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第80回日本循環器学会学術集会(JCS 2016)2016年3月18〜20日,仙台
リバーロキサバンによる抗炎症作用を介した血管内皮障害改善の可能性-心房細動患者における検討
2016.4.4
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>小林洋一氏
小林洋一氏

心房細動患者において,リバーロキサバンは抗炎症作用を介して血管内皮機能障害を改善する可能性-3月20日,第80回日本循環器学会学術集会(JCS 2016)にて,小林洋一氏(昭和大学医学部内科学講座循環器内科学部門主任教授)が発表した。

●背景・目的

リバーロキサバンはトロンビン生成を抑制することで抗凝固作用を発揮するが,血栓の形成にあたっては,血液凝固能のみならず,血管壁の機能も関与すると考えられている。

実際に,J-ROCKET AFの被験者より採取した血漿サンプルの解析では,リバーロキサバンはマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)-9を減少させ,トロンボモジュリン(TM)を増加させており1),抗凝固作用に加えて,血管内皮細胞に対する直接的な保護作用が期待されている。

今回,心房細動(AF)患者において,リバーロキサバン投与後の凝固系および線溶系マーカーの変化を観察し,血管内皮に対してリバーロキサバンがどのような影響を与えるかをワルファリン投与患者,抗凝固薬非投与AF患者,非AF患者と比較,検討を行った。

●対象・方法

対象は,非AF患者724例(対照群),抗凝固薬が投与されていないAF患者84例(抗凝固薬非投与群),リバーロキサバン投与AF患者68例(リバーロキサバン群),ワルファリン投与AF患者91例(ワルファリン群)である。2ヵ月おきに凝固系マーカーおよび線溶系マーカーを測定し,4群間で比較を行った。

対象患者の平均年齢は,対照群69歳,抗凝固薬非投与群69歳,リバーロキサバン群71歳,ワルファリン群72歳,CHA2DS2-VAScスコアは,対照群,抗凝固薬非投与群,リバーロキサバン群,ワルファリン群でそれぞれ2.7,2.54,2.24,3.57であり,ワルファリン群は対照群に比べ高齢で,塞栓症リスクも高かった。

●結果

1. 凝固系マーカー

可溶性トロンボモジュリン(TM)値は,対照群(2.85 FU/mL),抗凝固薬非投与群(2.88FU/mL)と比べ,ワルファリン群(3.09FU/mL)で有意に高かった(対照群に対しp=0.0022,抗凝固薬非投与群に対しp=0.0432)。TMは血管内皮機能障害のマーカーでもあることから,この結果は,ワルファリンが高齢かつ血管障害リスクの高い患者に投与されていたことに起因するものと考えられた。リバーロキサバン群では2.97FU/mLであり,他の群との間に有意差は認められなかった(個人ごとのすべてのサンプルの平均値を比較)。

一方,リバーロキサバン投与前後の測定値が得られた症例で解析すると,リバーロキサバン投与開始後の可溶性TMは0.62FU/mL上昇し,ワルファリンからリバーロキサバン投与に切り替わった症例では, 0.39FU/mL上昇していた。また,リバーロキサバン群では時間経過とともに可溶性TMが上昇し,測定6回目では3.34 FU/mLに上昇していた。

また,プロテインCおよびプロテインSについてみると,ワルファリン群では有意に低下していたが,リバーロキサバン群では対照群,抗凝固薬非投与群と同様に,正常範囲内に留まっていた。このことからリバーロキサバン群では,TM,プロテインC,Sによる抗凝固システムが正常に機能していると考えられた。

高感度CRP(hsCRP)は, AF患者群ではいずれも対照群(0.16mg/dL)よりも上昇していたが(抗凝固薬非投与群0.19mg/dL,p=0.062,リバーロキサバン群0.22mg/dL,p=0.0001,ワルファリン群0.34mg/dL,p<0.0001),とくにワルファリン群で顕著であった。なおリバーロキサバン群では,時間経過とともにhsCRPが低下し,3回目の測定以降は対照群と同等あるいはそれ以下に低下していた。

トロンビン産生量の指標であるプロトロンビンフラグメント1+2(F1+2)は,ワルファリン群で101pm/Lであり,対照群215 pm/Lと比べ,著明に低下していた(対照群に対しp<0.0001)。一方,トロンビン-アンチトロンビンIII複合体(TAT)は上昇していた。リバーロキサバン群では,F1+2が177pm/Lであり,対照群よりも低下していた(対照群に対しp=0.0015)。リバーロキサバン群におけるF1+2の低下は1回目の測定から観察されたが,期間を通じて正常範囲内であった。また,リバーロキサバン群ではF1+2の低下とともにTATも経時的に減少していた。

2. 線溶系マーカー

プラスミン量の指標であるプラスミン-α2 プラスミンインヒビター複合体(PIC)はワルファリン群で3.09μg/mLであり,対照群(2.85μg/mL)よりも上昇していた。一方,リバーロキサバン群では2.97μg/mLであり,対照群,抗凝固薬非投与群(2.88μg/mL)との間に有意差はなかったが,時間経過とともに有意に低下した。

さらに,リバーロキサバン群ではプラスミンの作用を制御するトータルプラスミノーゲン活性化抑制因子(t-PAI-1)が正常範囲内で増加していた(対照群に対しp=0.0064)。PAI-1は血管内皮細胞から放出される蛋白であり,この経時的な増加は,リバーロキサバンによる血管内皮機能改善を示唆する結果であった。

●考察・結論

リバーロキサバンは,トロンビン産生(F1+2)を過剰に抑制することなく,TATを減少させ,血管内皮細胞に存在するトロンボモジュリンの分解産物である可溶性TMを増加させ,CRPを徐々に低下させた。これらの結果は,リバーロキサバンによる血管内皮機能の改善によってもたらされた可能性が示唆された。

またリバーロキサバンは,PICを徐々に低下させ,血管内皮細胞より放出されるt-PAI-1を増加させたが,これも血管内皮機能の改善によるものが示唆された。さらにリバーロキサバンによるPICの低下,t-PAI-1の上昇という線溶系の調節機能の適正化は,出血性副作用が少ないことにも関連しているかもしれない。

文献

  • Chan MY, et al. Plasma proteomics of patients with non-valvular atrial fibrillation on chronic anti-coagulation with warfarin or a direct factor Xa inhibitor. Thromb Haemost 2012; 108: 1180-91.

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