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欧州心臓病学会(ESC 2016)2016年8月27~31日,イタリア・ローマ
NVAF患者に対する米国のリアルワールドにおけるNOACの脳梗塞および頭蓋内出血の発症抑制効果―REVISIT-USより
2016.9.12
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ESC 2016取材班

米国のNVAF患者において,NOACはワルファリンにくらべ頭蓋内出血の発現抑制に寄与していたが,脳梗塞の発症抑制効果についてはさらなる検討が必要-8月28日,欧州心臓病学会学術集会(ESC 2016)にて,Craig Coleman氏(University of Connecticut,米国)が発表した。

●背景

非弁膜症性心房細動(NVAF)患者に対する第III相試験において,非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)はいずれも,ビタミンK拮抗薬にくらべ良好なベネフィット・リスクプロファイルを示した1~4)。最近は,NOAC投与患者に関するデータは蓄積されてきているが,まだ十分ではない。また,リアルワールドでは,抗凝固療法は必ずしも臨床試験と同じ方法や条件下で行われているわけではなく,臨床試験と同様の結果が得られているとは限らない5)

本研究では,リアルワールドにて新規にNOACの投与を開始されたNVAF患者において,有効性および安全性をワルファリンと比較した。

●方法

REVISIT-USは2012年1月1日~2014年10月31日,Truven MarketScan(約1億7,000万人をカバーする米国の民間の健康保険)の薬剤処方データを用いた,後ろ向き解析である。

対象は,新規にリバーロキサバン,アピキサバン,ダビガトラン,ワルファリンを開始した成人患者で,CHA2DS2-VAScスコア≧2,ICD-9コードにより2回以上NVAFの診断をうけ,180日以上継続して治療および薬剤処方をうけている症例とした。脳卒中,全身性塞栓症,頭蓋内出血の既往例は除外した。

患者の追跡は,主要イベント発症,治療の中止または変更,試験からの脱落,試験終了のいずれかまで行った。主要評価項目は脳梗塞+頭蓋内出血(ICD-9コードによる)の複合である。

プロペンシティスコアにより,NOACまたはワルファリンを開始した患者をそれぞれマッチングさせ, Cox回帰分析を行った。

●対象患者

1. プロペンシティスコアマッチング

リバーロキサバン投与患者12,748例のうち11,411例(このうち低用量服用*は17.3%),アピキサバン投与患者4,332例のうち4,083例(同15.5%),ダビガトラン投与患者15,908例のうち15,679例(同10.3%)を,それぞれ同数のワルファリン投与患者とマッチングさせた。

2. リバーロキサバンコホート

平均年齢はリバーロキサバン群70.66歳,ワルファリン群70.72歳,男性はそれぞれ53.6%,53.9%であった。平均CHADS2スコアは1.92,1.94,平均CHA2DS2-VAScスコアは3.46,3.48,平均HAS-BLEDスコアは1.62,1.62であった。

3. アピキサバンコホート

平均年齢はアピキサバン群71.15歳,ワルファリン群71.00歳,男性はそれぞれ53.2%,53.6%であった。平均CHADS2スコアは1.93,1.92,平均CHA2DS2-VAScスコアは3.47,3.47,平均HAS-BLEDスコアは1.65,1.66であった。

4. ダビガトランコホート

平均年齢はダビガトラン群69.96歳,ワルファリン群69.90歳,男性はそれぞれ55.3%,55.2%であった。平均CHADS2スコアは1.85,1.85,平均CHA2DS2-VAScスコアは3.34,3.35,平均HAS-BLEDスコアは1.55,1.55であった。

●結果

1. 主要評価項目

リバーロキサバン群の主要評価項目(脳梗塞+頭蓋内出血)発症は73件で,ワルファリン群103件にくらべ,39%の有意なリスク低下を示した(ハザード比[HR]0.61,95%信頼区間[CI]0.45-0.82)。アピキサバン群(19件,28件,HR 0.63,95%CI 0.35-1.12),ダビガトラン群(119件,123件,HR 0.79,95%CI 0.62-1.02)については,有意ではないが抑制傾向が認められた。

2. 脳梗塞

脳梗塞発症は,リバーロキサバン群(42件,52件,HR 0.71,95%CI 0.47-1.07)およびダビガトラン群(72件,68件,HR 0.87,95%CI 0.63-1.22)では有意ではなかったが,それぞれ29%および13%のリスク低下が認められた。アピキサバン群(12件,10件,HR 1.13,95%CI 0.49-2.63)では,有意ではなかったが13%のリスク増加が認められた。

3. 頭蓋内出血

頭蓋内出血発現は,リバーロキサバン群(38件,60件,HR 0.53,95%CI 0.35-0.79)およびアピキサバン群(8件,19件,HR 0.38,95%CI 0.17-0.88)ではワルファリン群に対し,それぞれ47%および62%のリスク低下が認められた。ダビガトラン群では有意ではなかったが,リスク低下傾向が認められた(56件,64件,HR 0.71,95%CI 0.49-1.02)。

●結論

米国のデータベースを用いた検討から,NVAF患者において,ワルファリンにくらべリバーロキサバンおよびアピキサバンでは頭蓋内出血の発現率は有意に低く,ダビガトランでは有意ではないが,低下傾向を認めた。その結果として,リバーロキサバン,アピキサバン,ダビガトランは,ワルファリンにくらべ脳梗塞および頭蓋内出血の複合の抑制に寄与している可能性がある。一方,アピキサバンの脳梗塞発症率がワルファリンにくらべ数値的に高かったことについては,更なる研究が必要である。

*:米国におけるリバーロキサバンの用量は日本と異なり,通常量は20mg 1日1回,低用量(クレアチニンクリアランス30~49mL/分の患者)は15mg 1日1回。

文献

  • Patel MR, et al; the ROCKET AF Investigators. Rivaroxaban versus warfarin in nonvalvular atrial fibrillation. N Engl J Med 2011; 365: 883-91.
  • Granger CB; ARISTOTLE Committees and Investigators. Apixaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2011; 365: 981-92.
  • Connolly SJ; RE-LY Steering Committee and Investigators. Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2009; 361: 1139-51.
  • Ruff CT, et al. Comparison of the efficacy and safety of new oral anticoagulants with warfarin in patients with atrial fibrillation: a meta-analysis of randomised trials. Lancet 2014; 383: 955-62.
  • van Walraven C, et al. Effect of study setting on anticoagulation control: a systematic review and metaregression. Chest 2006; 129: 1155-66.


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