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第3回日本心血管脳卒中学会学術集会(CVSS 2016)2016年6月17~18日,東京
ESUSの治療戦略
2016.6.29
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内山真一郎氏
内山真一郎氏

ESUS患者を対象としてDOACとアスピリンの有効性および安全性を比較する国際共同試験が進行中であり,その結果がまたれる-6月18日,第3回日本心血管脳卒中学会学術集会(CVSS 2016)にて,内山真一郎氏(国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授)が発表した。

●ESUSとは

脳梗塞の病型分類にはTOAST分類が広く用いられており,アテローム血栓性脳梗塞,ラクナ梗塞,心原性脳塞栓症,その他の原因によるもの,原因不明に大別される。このうち,原因不明あるいは特定できないものをcryptogenic stroke(潜因性脳卒中)とよび,全体の25%程度を占めると考えられていた。

近年,脳卒中の画像診断や病態生理学の進歩により,潜因性脳卒中の再定義が急務となった。そこで2014年,内山氏もメンバーである国際的な神経内科医のワーキンググループより,塞栓源不明の脳塞栓症(embolic stroke of undetermined source:ESUS)という新しい疾患概念が提唱された1)。ESUSは,潜因性脳卒中のうち,脳塞栓症と考えられるものの総称である。

ESUSの診断は,除外診断にて行う。まず画像診断よりラクナ梗塞を否定する。次に,血管画像検査より頭蓋内外の責任血管に50%以上の狭窄がないことを確認し,アテローム血栓性脳梗塞を否定する。さらに,高リスクの心内塞栓源がないこと,具体的には心電図および24時間以上の心臓モニタリングで発作性心房細動のないことを確認し,経胸壁心エコーで心内血栓を否定する。同時に,動脈解離のような特殊な脳梗塞も否定することで診断する。

ESUSの塞栓源としては,低リスクの心内塞栓源,潜在性発作性心房細動,担癌性,動脈原性塞栓,奇異性塞栓症などがあげられる。もっとも多いと考えられるのは潜在性発作性心房細動である。

●ESUSの治療および予後

2014年の米国のガイドライン2)では,ESUSは非心原性虚血性脳卒中に含まれるため,治療法としては抗凝固療法ではなく抗血小板療法が推奨されている。しかし,大規模臨床試験やサブグループ解析の結果をみると,どちらが有効かは不明である。

潜因性脳卒中患者における検討では,卵円孔開存(PFO)の有無にかかわらす,アスピリン群よりワルファリン群のほうが複合イベント(脳卒中または死亡)発生率が低い傾向を認めた3)。正常洞調律の心不全患者における長期追跡では,ワルファリン群のほうがアスピリン群より複合エンドポイント(虚血性脳卒中,脳内出血,全死亡)が3年目から高くなった4)

その一方で,抗リン脂質抗体症候群をともなう虚血性脳卒中患者では,ワルファリン群の血栓塞栓イベント抑制効果はアスピリン群と同程度であった5)。また,大動脈弓プラーク患者でも,ワルファリン群と抗血小板薬2剤併用群(アスピリン+クロピドグレル)の間に複合エンドポイント(虚血性脳卒中,出血性脳卒中,末梢塞栓,心筋梗塞,血管死,頭蓋内出血)についての有意差は認められていない6)

ESUSを含む潜因性脳卒中の観察研究(Oxford Vascular Study)7)によれば,大多数の患者には抗血小板療法が施行されていた。結果として,本研究では再発率が高く,再発病型も潜因性脳卒中が多かったという成績が得られている。東京女子医科大学での検討でも,ESUSは予後が不良であることが示されている8)。さらに,一過性脳虚血発作(TIA)または軽症脳卒中患者を1年間追跡した研究9)では,ESUSの特徴である多発梗塞巣のある患者は単発梗塞巣患者または梗塞巣のない患者にくらべ,早期から再発率が高かったと報告されている。ESUSに対する有効な治療法を確立することは,喫緊の課題となっている。

●DOACへの期待

直接的経口抗凝固薬(DOAC)はワルファリンより頭蓋内出血リスクが低く,より安全と考えられる。現在,ESUS発症から間もない患者を対象に,再発性脳卒中および全身性塞栓症の発症リスク低減効果に関し,DOACの有効性および安全性をアスピリンと比較する国際共同試験が進行中である。このうちNAVIGATE ESUSは,約7,000例においてリバーロキサバン15mg 1日1回投与をアスピリン100mg 1日1回投与と比較する二重盲検試験であり,試験結果がまたれる。

文献

  • Hart RG; Cryptogenic Stroke/ESUS International Working Group. Embolic strokes of undetermined source: the case for a new clinical construct. Lancet Neurol 2014; 13: 429-38.
  • Kernan WN; American Heart Association Stroke Council, Council on Cardiovascular and Stroke Nursing, Council on Clinical Cardiology, and Council on Peripheral Vascular Disease. Guidelines for the prevention of stroke in patients with stroke and transient ischemic attack: a guideline for healthcare professionals from the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke 2014; 45: 2160-236.
  • Homma S; PFO in Cryptogenic Stroke Study (PICSS) Investigators. Effect of medical treatment in stroke patients with patent foramen ovale: patent foramen ovale in cryptogenic stroke study. Circulation 2002; 105: 2625-31.
  • Homma S; WARCEF Investigators. Warfarin and aspirin in patients with heart failure and sinus rhythm. N Engl J Med 2012; 366: 1859-69.
  • Levine SR; APASS Investigators.Antiphospholipid antibodies and subsequent thrombo-occlusive events in patients with ischemic stroke. JAMA 2004; 291: 576-84.
  • Amarenco P; Aortic Arch Related Cerebral Hazard Trial Investigators. Clopidogrel plus aspirin versus warfarin in patients with stroke and aortic arch plaques. Stroke 2014; 45: 1248-57.
  • Li L; Oxford Vascular Study. Incidence, outcome, risk factors, and long-term prognosis of cryptogenic transient ischaemic attack and ischaemic stroke: a population-based study. Lancet Neurol 2015; 14: 903-13.
  • Ishizuka K, et al. European Stroke Organization Conference 2016.
  • Amarenco P; TIAregistry.org Investigators. One-year risk of stroke after transient ischemic attack or minor stroke. N Engl J Med 2016; 374: 1533-42.


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