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欧州心臓病学会学術集会(ESC 2017)2017年8月26〜30日,バルセロナ
新規に診断された無症候性心房細動患者の臨床転帰は症候性心房細動患者と同様:GARFIELD-AFより
2017.9.5
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ESC 2017取材班
Harry Gibbs氏
Harry Gibbs氏

無症候性心房細動における有害な転帰の発症率は症候性心房細動と同等であり,無症候性患者でも症候性患者と同様の治療が必要-8月28日,欧州心臓病学会(ESC)にて,Harry Gibbs氏(Alfred Hospital,オーストラリア)が発表した。

●背景・目的

心房細動はしばしば,心不全や脳卒中,全死亡などの有害な転帰の原因となるものの,適切な介入により抑制することが可能である1, 2)。無症候性心房細動は偶発的に発見されることが多いが,無症候性であっても脳卒中リスクを上昇させると考えられる。しかし,症候性心房細動とくらべた場合のリスクの程度は明確ではない3)

そこで,Global Anticoagulant Registry in the FIELD-Atrial Fibrillation(GARFIELD-AF)のうち新規に心房細動と診断された患者について,症候性,無症候性別に患者背景や転帰の比較検討を行った。

●方法・対象

GARFIELD-AFは,脳卒中リスク因子を有する18歳以上の非弁膜症性心房細動患者を登録し,前向きに転帰を検討する国際的コホート研究である4)。本解析では無症候性/症候性により患者背景,抗血栓療法,1年後の転帰を比較した。

Cox比例ハザード回帰モデルによりハザード比(HR)を算出し,背景因子(年齢,性別,人種,喫煙,糖尿病,高血圧,脳卒中/一過性脳虚血発作/全身性塞栓症既往,出血既往,心不全,血管疾患,中等度以上の腎疾患,抗凝固療法,心房細動の種類,アルコール摂取状況)で調整を行った。

●結果

1. 患者背景

2010年3月~2015年9月,35ヵ国から登録された39,898例のうち,36,968例を解析対象とした。このうち28,843例(78.0%)が症候性(動悸,息切れ,胸痛/不快感,めまい,疲労感,発汗,失神など),8,125例(22.0%)が無症候性であった。

無症候性患者は症候性患者にくらべ,比率的には男性が多く(男性/女性は無症候性が1.9に対し,症候性1.1),高齢で(診断時の年齢中央値はそれぞれ73.0歳,70.0歳),うっ血性心不全(11.7%,23.2%),NYHA心機能分類III/IVの心不全が少なかった(17.1%,34.9%)。診断時の状況については,無症候性患者は病院(52.6%,60.7%),救急部(4.3%,13.6%)で診断された割合が低く,職場(42.2%,25.0%)で診断された割合が高かった。CHA2DS2-VAScスコア(中央値3.0,3.0),HAS-BLEDスコア(中央値1.0,1.0)は同程度であった。

2. 抗血栓療法

心房細動の診断後,無症候性患者では8,061例(87.2%),症候性患者では28,420例(87.8%)に抗血栓療法が行われていた。両者の内訳は同様で,ビタミンK拮抗薬(抗血小板薬併用の有無を問わない)はそれぞれ43.2%,42.6%,第Xa因子阻害薬(同)は18.5%,15.1%,直接トロンビン阻害薬(同)は6.6%,6.9%であり,合計68.3%,64.6%が何らかの抗凝固療法をうけていた。抗血小板療法のみはそれぞれ18.9%,23.3%で,12.8%,12.2%は何の抗血栓療法もうけていなかった。

3. 転帰

無症候性患者,症候性患者について,1年以内の転帰に差異は認められなかった。脳卒中/全身性塞栓症は無症候性患者1.40%/年,症候性患者1.47%/年で,調整後HR(95%CI)は 0.93(0.72-1.21),大出血はそれぞれ0.86%/年,0.88%/年で,HR 0.89(0.63-1.24),全死亡は3.81%/年,4.38%/年で,HR 0.96(0.82-1.13)であった。

●まとめ

新規に診断された心房細動のうち1/5は無症候性であり,その2/3が男性であった。無症候性患者における抗血栓療法が行われていた割合は症候性患者と同様であり,1年以内の転帰に差異はなかった。

以上より,無症候性心房細動は症候性にくらべ予後がよいわけではなく,症候性と同様の治療を行うべきである。また,本研究における無症候性心房細動は偶発的に発見されたものであり,その予後はスクリーニングで発見された症候性心房細動と類似すると考えられる。無症候性心房細動患者における有害な転帰が症候性と同様であるとの本結果は,心房細動スクリーニングの有用性を支持するものといえるが,集団的なスクリーニングの意義については,さらなる研究が必要である。

文献

  • Stewart S, et al. A population-based study of the long-term risks associated with atrial fibrillation: 20-year follow-up of the Renfrew/Paisley study. Am J Med 2002; 113: 359-64.
  • Andersson T, et al. All-cause mortality in 272,186 patients hospitalized with incident atrial fibrillation 1995-2008: a Swedish nationwide long-term case-control study. Eur Heart J 2013; 34: 1061-7.
  • Freedman B, et al. Screening for atrial fibrillation: A report of the AF-SCREEN international collaboration. Circulation 2017; 135: 1851-67.
  • Kakkar AK, et al. International longitudinal registry of patients with atrial fibrillation at risk of stroke: Global anticoagulant registry in the FIELD (GARFIELD). Am Heart J 2012; 163: 13-19.e1.


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