部附属病院診療科内科系診療部門循環器内科)が発表した。

●背景・目的

FXaには,トロンビン活性化を介した血液凝固を促す作用がよく知られているが,そのほかにprotease-activated receptor-2(PAR-2)経路の活性化を介した細胞内シグナルの活性化作用も有する。この細胞内シグナルは平滑筋細胞の増殖・遊走,サイトカイン分泌の促進,NF-κBの活性化,COX-2の生成,血管新生の増大などをもたらし,動脈硬化の進展に重要な役割を果たすと考えられている。一方,直接FXa阻害薬であるリバーロキサバンは,マクロファージの炎症反応の活性化を阻害することで,アテローム性動脈硬化の進展を減弱させる可能性が示唆されている1)

今回,FXaがPAR-2経路を介したオートファジーおよび先天性の炎症反応を調整することで,アテローム性動脈硬化の進展に関わっているとする仮説を立て,それを検証した。さらに,リバーロキサバンがFXa-PAR-2経路を介する一連の機序に対してどのように作用するかについても,検討を行った。

●結果

はじめに,リバーロキサバン12,000ppmあるいは6,000ppmをマウスに投与し,プロトロンビン時間の延長および血漿FXa活性の低下を確認した。いずれの用量でもリバーロキサバンの効果が確認できたが,12,000ppmで著明な血漿FXa活性の低下が認められたため(p<0.01),以降の検討は投与量を12,000ppmに設定して行った。

1. 高脂肪食+ApoE欠損型マウスにおけるFXa活性亢進とオートファジーの抑制

ApoE欠損型マウスに高脂肪食を20週間与えると(高脂肪食+ApoE欠損型マウス),野生型マウスとくらべて血漿FXa活性が有意に上昇し,アテローム領域が形成された。そこに,リバーロキサバンを投与すると,血漿FXa活性は有意に低下し,アテローム領域は有意に縮小した(p<0.05)。

そこで,アテロームに存在するマクロファージ内のオートファジー活性を調べた。なお,マクロファージのオートファジーは動脈硬化を抑制する方向に働くことが報告されている2)。マクロファージ内のオートファゴソーム数を評価したところ,高脂肪食+ApoE欠損型マウスとくらべて,リバーロキサバンを投与した高脂肪食+ApoE欠損型マウスではオートファゴソーム数が有意に増加していた(p<0.05)。

2. FXaによるmTORリン酸化を介したオートファジー活性の抑制とリバーロキサバンの作用

つぎに,RAW 264.7マクロファージ(RAW cell)に7-ketocholesterol(7KC)処理を行い,オートファゴソームの発現を誘発した。そこにFXaを添加すると,mTORリン酸化が促進され,オートファゴソーム数は有意に減少し,LC3-II蛋白(オートファゴソームのマーカー)の発現も低下していた。ここにリバーロキサバンを追加すると,FXaによるmTORのリン酸化は抑制され,オートファゴソーム数の増加が確認された。

以上の結果から,FXaはmTORのリン酸化を介してオートファジー活性を抑制すること,リバーロキサバンによりFXaによるオートファジーの抑制が減弱することが示された。

3. FXaによるインフラマソームの形成とリバーロキサバンの作用

つぎにアテローム性動脈硬化の進展において,中心的な役割を担うことが報告されているインフラマソームに関する検討を行った3)。まず,高脂肪食+ApoE欠損型マウスのアテローム中にインフラマソームを形成する蛋白(NLRP3)が発現していることを免疫染色法にて確認した。一方,リバーロキサバンを投与した高脂肪食+ApoE欠損型マウスでは,NLRP3の発現が著明に減少していた。

また,オートファゴソームの発現を誘発したRAW cell にFXaを添加すると,インフラマソームを形成する蛋白(NLRP3,Caspase-1),およびインフラマソームの活性化で放出されるIL-1βの発現が亢進した。ここにリバーロキサバンを追加すると,これらの発現は抑制された。  アテローム中に発現するインフラマソームはFXaによって亢進し,それをリバーロキサバンが阻害することが示された。

4.インフラマソームの活性化とPAR-2経路

つぎに,インフラマソームの活性化とPAR-2経路の関連性について検討を行うため,PAR-2欠損の腹腔より採取したPAR-2欠損マクロファージに7KC処理を行い,オートファゴソームの発現を誘導した。そのPAR-2欠損マクロファージにFXaを添加したところ,mTORのリン酸化,インフラマソームの亢進はみられなかった。

高脂肪食を与えたApoE欠損型マウスでは,アテローム性プラーク領域の増大が観察されるが,リバーロキサバンを投与するとアテローム性プラーク領域は縮小する(p<0.05)。それと同様の現象が高脂肪食を与えたApoEとPAR-2遺伝子の二重欠損マウスで観察された(p<0.05)。

これらの結果から,FXaによるインフラマソームの活性化にはPAR-2が関与することが明らかになった。

●結論

オートファゴソームはインフラマソームを取り込み,インフラマソーム活性を減弱させることでアテローム性プラークの進展に抑制的に働くと考えられており,その詳細な機序についても明らかになりつつある。今回,FXa-PAR-2経路は,mTORのリン酸化を介してオートファジー活性を抑制することで,インフラマソームの形成を増強させ,アテローム性プラークの進展を促進させるという一連の機序が示唆された。これに対し,直接FXa阻害薬であるリバーロキサバンは,FXa-PAR-2経路を介したインフラマソームの形成を阻害することで,動脈硬化の進展を効果的に抑制する可能性が示された。

文献

  • Hara T, et al. Rivaroxaban, a novel oral anticoagulant, attenuates atherosclerotic plaque progression and destabilization in ApoE-deficient mice. Atherosclerosis 2015; 24: 639-46.
  • Liao X, et al. Macrophage autophagy plays a protective role in advanced atherosclerosis. Cell Metab 2012; 15: 545-53.
  • Duewell P, et al. NLRP3 inflammasomes are required for atherogenesis and activated by cholesterol crystals. Nature 2010; 464: 1357-61.


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