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第80回日本循環器学会学術集会(JCS 2016)2016年3月18〜20日,仙台
リバーロキサバンはアブレーション周術期における有効かつ安全な抗凝固療法の選択肢となり得る-JACRE Registryより
2016.3.29
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奥村 謙氏
奥村 謙氏

NVAF患者におけるアブレーション周術期の抗凝固療法について,リバーロキサバンはワルファリン継続投与と同等の有効性および安全性を有する-3月18日,第80回日本循環器学会学術集会(JCS 2016)にて,奥村謙氏(弘前大学大学院医学研究科循環器腎臓内科学講座教授)が発表した。

●背景・目的

カテーテルアブレーション(以下,アブレーションと略す)は薬物治療抵抗性心房細動に対する標準的な治療選択肢であるが,時に重大な出血性合併症および塞栓症のリスクを伴うことがある。近年,周術期の抗凝固療法としてワルファリン継続投与のほうが合併症の発現が抑制されることが明らかになってきた。また,アブレーション周術期における非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)の使用も普及してきたが,ワルファリン継続投与とNOACを比較したメタ解析では,塞栓性イベントの発生はワルファリンのほうが少なく,重大な出血はNOACのほうが少なかったことが示されている1)

今回,アブレーション施行予定の日本人非弁膜症性心房細動(NVAF)患者において,リバーロキサバンおよびワルファリンの至適投与方法を検討することを目的とした,多施設共同の前向き登録観察研究Japanese Anti Coagulation Regimen Exploration in Atrial Fibrillation Catheter Ablation(JACRE)Registryを実施した。なおJACRE Registryは,リバーロキサバンコホートのJACRE-RおよびワルファリンコホートのJACRE-Wで構成された。

●方法

対象はアブレーション施行が予定されている20歳以上のNVAF患者で,3週間以上前からリバーロキサバン(1,118例)またはワルファリン(204例,術前後のワルファリン継続群172例+中断群32例)が投与されている症例である。アブレーション禁忌,心筋梗塞を含む塞栓性イベント発症から2ヵ月以内,他の介入試験の参加者,医師により不適切とされた症例は除外した。

リバーロキサバンは15mg 1日1回(クレアチニンクリアランス30~49mL/minの症例では10mg 1日1回)を食後に投与し,ワルファリンはPT-INR 2.0~3.0(70歳以上は1.6~2.6)となるよう用量調整した。

主要評価項目は塞栓性イベントおよび重大な出血の複合,副次評価項目は塞栓症,重大な出血事象,重大でない出血とし,術後30日以内のイベント発生率を比較した。

●結果

1. 患者背景

リバーロキサバンコホートはワルファリンコホートよりも若齢で(年齢の中央値はそれぞれ65歳,69歳,p<0.001),男性の割合は同程度であった(74.8%,69.6%)。心房細動の病型も差が認められ(p<0.01),リバーロキサバンコホートは発作性(62.5%,56.4%)が多く,長期持続性(10.9%,18.6%)が少なかった。またリバーロキサバンコホートは,アブレーション施行歴を有する症例(20.3%,27.5%,p<0.05),心不全(11.1%,20.1%,p<0.001),高血圧(48.7%,56.9%,p<0.05),慢性腎臓病(1.9%,15.2%,p<0.001)も少なかった。結果として,リバーロキサバンコホートはワルファリンコホートに比べてCHADS2スコア,CHA2DS2-VAScスコア,HAS-BLEDスコアのいずれも低値であった(すべてp<0.001)。

アブレーション前後のリバーロキサバンは,施行前日,翌日ともに8割以上の症例で午前中に投与が行われていた。41.9%の患者で施行当日にもリバーロキサバンの投与が行われていたが,そのほとんどは施行後の投与であった。

2. 評価項目発症率

主要評価項目である塞栓性イベントおよび重大な出血は,リバーロキサバンコホートで0.6%(7例),ワルファリンコホートで1.5%(3例)であった。内訳は,塞栓性イベントがそれぞれ0.2%(2例,いずれもTIA),0%,重大な出血が0.4%(5例,心タンポナーデ4例および穿刺部血腫1例), 1.5%(3例,心タンポナーデ,穿刺部血腫,頭蓋内出血各1例)で,また重大でない出血をそれぞれ2.4%(27例),3.4%(7例)に認めた。

リバーロキサバンコホートにおいて,アブレーション施行時のヘパリンブリッジは546例に行われた。ヘパリンブリッジあり群では,なし群(572例)に比べ,塞栓性イベントおよび重大な出血は同程度であったが,重大でない出血はヘパリンブリッジあり群で4.03%(22例)と,なし群の0.87%(5例)よりも多かった(p=0.001)。ワルファリンコホートでは,継続群(172例)と中断群(32例)にイベント発症率の差はみられなかった。

Cox回帰分析によりリバーロキサバンコホートとワルファリンコホートの継続群についてイベント発症率を比較したところ,主要評価項目の補正後ハザード比[HR]は0.58(95%信頼区間[CI]0.13-3.78,p=0.525),塞栓性イベントでは 0.47(95%CI 0.03-68.95],p=0.668),重大な出血では 0.53(95%CI 0.10-4.20,p=0.498),重大でない出血では 0.69(95%CI 0.28-2.01,p=0.462)であり,コホート間の差はみられなかった。

●結論

リバーロキサバンコホートにおける塞栓性イベントの発症は,1,118例中2例(0.2%)のみであり,これまでの研究よりも少なかった。また重大な出血も0.4%と低値であったが,ヘパリンブリッジを行った症例で重大でない出血リスクの上昇がみられており,注意を要すると考えられた。今回の検討では,リバーロキサバン投与例のほとんどが術当日を除き午前中に投与されており,日本のリアルワールドでの一般的な投与パターンを示すものと考えられた。今回の検討により,NVAF患者におけるアブレーション周術期の抗凝固療法として,リバーロキサバンは近年推奨されているワルファリン継続投与と同様の有効性および安全性を有していた。

文献

  • Santarpia G, et al. Efficacy and Safety of Non-Vitamin K Antagonist Oral Anticoagulants versus Vitamin K Antagonist Oral Anticoagulants in Patients Undergoing Radiofrequency Catheter Ablation of Atrial Fibrillation: A Meta-Analysis. PLoS One 2015; 10: e0126512.

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