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第40回日本脳卒中学会総会(STROKE 2015)2015年3月26〜29日,広島
リバーロキサバン特定使用成績調査(PMS)の最新情報
―約7,000例での中間集計結果が発表に―
2015.4.27
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峰松一夫氏
峰松一夫氏

リバーロキサバンの特定使用成績調査(PMS)の中間集計結果が発表に。国内第Ⅲ相試験J-ROCKET AFから予測し得ない頻度の出血や有効性イベントの発現は確認されず-3月28日,第40回日本脳卒中学会総会(STROKE 2015)にて,峰松一夫氏(国立循環器病研究センター副院長)が発表した。

●PMSの概要

リバーロキサバンのPMSは,虚血性脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制のために同薬を投与された非弁膜症性心房細動患者約1万例を登録目標として,発売日の2012年4月18日より開始された。2年間の標準観察期間を経て,最長5年間の予後調査が予定されている。本調査は,リバーロキサバンの使用実態下における安全性・有効性の情報を収集・分析し,継続的にフィードバックしていくことで,適正な使用法を確立していくことを目的としており, おもな評価項目は以下の2項目である。

  • 出血性副作用(特に高齢者,低体重者)
  • 有効性に関連する事象(虚血性脳卒中,出血性脳卒中,全身性塞栓症,心筋梗塞)の発現状況

2014年6月末に11,310例の登録が完了,2015年3月現在は観察期間に入っている。今回は2014年12月22日時点の調査票回収・データ固定症例7,154例での中間集計結果,ならびにJ-ROCKET AF1)との比較から,臨床治験では明らかにならなかった実地臨床における問題点や課題などについて検討した。

●患者背景

安全性解析対象集団7,083例の患者背景について,J-ROCKET AFと比較した。J-ROCKET AFと比べ,本調査では高齢者および女性が多く(75歳以上の割合は本調査49.0%に対しJ-ROCKET AFのリバーロキサバン群39.4%,女性の割合は38.0%に対し17.1%),体重≦50kgの割合も多かった(18.7%に対し8.9%)。一方,平均CHADS2スコアは本調査の2.2点に対しJ-ROCKET AFでは3.3点,脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)/全身性塞栓症既往の割合は23.4%に対し63.8%と低かった。

●結果

1. 安全性

安全性解析対象集団7,083例における重大な出血事象発現率は,全体では1.20%/年で,J-ROCKET AFのリバーロキサバン群の3.00%/年に比べ,低い傾向にあった。

つぎに出血の高リスク集団となる高齢者(75歳以上),腎機能低下例(クレアチニンクリアランス[CLcr]30~<50mL/分),脳卒中/TIA既往例のサブグループ集団において,J-ROCKET AFと比較した。重大な出血事象について,75歳以上では本調査の1.42%/年に対し,J-ROCKET AFでは5.01%/年,CLcr 30~<50mL/分では1.93%/年に対し5.09%/年,脳卒中/TIA既往例では2.45%/年に対し2.40%/年であった。

頭蓋内出血発現率は,全体では0.50%/年(J-ROCKET AFのリバーロキサバン群では0.57%/年), 75歳以上では0.57%/年(同1.47%/年),CLcr 30~<50mL/分では0.80%/年(同1.32%/年),脳卒中/TIA既往例では1.03%/年(同0.62%/年)であった。

2. 有効性

有効性解析対象集団7,061例における有効性に関連する事象(虚血性脳卒中,出血性脳卒中,全身性塞栓症,心筋梗塞の複合)発現率は,全体では1.22%/年で,J-ROCKET AFのリバーロキサバン群では1.26%/年であった。

サブグループ集団について,75歳以上では1.60%/年(J-ROCKET AFのリバーロキサバン群では2.18%/年),CLcr 30~<50mL/分では>1.78%/年(同2.77%/年),脳卒中/TIA既往例では2.75%/年(同1.66%/年)であった。

有効性イベントのうち,虚血性脳卒中発現率は,全体では0.90%/年(J-ROCKET AFのリバーロキサバン群では0.80%/年), 75歳以上では1.29%/年(同1.25%/年), CLcr 30~<50mL/分では1.21%/年(同1.67%/年),脳卒中/TIA既往例では2.00%/年(同1.10%/年)であった。

●CHADS2スコア別の分析

1. 患者背景

本調査対象患者をJ-ROCKET AFでは含まれていなかったCHADS2スコアスコア0~1点と,2点以上に分類し,比較した。本調査では0~1点が2,414例,≧2点が4,740例であった。患者背景比較から,0~1点では,2点以上と比べ年齢が若く(平均年齢は0~1点:67.1歳,≧2点:76.2歳),体重≦50kgの割合が少なかった(19.4%,25.6%)。なお,本調査には,J-ROCKET AFでは対象から除外された重度の腎機能低下例(CLcr 15~29mL/分)が0~1点では0.3%,≧2点では3.8%含まれていた。また,脳卒中/TIA既往例は0%および35.3%であった。

2. 安全性

重大ではないが臨床的に問題となる出血発現率は,CHADS2スコア0~1点では4.68%/年,≧2点では4.78%/年(J-ROCKET AFのリバーロキサバン群では15.42%/年),重大な出血は0.79%/年および1.40%/年(同3.00%/年)であった。

3. 有効性

虚血性脳卒中,出血性脳卒中,全身性塞栓症,心筋梗塞の複合発現率は,CHADS2スコア0~1点例では0.35%/年,≧2点例では1.67%/年(J-ROCKET AFのリバーロキサバン群では1.26%/年)であった。内訳をみると,虚血性脳卒中は0.25%/年および1.22%/年(同0.80%/年),出血性脳卒中は0.10%/年および0.32%/年(同0.34%/年)であった。

●用量別の分析

本調査において,リバーロキサバンは10mg/日が3,550例に,15mg/日が3,604例に投与されていた。用量別に解析したところ,10mg例は15mg例にくらべ平均年齢が高く(10mg例77.8歳 vs. 15mg例68.6歳,p<0.0001),女性が多く(47.1% vs. 28.9%,p<0.0001),体重≦50kgが多かった(33.1% vs. 14.1%,p<0.0001)。また,10mg例のほうがCHADS2スコア(0~1点:21.8% vs. 45.5%,≧2点:78.2% vs. 54.5%,p<0.0001),modified HAS-BLEDスコア(<3点:78.1% vs. 92.8%,≧3点:21.9% vs. 7.2%,p<0.0001)が高い症例,抗血小板薬併用例(16.5% vs. 12.5%,p<0.0001)が多かった。

リバーロキサバンはCLcr<50mL/分の場合に10mg/日への減量投与となるが,本調査では10mg/日投与例の49.7%がCLcr≧50mL/分の症例であった。ロジスティックモデルによる多変量解析を行ったところ,10mg/日の用量選択に影響を与えた因子は,CLcr<50mL/分(オッズ比[OR]7.04;95%信頼区間[CI]5.89-8.42)のほか,年齢75歳以上(OR 3.99;3.54-4.49),体重≦50kg(OR 1.52;1.26-1.84),女性(OR 1.39;1.23-1.59),うっ血性心不全既往(OR 1.36;1.18-1.56),抗血小板薬併用(OR 1.28;1.09-1.51)であった。

なお,2013年1月時点の中間集計における体重未測定例は15.3%であったが,今回の調査では6.9%となっていた。

●服薬アドヒアランスと虚血性脳卒中の発現

有効性解析対象集団における服薬アドヒアランスは94.4%と高い状況であった。一方,飲み忘れがあると回答する症例も397例(5.7%)存在し,1ヵ月あたりの飲み忘れ回数は3回が2例,4回以上は6例であった。飲み忘れの有無別の虚血性脳卒中発現率は,飲み忘れなしでは46例(0.8%/年)であったのに対し,飲み忘れありでは8例(2.4%/年)で,3回あるいは4回以上飲み忘れことがあると回答した症例で発現が認められた。

●まとめ

リバーロキサバンのPMS中間集計結果より,J-ROCKET AFから予測し得ない頻度の出血や有効性イベントは確認されなかった。本調査における重大な出血発現率は1.20%/年,有効性イベント(脳卒中,全身性塞栓症,心筋梗塞の複合)発現率は1.22%/年であった。出血あるいは脳梗塞の高リスク集団である,高齢者や腎機能低下例,脳卒中/TIA既往例においても同様に,予測しえない頻度の発現は認められなかった。また,J-ROCKET AFでは対象から除外したCHADS2スコアスコア0~1点の症例においても,リバーロキサバンの安全性および有効性を確認した。

なお,実地臨床では,低用量(10mg)選択に関して,CLcrだけでなく高齢,低体重,性別(女性),抗血小板薬の併用などが考慮されている現状が見受けられた。また実地臨床における服薬アドヒアランスは良好であったが,頻繁に飲み忘れる症例に対しての服薬指導の重要性が示唆された。

文献

  • Hori M, et al. on behalf of the J-ROCKET AF study investigators. Rivaroxaban vs. warfarin in Japanese patients with atrial fibrillation. Circ J 2012; 76: 2104-11.


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