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日本心臓病学会(JCC 2016)2016年9月23~25日,東京
VTEに対するDOACおよび従来療法の血栓退縮効果の比較
2016.10.31
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JCC 2016取材班
戸田 和辰氏
戸田 和辰氏

リバーロキサバンはエドキサバン,ワルファリンにくらべ,早期に血栓消失が得られた症例が有意に多く,長期でも有意差はないものの多い傾向がみられた-9月23日,第64回日本心臓病学会学術集会(JCC 2016)にて,戸田和辰氏(群馬大学医学部附属病院循環器内科)が発表した。

●背景・目的

静脈血栓塞栓症(VTE)治療に対する抗凝固療法は,従来,ヘパリン類(未分画ヘパリンおよびフォンダパリヌクス)ならびにワルファリンにより行われてきた。しかし近年,直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)の有用性が確認され,欧米ではDOACが抗凝固療法での第一選択薬となりつつある。

リバーロキサバンは,日本人VTE患者を対象に行われたJ-EINSTEIN1)の結果から,3週間の初期強化療法により,従来療法にくらべ早期の血栓退縮効果が得られる可能性が示唆されている。また,リバーロキサバンの初期強化療法のみで,3週間後に著明な血栓消失効果が得られた症例も報告されている2)。ただし,血栓退縮効果に関して,各DOAC間で直接比較した報告はない。そこで,血栓溶解療法を用いずに抗凝固療法により治療したVTE症例を対象に,各抗凝固薬による血栓退縮効果を比較検討する後ろ向き調査を行った。

●方法

2012年1月~2016年6月,VTE(肺塞栓症:PEもしくは深部静脈血栓症:DVT)と診断され,抗凝固療法を行った症例のうち,発症後6ヵ月以内に画像評価で血栓量の変化を観察しえた症例を対象とした。除外基準は,血栓溶解療法施行例,下大静脈フィルター使用例,補助循環使用例,人工呼吸器使用例である。患者背景,臨床転帰および画像評価での血栓量の変化について,薬剤間で比較検討を行った。

血栓量の評価は,初期治療開始前後に造影CTまたは下肢静脈エコーを実施して行った。造影CTの画像評価は,ヘリカルCTにて観察できる範囲の血栓が消失した場合を消失,血栓量が減少したが消失していないものを改善と判定した。下肢静脈エコーの画像評価は,観察範囲内で血栓が見当たらない場合を消失,減少しているが消失していない場合を改善と判定した。いずれの評価も,治療法について盲検化したうえで放射線科医または超音波技師により行われた。

PEおよびDVTを合併している症例の画像評価では,観察範囲の全身の静脈で血栓が消失している場合を消失と判定した。

●対象患者

リバーロキサバンを投与した24例,エドキサバンを投与した16例,ワルファリンを投与した20例の計60例を対象とした。年齢,性別,腎機能,治療前のDダイマーなど,患者背景には群間差を認めなかった。平均年齢はリバーロキサバン群65歳,エドキサバン群65歳,ワルファリン群62歳,男性はそれぞれ41.7%,43.8%,45.0%。VTEの病型はリバーロキサバン群でDVT 11例,DVT+PE合併 13例,エドキサバン群でPE 3例,DVT 4例,DVT+PE 9例,ワルファリン群でPE 3例,DVT 5例, DVT+PE 12例であった。

近位部DVTは,リバーロキサバン群13例(54%),エドキサバン群4例(25%),ワルファリン11例(55%)とエドキサバン群で少ない傾向がみられた。VTEのリスク因子は,それぞれ癌16例/手術3例/その他4例,癌10例/手術6例/その他4例,癌7例/手術2例/その他8例とワルファリン群で癌症例が少ない傾向がみられた。また,発症から治療開始までの平均経過日数はそれぞれ10.5日,8.7日,15.1日であった。

初期治療として,リバーロキサバン群ではUFH投与4例,初期強化療法(15mg 1日2回)10例など,エドキサバン群ではUFH投与8例,フォンダパリヌクス投与2例など,ワルファリン群ではUFH投与15例,フォンダパリヌクス投与1例などが行われた。

●結果

リバーロキサバン群19例,エドキサバン群15例,ワルファリン群11例に対し,発症後2ヵ月以内に画像評価を行った。リバーロキサバン群の血栓の消失は10例で,エドキサバン群(2例),ワルファリン群(1例)にくらべ消失例が有意に多かった(エドキサバン群,ワルファリン群に対しp<0.05)。6ヵ月後の血栓消失はそれぞれ16例,8例,11例であり,リバーロキサバン群で血栓消失が多い傾向が認められた。

出血性合併症はリバーロキサバン群2例,ワルファリン群1例に発現したが,血尿,血便などの軽微なものであった。死亡,VTE再発,血栓後症候群は全群で認めなかった。

●結論

リバーロキサバンはエドキサバン,ワルファリンにくらべ,早期に血栓が消失した例が有意に多く,長期でも有意ではないが血栓消失例が多い傾向がみられた。ただし,患者背景や各抗凝固薬の投与法の差異が結果に影響している可能性があるため,更なる検討が必要と考えられた。

文献

  • Yamada N, et al. Oral rivaroxaban for Japanese patients with symptomatic venous thromboembolism - the J-EINSTEIN DVT and PE program. Thromb J 2015; 13: 2.
  • Koitabashi N, et al. Remarkable regression of massive deep vein thrombosis in response to intensive oral rivaroxaban treatment. Thromb J 2015; 13: 13.


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