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第40回日本脳卒中学会総会(STROKE 2015)2015年3月26〜29日,広島
心房細動合併高血圧の管理
2015.4.21
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甲斐久史氏
甲斐久史氏

心房細動の一次予防・二次予防,塞栓症予防のためには原則として140/90mmHg未満,可能であれば130/80mmHg未満を目指す-3月26日,第40回日本脳卒中学会総会(STROKE 2015)にて,甲斐久史氏(久留米大学心臓・血管内科)が発表した。

●心房細動による死亡リスク

高齢化の進展にともない,心房細動の有病率は増加している1, 2)。また,一般住民における研究では,心房細動は死亡リスクを約2倍に上昇させると報告されている3)。心房細動は,全身疾患の終末像として基礎疾患にくわえて診断された場合は早期に死亡すること,また心不全(収縮不全・拡張不全),心原性脳塞栓症,全身性血栓塞栓症といった心房細動の長期的な合併症が死亡リスクに関連するためである。

●心房細動の発症・慢性化と血圧管理

心房細動患者について検討した国内外の研究では,おしなべて登録患者の約半数が高血圧を有している。高血圧は,心房細動のもっとも重要な基礎疾患といえる。Framingham study4)では,高血圧により心房細動の発症リスクが約1.5倍になること,逆に脳梗塞発症患者における解析5)では,脳梗塞の病型にかかわらず高血圧を有している割合が高いことが報告されている。また,WHS試験6)では血圧が高いほど心房細動の発症リスクが高くなり,閾値は特にないこと,さらに,高血圧は心リモデリングと関連することが知られているが,PIUMA試験7)では左室肥大・左房拡大が心房細動慢性化のリスクとなることがそれぞれ報告されている。

一方,LIFE試験のサブ解析では,降圧療法により左室肥大が退縮すると心房細動の新規発症が抑制され8),降圧療法の重要性が示された。

●心房細動患者に対する抗凝固療法と血圧管理

慢性心房細動患者において,脳卒中/血栓塞栓症リスクは血圧の高い(収縮期血圧>140mmHg)群で増大することが,SPORTIF試験のサブ解析よりわかっている9)。さらにPROGRESS試験より,高血圧は抗血栓療法中における頭蓋内出血の重大なリスク因子であることが示されている10)。心房細動患者に対しては抗凝固療法が必要になるが,PROGRESS試験の抗血栓療法中の患者におけるサブ解析では,実薬群の血圧はプラセボ群にくらべ収縮期血圧(SBP)/拡張期血圧(DBP)が8.9/4.0mmHg低下し,頭蓋内出血は46%減少した。また,有意狭窄を有する冠動脈疾患患者12,936例の検討では,抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)時では>140mmHg,DAPT+ワルファリン併用時では>160mmHgになると脳卒中発症率が上昇していた11)。これらより,抗血栓療法中の患者におけるイベント予防のためには,厳格な血圧管理が求められると考えられる。

一方,非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)による脳卒中抑制効果は,ワルファリンと同程度,もしくはすぐれていた12)。特に出血性脳卒中は,NOACはワルファリンにくらべ半減するという結果であった。

しかしながら,抗凝固薬を検討した大規模臨床試験の対象患者の平均SBPは130~135mmHgであったのに対し,実地臨床ではもっと血圧値の高い高齢者を対象とすることが多い。血圧が高いまま経口抗凝固薬を導入すると,出血リスクがきわめて高くなることが懸念される。降圧薬服用中でも実際の降圧目標達成率は低く,中等症以上の高血圧(SBP>160mmHg)では血圧管理を優先することも考慮に入れる必要がある。特にNOACはワルファリンにくらべ効果発現がはやいため,注意が必要である。

●心房細動患者の降圧目標と降圧薬の選択

前述のSPORTIF試験のサブ解析9)より,慢性心房細動患者における脳卒中/血栓塞栓症予防のためには,SBP 130mmHg未満が望ましいと考えられる。BAT研究後付け解析13)でも同様の報告がされ,高血圧治療ガイドライン2014(JSH2014)14)では,心房細動患者における降圧目標は140/90mmHg未満,可能であれば,もしくは忍容性があれば130/80mmHg未満が望ましいとしている。

降圧薬の選択は,クラスにかかわらず血圧が下がることが重要である。安定した降圧にはカルシウム拮抗薬,利尿薬(脱水に注意),左室肥大・左房拡大・心不全合併患者に対してはアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬,アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB),心房細動へのレートコントロールも考慮する場合はβ遮断薬が選択される。

●結語

心房細動の一次予防・二次予防,塞栓症予防のためには高血圧管理が重要である。降圧薬の種類にかかわらず,原則として140/90mmHg未満,可能であれば130/80mmHg未満を目指す。今後の大規模臨床試験により,心房細動予防および抗血栓薬服用中の心房細動患者における降圧目標のエビデンスの構築が必要である。

文献

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  • 藤島正敏.循環器学の進歩 高齢者の循環器疾患-脳血管障害のリスクファクターとしての心疾患.循環器専門医 1998; 6: 19-26.
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  • 日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会編.高血圧治療ガイドライン2014.ライフサイエンス出版,東京,2014.


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