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日本心臓病学会(JCC 2016)2016年9月23~25日,東京
心房細動早期発見のためのスクリーニングプログラム開始前の年間心房細動新規診断率:TASK-AF秋田パイロット研究より
2016.10.24
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JCC 2016取材班
鈴木 明文氏
鈴木 明文氏

心房細動(AF)スクリーニングプログラム実施前の年間AF新規診断率(0.87%)は,海外の報告(1.04%)と大きな差はなかった。今後,診療所における受診機会をとらえたAFスクリーニングプログラムにより,AFの新規診断率向上が期待される-9月25日,第64回日本心臓病学会学術集会(JCC 2016)にて,鈴木明文氏(秋田県立病院機構理事長)が発表した。

●背景・目的

わが国におけるAF患者数は約80万人と推定され,高齢化にともない増加傾向にある1)。AFの罹患により,脳卒中発症リスクは約5倍高くなるとされ2),またAFを主因とする心原性脳塞栓症は重症度が高く,予後も不良と報告されている3)。ただし,適切な抗凝固療法により,約6割の心原性脳塞栓症を予防することが可能である4)。したがって,AFの早期発見および適切な抗凝固療法による発症抑制が重要である。

しかしながら,AF患者の半数は発作性であり,自覚症状のない患者も同程度存在する5)。また,抗凝固療法実施率についても,わが国では心房細動治療(薬物)ガイドライン6)順守に対する課題7)も指摘されている。一方,欧州では,高齢者の受診機会をとらえたAFのスクリーニングが,未診断のAFを発見するのに効率的との報告がある8)。さらに,かかりつけ医と循環器専門医の医療連携は,AF患者への適切な抗凝固療法を推進するにあたって,重要な役割を担うと期待されている9)

そこで,「心房細動による脳卒中を予防するプロジェクト」(TASK-AF)*の一環として,秋田パイロット研究を開始し,現在実施している。本研究の主目的は,65歳以上の高齢者を対象に受診機会をとらえたAFのスクリーニング(脈チェック+心電図)によるAF新規診断の効果を検討することである。また,副次目的として,AF患者における抗凝固療法に対し,研究協力かかりつけ医と循環器専門医の医療連携がおよぼす影響についても,調査を行う予定である。

今回は,本AFスクリーニングプログラム実施前の年間AF新規診断率について報告する。今後,プログラム実施前と実施期間中の年間AF新規診断率を比較し,AFスクリーニングの効果を検討する予定である。

●方法・対象

本研究は,高齢化率および脳卒中による死亡率の高い秋田県の診療所12施設(このうち循環器科または循環器内科標榜5施設,循環器専門医所属4施設)による,共同観察研究である。

本プログラムでは,毎回受診時に脈拍触診,聴診,不規則脈波検出機能付血圧計のうち少なくとも1つを用いて医師が脈チェックを行い,脈に異常がみられた患者に対しては心電図検査を実施する。AFと診断された患者については,循環器専門医との医療連携を推奨し,循環器専門医は日常診療下において基礎疾患や脳卒中リスクの評価および抗凝固療法の導入などの治療方針を決定する。

対象は,各期間中(プログラム実施前:2014年10月19日~2015年10月18日,プログラム実施期間:2015年10月19日~2016年10月18日)に研究参加施設を受診した65歳以上の患者で,各期間開始時点までに参加施設にてAFの診断をうけていない患者である。今回は,プログラム実施前1年間に参加診療所を受診した患者について検討した。

なお,新規AF患者の定義は,診療報酬明細書(レセプト)記録において,以下の①~④の全てを満たす患者とした。

①各期間においてAFのICD10コード「I48」の記録があり,診療開始日が同一期間内
②AFの確定診断となる心電図検査の診療行為コード「D208,D210,D212」の記録が①の診療開始日から30日以内に存在
③診療開始日時点で65歳以上
④各期間開始時点から診療開始日前までの期間,各期間開始時点から365日以前の期間においてICD10コード「I48」の記録がない

●結果

プログラム実施前の1年間に受診した65歳以上の患者10,583例のうち,AFの診断歴がない患者は9,921例であった。このうち,AFの新規診断率は0.87%(86例)であった。新規AF患者の平均年齢は80.4歳(対象患者全体では77.3歳),男性の割合は37.2%(同36.5%)で,対象患者全体と比べ高齢であったが,男女比はほぼ同じであった。

AFの新規診断率を年齢別にみたところ, 65~74歳が0.53%,75~84歳が0.98%,85歳以上が1.32%と,高齢になるにつれ上昇する傾向がみられた。これは男性(それぞれ0.64%,1.08%,1.15%),女性(0.44%,0.93%,1.38%)でも同様であった。

また,参加施設の標榜診療科別にみたところ,循環器科/循環器内科標榜施設におけるAF新規診断率は1.15%(43/3,750例)であり,その他の施設0.70%(43/6,171例)にくらべ高かった。

●結論

本研究におけるプログラム実施前の新規診断率(0.87%)は,海外における報告(1.04%)8)と大きな差はなかった。診療所における受診機会をとらえたAFのスクリーニングを行うことにより,AF新規診断率の向上が期待される。

*心房細動による脳卒中を予防するプロジェクト(Take Action for Stroke Prevention in Atrial Fibrillation:TASK-AF):わが国におけるAF患者の脳卒中発症抑制に関する現状および課題を明らかにし,行政・保険者・医療提供者などによる一体的な取り組みを促進することで,患者とその家族,また社会的・経済的な負担を軽減することを目的としたプロジェクト。

文献

  • Inoue H, et al. Prevalence of atrial fibrillation in the general population of Japan: an analysis based on periodic health examination. Int J Cardiol 2009; 137: 102-7.
  • Wolf PA, et al. Atrial fibrillation as an independent risk factor for stroke: the Framingham Study. Stroke 1991; 22: 983-8.
  • Kannel WB, et al. Epidemiologic features of chronic atrial fibrillation: the Framingham study. N Engl J Med 1982; 306: 1018-22.
  • Kimura K, et al. Atrial fibrillation as a predictive factor for severe stroke and early death in 15,831 patients with acute ischaemic stroke. J Neurol Neurosurg Psychiatry 2005; 76: 679-83.
  • Akao M; Fushimi AF Registry Investigators. Current status of clinical background of patients with atrial fibrillation in a community-based survey: the Fushimi AF Registry. J Cardiol 2013; 61: 260-6.
  • 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2012年度合同研究班報告).心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版).http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2013_inoue_h.pdf(2016年9月閲覧)
  • Akao M; Fushimi AF Registry Investigators. Inappropriate use of oral anticoagulants for patients with atrial fibrillation. Circ J 2014; 78: 2166-72.
  • Fitzmaurice DA, et al. Screening versus routine practice in detection of atrial fibrillation in patients aged 65 or over: cluster randomised controlled trial. BMJ 2007; 335: 383.
  • European Heart Rhythm Association; European Association for Cardio-Thoracic Surgery, Camm AJ, et al. Guidelines for the management of atrial fibrillation: the Task Force for the Management of Atrial Fibrillation of the European Society of Cardiology (ESC). Eur Heart J 2010; 31: 2369-429.


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