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第80回日本循環器学会学術集会(JCS 2016)2016年3月18〜20日,仙台
リアルワールドでのリバーロキサバン服用患者における血中濃度の分布や測定方法に関する検討:CVI ARO 1試験のサブ解析
2016.3.31(5.2修正)
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鈴木信也氏
鈴木信也氏

抗Xa活性から推定したリバーロキサバン血中濃度の値には,直接測定した場合と比べ限界がある-3月18日,第80回日本循環器学会学術集会(JCS 2016)にて,鈴木信也氏(心臓血管研究所付属病院循環器内科医長)が発表した。

●背景・目的

リバーロキサバンの血中濃度を測定するには,液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC/MS/MS)を用いた直接測定(直接法)が理想だが,一般に普及している方法ではない。血液サンプルの抗Xa活性を測定し,リバーロキサバン血中濃度を推定する方法もあるが(間接法),抗Xa活性とリバーロキサバン血中濃度との相関には一定の限界があると考えられる。

今回,直接法および間接法でリバーロキサバンの血中濃度を測定し,両者の相違とそれを規定する因子を検討した。

なお本解析は,日本人の非弁膜症性心房細動(NVAF)患者を対象に,リアルワールドでリバーロキサバンを服用している患者での各種バイオマーカーの分布特性,ならびに各種バイオマーカーの臨床的有用性や限界点について検討するCVI ARO 1試験のサブ解析である。

●対象

2015年1月~6月の期間にリバーロキサバンが投与されたNVAF患者100例を,CVI ARO 1試験に登録した。そのうち,リバーロキサバン通常用量(15mg)服用中の84例(男性88.1%)を本解析の対象とした。

患者背景は,平均年齢66.6歳,平均体重70.9kgで,心房細動の病型は発作性50.0%,持続性22.6%,永続性27.4%であった。CHADS2スコアの分布は,0点42.9%,1点38.1%,2点10.7%,3点7.1%,4点1.2%,CHA2DS2-VAScスコアは0点13.1%,1点38.1%,2点26.2%,3点13.1%,4点8.3%,5点1.2%,HAS-BLEDスコアは0点16.7%,1点38.1%,2点34.5%,3点7.1%,4点3.6%であった。

●方法

リバーロキサバン服用直前(トラフ時)および服用2~4時間後(ピーク時)に採血を行い,リバーロキサバン血中濃度を直接法(LC/MS/MS法)ならびに間接法(抗Xa活性を用いた方法)で測定した。

●結果

1. 直接法と間接法の比較

ピーク時のリバーロキサバン血中濃度について,直接法と間接法で測定した2つの血中濃度は,互いに良好な正相関を示したが(R2=0.9196),間接法で測定した血中濃度は直接法よりも低値であった。

一方,トラフ時のリバーロキサバン血中濃度は,ピーク時よりも両者の相関は低かった(R2=0.7403)。加えて,40ng/mL以上では,直接法に比べて間接法のほうが低値を示したが,40ng/mL未満では,間接法のほうが高値を示していた。

2. 直接法と間接法の相違

直接法と間接法における測定値の差(ΔSC=直接法で測定した血中濃度-間接法で測定した血中濃度)を検討した結果,ピーク時のΔSCは70~80ng/mLであった。一方,トラフ時のΔSC は0を跨いで分布しており,血中濃度が40ng/mLより低い場合は負の値を示し,高い場合は正の値であった。

重回帰分析でピーク時ΔSCと相関する因子を検討した結果,直接法によるピーク時の血中濃度(p<0.001)およびクレアチニンクリアランス(CLcr,p<0.031)が挙げられ,両者の値が上昇するとΔSCも上昇すると考えられた。一方,トラフ時ΔSCと相関する因子としては直接法によるトラフ時の血中濃度(p=0.010)のみが挙げられた。

また,ΔSCが血中濃度が高いほど大きくなるという数値的なバイアスを考慮して,直接法による血中濃度の比(ΔSC ratio=ΔSC /直接法から得た血中濃度)について検討した結果,治療域におけるΔSC ratioは0.2で一定であった。つまり,治療域において,間接法による推定値は,直接法よりも20%低値となっていた。トラフ時の極端な低濃度領域においては,間接法と直接法には大きな開きを示す例もあり,間接法の測定結果の信頼度が低くなると考えられた。

●考察

直接法と間接法で測定結果に差異が生じた要因は2つに分けられる。一つは,低濃度域の間接法の精度の問題である。間接法ではリバーロキサバン血中濃度と抗Xa活性の相関を示す検量線から血中濃度を推定するが,極端な低濃度域における推定の精度は必ずしも保障されてない。今回の測定計における検出感度は,直接法が1ng/mL未満であるのに対し,間接法では25ng/mL未満であり,低濃度の測定に課題があったと考えられる。もう一つは,治療域で間接法が直接法よりも20%低値となっていた問題であるが,これは検量線の予測式を補正すべきなのかもしれない。

●結論

リバーロキサバンの血中濃度測定において,直接法と間接法に相違がみられた。まず,間接法を用いるにあたり,極端な低濃度に注意を要する可能性がある。また,間接法と直接法に20%のずれがあったことは,検量線の予測式そのものの補正を要する可能性が示唆された。

トラフ時の血中濃度分布に関する検討-CVI ARO 1試験のサブ解析として

リバーロキサバン投与下の抗凝固能評価の手段としてPT測定が用いられることが多いが,感度は低く限界がある。抗Xa活性の測定が推奨されるも,NOACは血中濃度にピークとトラフを有し,採血のタイミングによって数値は大きく変化する。とくに1回の採血ではピークをとらえることは困難だが,薬理学的にはトラフの血中濃度はピーク血中濃度と強く相関することから,トラフ血中濃度測定への期待が高まっている。 そこでCVI ARO 1試験では,リバーロキサバン投与下のトラフ時血中濃度の分布,また患者背景因子とトラフ時血中濃度との関連性について,サブ解析が実施された。

その結果,トラフ時のリバーロキサバン血中濃度は広範囲(90パーセンタイルで1.6~62.7ng/mL)にわたること,また血中濃度が極端な外れ値となる症例が一定数存在することが確認された。トラフ時の血中濃度に相関する背景因子として,CLcr(重回帰分析p=0.046),およびチトクロームP450阻害薬服用(重回帰分析p=0.088)が同定されたが,背景因子による予測値と実測値の相関は非常に弱く(R2=0.0073),患者背景のみから血中濃度を予測することには限界があることが示唆された。極端な外れ値を検出するためには,血中濃度を実際に測定すべきである。

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