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米国心臓協会学術集会(AHA 2016)2016年11月12~16日,米国・ニューオーリンズ
PCI後の心房細動患者に対し,リバーロキサバンをベースとした抗血栓療法は標準療法より出血リスクを有意に低減-PIONEER AF-PCIより
2016.11.21
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AHA 2016取材班

ステント留置後の心房細動患者に対し,リバーロキサバン15mg 1日1回+P2Y12阻害薬単剤12ヵ月投与,リバーロキサバン2.5mg 1日2回+1,6,12ヵ月の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)投与はいずれも,標準療法(ビタミンK拮抗薬[VKA]+1,6,12ヵ月のDAPT)にくらべ,出血リスクを有意に抑制-11月14日,米国心臓協会学術集会(AHA 2016)にて,C. Michael Gibson氏(Beth Israel Deaconess Medical Center,米国)が発表した。

C Michael Gibson氏
C Michael Gibson氏

●背景・目的

心房細動と冠動脈疾患はいずれも加齢と関連し,またリスク因子が重複していることから,両者はしばしば併発する。しかしながら,心房細動と冠動脈疾患の至適治療法は異なり,前者では脳卒中予防のための抗凝固療法が,後者では抗血小板療法が必要となる。特に,ステント留置を行う心房細動患者に対しては,抗凝固薬と抗血小板薬2剤による3剤併用療法が必要となる。その一方で,併用薬剤数が増えるほど出血リスクが増大するというジレンマがある。

このような臨床的課題に対し,近年いくつかの検討が行われている。そのひとつが,2013年に発表されたWOEST試験1)である。経皮的冠インターベンション(PCI)をうけた抗凝固療法を必要とする患者573例(心房細動患者は全体の69%)において,VKA+クロピドグレルの2剤併用療法はVKA+クロピドグレル+アスピリンの3剤併用療法にくらべ,出血イベントならびに虚血イベントの両方を抑制し,必ずしも3剤による併用療法を必要としない可能性が示唆された。

さらに近年,出血リスク低減の観点から非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)の有用性が期待されており,いくつかの臨床研究が進行中である。そのひとつが,抗血小板薬との併用において,リバーロキサバンあるいはVKAをベースとした治療を比較したPIONEER AF-PCI試験2)である。リバーロキサバンでは対象疾患によって用量設定が異なっており,ACS後の患者には抗血小板薬に超低用量のリバーロキサバン2.5mg 1日2回の追加投与3),心房細動患者には20mg(腎機能低下例では15mg)1日1回投与となっている。そこで本試験では,WOEST試験などの先行研究の結果も踏まえ,リバーロキサバンの二つのストラテジーについて,標準治療(VKA+DAPT)との安全性が比較・検討された。

●対象

対象はステント留置施行予定の非弁膜症性心房細動患者2,124例である。脳卒中/一過性脳虚血発作既往,消化管出血,ヘモグロビン<10g/dL,クレアチニンクリアランス(CrCl)<30mL/分の症例は除外した。

●方法

シース抜去から72時間以内に,以下の3群に無作為に割り付けた。

第1群(WOEST試験1)に類似したレジメン):709例。リバーロキサバン 15mg 1日1回(中等度腎障害[CrCl 30~50mL/分]では10mg)+P2Y12阻害薬(クロピドグレル75mg 1日1回,またはプラスグレル10mg 1日1回もしくはチカグレロル90mg 1日2回)を12ヵ月併用。

第2群(ATLAS ACS 2-TIMI 51試験3)に類似したレジメン):709例。リバーロキサバン 2.5mg 1日2回+DAPT(アスピリン75mg/日+上記P2Y12阻害薬のいずれか)。DAPTの期間は無作為化前に担当医の判断で1,6,12ヵ月併用を決定,DAPT期間終了後は,リバーロキサバン 15mg 1日1回(中等度腎障害では10mg)+アスピリン75~100mg/日を併用した。

第3群:706例。用量調整VKA(目標INR 2.0~3.0)+DAPT(第2群と同じ)。第2群と同様にDAPT期間は無作為化前に担当医の判断で1,6,12ヵ月併用を決定,DAPT期間終了後は,用量調整VKA(目標INR 2.0~3.0)+アスピリン75~100mg/日を併用した。

主要評価項目は,無作為化後12ヵ月間までのTIMI基準にもとづく臨床的に重要な出血(大出血,小出血,医学的介入を必要とする出血の複合)。副次評価項目は主要評価項目の各項目,有効性有害事象として重要な心血管イベント(心血管死,心筋梗塞,脳卒中の複合と各項目),ステント血栓症。

●結果

1. 患者背景

平均年齢は第1群70.4歳,第2群70.0歳,第3群69.9歳,CrClはそれぞれ78.3mL/分,77.5mL/分,80.7mL/分であった。

当該イベントは非ST上昇型心筋梗塞18.5%,18.4%,17.8%,ST上昇型心筋梗塞12.3%,13.8%,10.7%,不安定狭心症20.7%,21.1%,23.7%,安定狭心症48.5%,46.8%,47.8%であった。ステントは薬剤溶出性ステントが 65.4%,66.8%,66.5%が留置された。心房細動の種類は持続性20.6%,20.6%,21.1%,永続性37.0%,33.6%,34.5%,発作性42.4%,45.8%,44.4%であった。

なお,第3群におけるtime in therapeutic range(TTR)は65.0%であった。

2. 安全性

安全性主要評価項目発現率は,第3群(26.7%)にくらべ,第1群では16.8%(HR 0.59,95%信頼区間[CI] 0.47-0.76,p<0.001,NNT=11),第2群では18.0%(HR 0.63,95%CI 0.50-0.80,p<0.001,NNT=12)と,リバーロキサバンの両群で有意に少なかった。

TIMI出血基準の重大な出血は,第3群3.3%に対し第1群では2.1%(p=0.234),第2群では1.9%(p=0.114),小出血は第1群1.1%(p=0.144),第2群1.1%(p=0.134),第3群2.2%で,同程度であった。医学的介入を要する出血は第1群14.6%(p<0.001),第2群15.8%(p=0.002),第3群22.6%で,リバーロキサバンの両群で有意に少なかった。

さらに,事前に規定した探索的解析としてISTH,GUSTO,BARCなどの出血基準でも,リバーロキサバンをベースとする治療群で良好な結果を示し,特にISTH基準における重大な出血は標準療法にくらべ,有意に少なかった。

性別,年齢,CHA2DS2-VAScスコア別などのサブグループ解析においても,いずれも全体成績と同様の傾向を示し,有意な交互作用を認めたものはなかった。

3. 有効性

重要な心血管イベントの複合は,第3群(6.0%)にくらべ,第1群では6.5%(HR 1.08,95%CI 0.69-1.68,p=0.750),第2群では5.6%(HR 0.93,95%CI 0.59-1.48,p=0.765)と,同程度であった。

心血管死は第1群2.4%(p=0.523),第2群2.2%(p=0.664),第3群1.9%,心筋梗塞はそれぞれ3.0%(p=0.625),2.7%(p=0.374),3.5%,脳卒中は1.3%(p=0.891),1.5%(p=0.530), 1.2%に認めた。また,ステント血栓症は0.8%(p=0.790),0.9%(p=0.574),0.7%であった。

性別,年齢,CHA2DS2-VAScスコアなどのサブグループ解析を行ったが,有意な交互作用を認めたものはなかった。

4. 全死亡または有害イベントによる再入院

事後解析4)として,全死亡または有害イベントによる再入院について検討した。その結果,第3群(41.9%)にくらべ,第1群では34.9%(HR 0.79,95%CI 0.66-0.94,p=0.008,NNT=15),第2群では31.9%(HR 0.75,95%CI 0.62-0.90,p=0.002, NNT=10)と,リバーロキサバンの両群で有意に抑制された。再入院についても第1群34.1%(p=0.005),第2群31.2%(p=0.001),第3群41.5%で有意差を認めた。

また,心血管疾患による入院は第1群20.3%(p<0.001),第2群20.3%(p=0.005),第3群28.4%,出血イベントによる入院はそれぞれ6.5%(p=0.012),第2群5.4%(p=0.001),第3群10.5%と,いずれも第3群にくらべリバーロキサバンの両群で有意に少なかった。

●結論

ステントを留置された心房細動患者において,リバーロキサバン15mg 1日1回+P2Y12阻害薬単剤12ヵ月投与,リバーロキサバン2.5mg 1日2回+1,6,12ヵ月のDAPT併用のいずれも,標準治療(VKA+1,6,12ヵ月のDAPT併用)にくらべ,臨床的に重要な出血リスクを有意に抑制した。この結果を解釈するうえで重要なのは,3剤併用療法の期間が先行研究と異なる点である。すなわちWOEST試験では66.5%に1年間の3剤併用が行われたのに対し,PIONEER AF-PCI試験では22.7%と,より短縮された標準療法との比較においてリバーロキサバンをベースとした治療群では,さらに出血リスクを低減させたことである。なお,有効性は信頼区間が広いものの,同程度であった。

ディスカッサント: Philippe Gabriel Steg氏
ディスカッサント:
Philippe Gabriel Steg氏

ディスカッサントのGabriel Steg氏(Hopital Bichat,フランス)は,以下のように述べた。

まずはPIONEER AF-PCI試験の成功に祝意を表したい。困難だが重要な課題に対し,本試験の成功により,PCIを施行する心房細動患者の治療に関して大きな進歩が得られた。これらの患者では,脳卒中発症抑制のために抗凝固療法が必要となる一方,ステント血栓症発症抑制のために抗血小板療法も必要となる。しかしながら,抗凝固療法と抗血小板療法を併用した場合,出血リスクが上昇する。そのため,薬剤の選択,用量,期間に関し,至適ストラテジーを明確にすることは臨床上の大きな課題となっている。

PIONEER AF-PCI試験は,本分野におけるNOACに関するはじめての試験である。NOACはVKAにくらべ安全性および利便性にすぐれることから,本分野において大変重要な試験となる。

●本試験の解釈

本試験での重要な結果は,リバーロキサバン+P2Y12阻害薬併用ならびにDAPT併用のいずれも,VKA+DAPT併用にくらべ出血を抑制したことである。しかしながら,本結果はいくつかの点を考慮する必要がある。

1. 低用量リバーロキサバンの有効性

リバーロキサバンのレジメンでは低用量(15mg 1日1回+P2Y12阻害薬併用または2.5mg 1日2回+DAPT併用)が用いられた。しかし,心房細動患者における脳卒中発症抑制に対し,通常用量としての15mg 1日1回は,日本を除き認可されていない。そのため,低用量を用いることにより脳卒中発症抑制の効果が保たれるかは今後検討していく必要がある。

2. 有効性についての試験ではない

推定値もしくはイベント発症率が重なっているため,リバーロキサバンのレジメンはVKA+DAPT併用に比較し,脳卒中もしくは心血管イベント発症抑制について同等あるいは非劣性の可能性がある。しかしながら,脳卒中発症抑制およびCIに目を向けると,CIの範囲が広く,低用量リバーロキサバンによる脳卒中の増加リスクを排除するには検出力が不足している。とはいえ,全体の脳卒中発症率は低く,低用量を用いることは問題にならないことを示している。

3. WOEST試験とは異なるストラテジー

リバーロキサバンのストラテジーは,WOEST試験でのVKA+クロピドグレル単剤併用とは異なる。WOEST試験,本試験のいずれも,試験薬群は標準治療(VKA+DAPT併用)にくらべ出血が抑制された。しかし,WOEST試験では心血管イベントならびに死亡を抑制したものの,両試験のいずれも有効性に関しては結論を出すことはできない。

4. その他

本試験はDAPT期間については医師の判断で行われており,無作為割付されていないため,DAPTの至適期間に関するする情報は得られなかった。post hoc解析での結果ではあるが,再入院に関するデータは興味深く,また重要である可能性がある。

●まとめ

現在,PCIを施行する心房細動患者に対する抗血栓療法に関してはエビデンスが限られているなか,本試験はリバーロキサバンの安全性について重大な情報をもたらした。本試験より,PCIを施行する心房細動患者に対し,今後の臨床がどう変わるのかが注目される。

(注記)リバーロキサバンの「非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制」に対する用法・用量は,「通常,成人にはリバーロキサバンとして15mgを1日1回食後に経口投与する。なお,腎障害のある患者に対しては,腎機能の程度に応じて10mg 1日1回に減量する」であり,PIONEER AF-PCI試験で検討された2.5mg 1日2回の用法・用量については,日本では承認が取得されておりません。

文献

  • Dewilde WJ; WOEST study investigators. Use of clopidogrel with or without aspirin in patients taking oral anticoagulant therapy and undergoing percutaneous coronary intervention: an open-label, randomised, controlled trial. Lancet 2013; 381: 1107-15.
  • Gibson CM, et al. Prevention of bleeding in patients with atrial fibrillation undergoing PCI. N Engl J Med Nov 14, 2016.
  • Mega JL, et al. Rivaroxaban in patients stabilized after a ST-segment elevation myocardial infarction: results from the ATLAS ACS-2-TIMI-51 trial (Anti-Xa Therapy to Lower Cardiovascular Events in Addition to Standard Therapy in Subjects with Acute Coronary Syndrome-Thrombolysis In Myocardial Infarction-51). J Am Coll Cardiol 2013; 61:1853-9.
  • Gibson CM, et al. Recurrent Hospitalization Among Patients With Atrial Fibrillation Undergoing Intracoronary Stenting Treated With 2 Treatment Strategies of Rivaroxaban or a Dose-Adjusted Oral Vitamin K Antagonist Treatment Strategy. Circulation Nov 14, 2016.


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