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第40回日本脳卒中学会総会(STROKE 2015)2015年3月26〜29日,広島
超高齢心原性脳塞栓症患者の臨床的特徴
2015.4.14
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萩井譲士氏
萩井譲士氏

高齢者に発症した心原性脳塞栓症はより予後が不良であった。高齢者の特徴であるCHADS2スコア高値例,腎機能低下例に配慮した抗凝固療法が望まれる-3月26日,第40回日本脳卒中学会総会(STROKE 2015)にて,萩井譲士氏(弘前脳卒中・リハビリテーションセンター内科)が発表した。

●背景・目的

脳梗塞の臨床病型のなかで,心原性脳塞栓症の割合は加齢とともに増加する1)。久山町研究の経年変化からみた心原性脳塞栓症の割合も,年々増加している2)。心原性脳塞栓症の主因である心房細動は加齢とともに有病率が増えるため3),現在の日本の高齢社会において,その予防は重要な課題といえる。 本研究では,弘前脳卒中・リハビリテーションセンターに入院した心原性脳塞栓症例について,80歳以上および未満に分け,その臨床的特徴を検討した。

●方法

対象は,2011年4月~2014年3月の3年間に当院に入院した心原性脳塞栓症患者連続644例(発症7日以内の急性期入院516例+8~60日以内の慢性期入院128例)である。平均年齢は77.7歳,男性は52%であった。心原性脳塞栓症の病型診断は,禁忌のない症例には全例頭部MRIを施行し,TOAST分類を基本として脳卒中専門医が行った。 症例を80歳以上群(311例)および80歳未満群(333例)に分け,発症前の抗凝固療法,発症時の臨床的特徴,予後などを後方視的に比較した。

●結果

1. 患者背景

80歳以上群は80歳未満群にくらべ男性が少なく(37% vs. 66%,p<0.0001),体重(49.6kg vs. 58.3kg,p<0.001),BMI(21.9kg/m2 vs. 22.9 kg/m2,p<0.001)はともに低かった。心房細動保有率は80歳以上群で多い傾向がみられた(83% vs. 77%,p=0.06)。平均クレアチニンクリアランス(CCr)は80歳以上群41.7mL/分で,80歳未満群66.9mL/分にくらべ低く(p<0.001),CCr≧50mL/分の割合は 80歳以上群26%,80歳未満群76%であった。

うっ血性心不全(40% vs. 26%,p<0.001),脳梗塞/一過性脳虚血発作(TIA)既往(62% vs. 48%,p<0.001)は80歳以上群で多く,発症前CHADS2スコア中央値も4 vs. 3と高かった(p<0.001)。

2. 発症前の抗凝固療法

発症時の抗凝固療法施行率は80歳以上群31% vs. 80歳未満群29%といずれも低く,同程度であった(p=0.393)。内訳をみると,80歳以上群ではワルファリン単独71例(23%),ワルファリン+抗血小板薬併用17例(6%),NOAC単独7例(2%),NOAC+抗血小板薬併用1例(0%),抗血栓薬なし156例(50%),80歳未満群ではそれぞれ66例(20%),18例(5%),13例(4%),1例(0%),176例(53%)であった。

ワルファリンを投与されていた全172例のうち,発症から48時間以内のプロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)を測定できた123例における平均PT-INRは,80歳以上群(69例)1.35,80歳未満群(54例)1.40でいずれも治療域以下であり,同程度であった(p=0.448)。

3. 心原性脳塞栓症の重症度

発症前mRS 0~1の割合は80歳以上群68%と80歳未満群88%にくらべ低く(p<0.001),入院時のNIHSS中央値は12 vs. 8と高かった(p<0.001)。rt-PA静注療法施行率には有意差を認めなかった(13% vs. 17%,p=0.159)。

機能的転帰不良(退院時mRS≧4)の割合は80歳以上群58%と未満群35%にくらべ高く(p<0.001),発症前のmRSが0~1であった患者においても49% vs. 32%と同様の結果であった。死亡率は同程度であった(9% vs. 7%,p=0.202)。

●考察

心原性脳塞栓症の48%は80歳以上,24%は85歳以上の超高齢者であった。高齢の心原性脳塞栓症患者は,女性が多く,低体重,腎機能低下,発症前CHADS2スコア高値,脳梗塞既往が多いという特徴がみられた。また,入院時NIHSSが高く,死亡率は同程度であったが,機能的予後は不良であった。これは認知機能低下,既存の後遺症や併存疾患,加齢による体力低下などが退院時のmRS低下の原因となっている可能性が考えられた。

発症前の抗凝固療法施行の割合は両者で有意差を認めなかった(80歳以上群31%,未満群29%)。ただし,投与薬剤はワルファリンが多く,発症時PT-INRは両群とも治療域に達していない症例が多かった。

●結語

高齢者に発症した心原性脳塞栓症はより予後が不良であった。ワルファリンによる抗凝固療法は十分に機能しているとはいえず,高齢者の特徴であるCHADS2スコア高値例,腎機能低下例に配慮した抗凝固療法が望まれる。

文献

  • 山口修平ほか.脳卒中データバンクから見た最近の脳卒中の疫学的動向.脳卒中 36; 2014: 378-84.
  • 中村普之ほか.データバンクにおける脳梗塞病型別頻度と久山町における時代的推移.小林祥泰編.脳卒中データバンク2009.中山書店,東京,2009,p58-9.
  • 井上博.心房細動治療の最新知見 J-RHYTHMの結果を踏まえて-心房細動の疫学 わが国における疫学調査.Prog Med 2007; 27: 2437-41.


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