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第80回日本循環器学会学術集会(JCS 2016)2016年3月18〜20日,仙台
リバーロキサバンの出血性合併症における重症化軽減の想定メカニズム-プロトロンビンフラグメント1+2に着目して
2016.3.31(5.2修正)
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富田泰史氏
富田泰史氏

リバーロキサバンは,血中濃度ピーク時でも過度にトロンビン産生を抑制せず,ワルファリンと比較して出血性合併症を軽減させる可能性がある-3月19日,第80回日本循環器学会学術集会(JCS 2016)にて,富田泰史氏(弘前大学大学院医学研究科循環器腎臓内科学講座准教授)が発表した。

●背景・目的

リバーロキサバンは,非弁膜症性心房細動患者における脳卒中および全身性塞栓症の発症に対して,ワルファリンと同等もしくはそれ以上の抑制作用が示されている1, 2)。さらにわれわれのグループは,リバーロキサバン投与中に脳出血を発症した患者では,ワルファリン投与中に発症した患者よりも血腫量が小さく,血腫増大を認めず,機能的予後も良好であることを2014年に報告した3)。その後,非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)とワルファリンを比較した他の試験においても,NOAC内服患者では脳出血時の血腫量が小さいことが報告されたが4),その詳しいメカニズムは明らかになっていない。

そこで,トロンビン産生量の指標であるプロトロンビンフラグメント1+2(F1+2)に着目し,リバーロキサバン投与患者を対象に,F1+2の時間的変化と各種パラメータとの関係から,出血性合併症における重症化軽減のメカニズムを検討した。

●対象

対象は,2013年9月~2015年3月の間に,心原性脳塞栓症のため弘前脳卒中・リハビリテーションセンターに入院し,再発予防を目的としてリバーロキサバンを投与した65例である。

患者背景は年齢77歳,体重54kg,クレアチニンクリアランス64mL/min(以上平均値),CHADS2スコア4点,CHA2DS2-VAScスコア6点,HAS-BLEDスコア3点であった(以上中央値)。心原性脳塞栓症発症からリバーロキサバン投与開始までの日数(中央値)は5日で,投与量は10mg/日が18例,15mg/日が47例であった。

●方法

リバーロキサバン投与開始初日,7日目,28日目の投与直前および7日目の投与2,4,6時間後に採血し,プロトロンビン時間(PT),抗Xa活性,F1+2,D-dimerを測定した。抗Xa活性はヒーモスアイエルヘパリンリキッドを用い,変換式によりリバーロキサバン血中濃度を推定した5)。F1+2はプロトロンビンからトロンビンが産生される過程で,トロンビンと1:1の割合で産生されるため,トロンビン産生量の指標となり,F1+2上昇は凝固亢進を,低下は凝固抑制を示すと考えられている。

●結果

リバーロキサバン投与開始直前のD-dimer(中央値)は1.43µg/mLであったが,投与開始後は時間依存的に低下した(7日目0.86µg/mL[p<0.05],28日目0.75µg/mL[p<0.0001])。

リバーロキサバン投与開始7日目の推定血中濃度とPTの間には正の相関関係が認められた(R2=0.69,p<0.0001)。

F1+2(中央値)も,投与開始直前の276pmol/Lに対し,7日目196pmol/L(p<0.01),28日目192pmol/L (p<0.0001)と時間依存的に低下し,7日目,28日目は正常範囲(69~229pmol/L)に収まっていた。

次に,リバーロキサバン投与7日目におけるF1+2の経時的変化を観察した。その結果,投与直前(トラフ時)の196pmol/Lに対し,投与4時間後(ピーク時)で160pmol/Lと有意に低下していた(p<0.05)。一方,ワルファリン投与患者(34例)での検討によると,F1+2は75pmol/Lに低下しており,リバーロキサバン投与患者(ピーク時)よりも有意に低かった(p<0.0001)。

さらにF1+2とPT(PT-INR)との関係をみたところ,ワルファリン投与患者ではPT-INRが治療域内においてもF1+2が正常範囲下限(69pmol/L)を下回る患者が複数認められ,またPT-INRが2未満の16例中3例(19%),PT-INR 2以上の18例中12例(67%)でもF1+2が正常範囲を下回った。一方,リバーロキサバンでは,ピーク時にPTが延長した症例を認めたものの,F1+2が基準値を下回った症例はみられなかった。

●考察・まとめ

トロンビンは,血液凝固の開始期,増幅期,増大期のそれぞれで役割を果たすと考えられている。すなわち,まず初期トロンビンが産生され(開始期),初期トロンビンは血小板を活性化し,プロトロンビナーゼ複合体を形成し,血小板膜上でトロンビンが産生される(増幅期)。このトロンビンはふたたび血小板と凝固因子を活性化し,大量の第Xa因子とトロンビン産生がくり返され(増大期),フィブリンが形成される。

ワルファリンはプロトロンビンの生合成を抑制し,初期トロンビンの産生も抑制する。そのため,血液凝固反応の開始期が維持できず,止血機構が破綻する可能性がある。リバーロキサバンは,初期トロンビンの産生に影響せず,ピーク時であってもトロンビン産生を過度に抑制しなかったため,止血機構を破綻させることはなく,結果として出血性合併症が軽減される可能性が示唆された。

文献

  • Patel MR, et al.; the ROCKET AF Investigators. Rivaroxaban versus Warfarin in Nonvalvular Atrial Fibrillation. N Engl J Med 2011; 365: 883-91.
  • Hori M, et al. Rivaroxaban vs. warfarin in Japanese patients with atrial fibrillation-The J-ROCKET AF study. Circ J 2012; 76: 2104-11.
  • Hagii J, et al. Characteristics of intracerebral hemorrhage during rivaroxaban treatment: comparison with those during warfarin. Stroke 2014; 45: 2805-7.
  • Wilson D, et al. Volume and functional outcome of intracerebral hemorrhage according to oral anticoagulant type. Neurology 2016; 86: 360-6.
  • Ikeda K, et al. Clinical implication of monitoring rivaroxaban and apixaban by using anti-factor Xa assay in patients with non-valvular atrial fibrillation. J Arrhythm 2016; 32: 42-50.

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