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米国心臓協会学術集会(AHA 2017)2017年11月11〜15日,アナハイム
アブレーション周術期における出血性イベント発症の最適予測因子―総合的血栓形成能解析システム(T-TAS)とDOAC血中濃度の比較―
2017.12.11
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AHA 2017取材班
伊藤美和氏
伊藤美和氏

カテーテルアブレーション治療(アブレーション)を施行した非弁膜症性心房細動(NVAF)患者において,T-TASで測定された圧力曲線下面積(AR10-AUC30)は周術期出血性イベント発症の有用な予測指標となり得る-11月13日,米国心臓協会学術集会(AHA)にて,伊藤美和氏(熊本大学大学院生命科学研究部循環器内科学)が発表した。

●背景・目的

直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)はNVAF患者の血栓塞栓症リスクを低減させるが,時に重大な出血性イベントを伴うことがある。DOACの効果発現をモニターするための血中濃度測定は,可能ではあるものの,現時点では抗凝固療法の安全性と有効性を評価できる確実な指標はない。

総合的血栓形成能解析システム「T-TAS(total thrombus-formation analysis system)」は,血栓の形成を定量的に解析する装置である。I型コラーゲンおよび組織トロンボプラスチンをコーティングし血管構造を模したマイクロチップ(ARチップ)内に血液を灌流し,血栓が形成され流路が閉塞するまでのチップ内の圧力推移を記録することで,血栓形成の過程を解析することが可能である。T-TASで得られる圧力波形より算出した圧力曲線下面積(AR10-AUC30)は,抗凝固薬投与下で有意に低下することが明らかとなっている1~3)

本研究では, T-TASがアブレーション周術期の出血リスクを予測できるかどうか検討した。

●方法・対象

2013年9月~2016年2月にアブレーションが施行された発作性または持続性NVAF患者212例のうち,ワルファリン投与例,試験参加拒否例などを除く105例のDOAC投与患者を対象とした。DOACの内訳はリバーロキサバン54例,アピキサバン32例,ダビガトラン19例であった。

患者背景は,平均年齢61.7歳,男性64.4%,平均BMI 23.3kg/m2,発作性AF 75%,高血圧52.9%,糖尿病15.4%,脳卒中既往9.6%,CHA2DS2-VAScスコア2点以上53.3%,HAS-BLEDスコア3点以上4.8%,平均活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)31.9秒,平均プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)1.06であった。 周術期のDOAC投与はアブレーション24時間前に中止し,施行翌日より再開した。アブレーション施行当日,施行3日後のDOAC投与直前(トラフ時)および投与3時間後(ピーク時),アブレーション施行1ヵ月後(トラフ時)に採血し,周術期(アブレーション施行~1ヵ月間)に発現した出血性イベントとAR10-AUC30,PT-INR,APTT,血中濃度との関係を評価した。

●結果

1. 出血性イベントの有無別の患者背景

アブレーション周術期に発現した出血イベントは15例であった。出血群は非出血群(90例)よりもHAS-BLEDスコア3点以上が多く(20.0%,2.2%,p=0.02),血小板数は低値であった(183×104/μL,214×104/μL,p=0.012)。DOAC,抗血小板薬,抗不整脈薬など,薬剤の種類による差異は認められなかった。

2. ピーク/トラフ時および出血性イベントの有無別のAR10-AUC30,PT-INR,APTT

全例における解析では,AR10-AUC30はトラフ時よりピーク時で有意に低く,PT-INRおよびAPTTはトラフ時よりピーク時で有意に高かった(いずれもp<0.001)。各DOACの血中濃度は,ダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバンのいずれもトラフ時よりピーク時で高かった(それぞれp=0.044,p<0.001,p=0.002)。AR10-AUC30とDOACの血中濃度について,リバーロキサバンでは有意な相関がみられたが(p<0.001),ダビガトランおよびアピキサバンでは認められなかった。

出血性イベントの有無別の解析では,AR10-AUC30はトラフ時(p<0.001),ピーク時(p=0.046)とも出血群のほうが非出血群より有意に低かったが,PT-INRならびにAPTTでは,両時点において両群ともに有意差はなく,出血群でより延長しているとはいえなかった。

3. 周術期出血の予測因子

多重回帰分析の結果,周術期出血性イベント発症の予測因子として,HAS-BLEDスコア3点以上,低血小板数,トラフ時のAR10-AUC30低値(オッズ比[OR]8.44,95%CI 1.79-39.7,p=0.007)およびピーク時のAR10-AUC30低値(OR 3.51,95%CI 1.02-12.1,p=0.047)があげられ,DOACの血中濃度は予測因子として残らなかった。

4. 周術期出血に対するT-TASのカットオフ値

さらに周術期出血性イベントにおけるピーク時およびトラフ時AR10-AUC30のROC解析を行った。その結果,AR10-AUC30はトラフ時およびピーク時も出血性イベント発症の予測が可能(ROC曲線下面積は,トラフ時が0.805[p<0.001],ピーク時が0.661[p=0.046])で,特にトラフ時での予測が優れている(トラフ時のカットオフ値1,488.8[感度73.3%,特異度77.5%])という結果であった。

●結論

アブレーション施行NVAF患者において,AR10-AUC30は周術期出血イベントのよい予測指標となる可能性があるが,PT-INR,APTT,DOACの血中濃度は予測因子ではなかった。

文献

  • Sueta D, et al. A novel quantitative assessment of whole blood thrombogenicity in patients treated with a non-vitamin K oral anticoagulant. Int J Cardiol 2015; 197: 98-100.
  • Ito M, et al. Total thrombus-formation analysis system (T-TAS) can predict periprocedural bleeding events in patients undergoing catheter ablation for atrial fibrillation. J Am Heart Assoc 2016; 5: e002744.
  • Ishii M, et al. Direct oral anticoagulants form thrombus different from warfarin in a microchip flow chamber system. Sci Rep 2017; 7: 7399.


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