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第40回日本脳卒中学会総会(STROKE 2015)2015年3月26〜29日,広島
脳卒中治療ガイドライン2015 の発刊について
2015.4.13
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小川彰氏
小川彰氏

「脳卒中治療ガイドライン2015」の刊行は6月下旬を予定。3月26日,第40回日本脳卒中学会総会(STROKE 2015)にて,小川彰氏(岩手医科大学理事長・学長)がその概要を発表した。

●「脳卒中治療ガイドライン2015」が刊行

「脳卒中治療ガイドライン2009」(以降「2009」と略す)1)の刊行から約6年が経過し,新版が「脳卒中治療ガイドライン2015」(以降「2015」と略す)として6月下旬に刊行される。「2009」は日本脳卒中学会,日本脳神経外科学会,日本神経学会,日本神経治療学会,日本リハビリテーション医学会の代表で構成する脳卒中合同ガイドライン委員会(任意団体)により作成されたが,「2015」は法人としての日本脳卒中学会のなかに脳卒中ガイドライン委員会(委員長:小川彰氏,全ガイドライン委員147名)を設け,上記5学会の全面的協力を得て作成される。

また,新知見が続々と得られている現状を受け,今後は,次のガイドライン大幅改訂までの間に,1年に1回あるいは2年に1回の頻度で,ウェブサイト上で小改訂を公開する仕組みを構築する予定である。

●「2015」作成のための論文検索

「2009」では2007年4月末までの文献を検索してガイドラインを作成したため,「2015」では2007年5月~2013年12月末の文献検索を行った。新規項目や変更項目に関しては,初版同様に1992年以降の文献を検索した。言語は日本語および英語に限定した。なお,委員会が妥当と判断したものに関しては,2014年1月以降に発表された論文からもハンドサーチ文献として引用した。

●「2015」のエビデンスレベルおよび推奨グレード

「2009」ではNational clinical guidelines for strokeの分類(1999)に準じ,Oxford Centre for evidence-based medicine(OCEBM)の分類(2001)を一部取り入れたものを用いたが,「2015」ではOCEBM 2011 levels of evidence2)を採用した。これは5段階に分かれており,レベル1:ランダム化比較試験(RCT)メタアナリシス,レベル2:RCT/劇的な効果のある観察研究,レベル3:非ランダム化比較コホート/追跡研究,レベル4:症例集積研究/症例対照研究/ヒストリカルコントロール研究,レベル5:メカニズムにもとづく推論となっている。「2009」のエビデンスレベルIaが「2015」のレベル1,Ibがレベル2,IIaがレベル3,IIbおよびIIIがレベル4,IVがレベル5にそれぞれ相当する。

「2015」の推奨グレードは,A:行うよう強く勧められる,B:行うよう勧められる,C1:行うことを考慮してもよいが,十分な科学的根拠がない,C2:科学的根拠がないので勧められない,D:行わないよう勧められる,の5段階とした。エビデンスのレベル,推奨グレードの決定にあたって,人種差,民族差の存在は考慮しなかった。

●論文の採否と評価

試験デザインがRCTであったとしても,副次評価項目で示されたエビデンスは慎重に評価した。per protocol(PP)分析など,intention-to-treat(ITT)でない分析で示されたエビデンス,階層解析や事後的探索的解析で示されたエビデンスに関しては,1段階あるいは2段階下げた評価を行った。また,試験の手続きが不明で批判的吟味が行えない学会抄録やレターなどは採用しなかった。結論は著者の評価ではなく,批判的吟味を加えて新たに判断した。

●推奨する薬剤の表記

推奨される薬剤の表記順は,企業の恣意的な意図に影響されず,中立な立場で吟味したうえで,以下の原則に従った。

  • エビデンスレベルの高いものから並べる。
  • エビデンスレベルが同じ場合は,副作用などを勘案したトータルベネフィットの高いものから並べる。
  • エビデンスレベル,副作用なども含めたトータルベネフィットが同等の場合は,日本国内での発売順とする。

●改訂のポイント

7つの大項目は「2009」に準拠した。改訂のポイントは以下の通りである。

1. 脳卒中一般

  • 最新のエビデンスにもとづき,「脳卒中急性期の呼吸・循環・代謝管理」「合併症対策」の項目を大きく改訂した。
  • 「発症予防」では高血圧と心房細動を大きく変更し,「炎症マーカー」を追加した。
  • 後期高齢者の降圧目標は150/90mmHg未満に緩和した。
  • 非弁膜症性心房細動(NVAF)患者において,CHADS2スコア2点以上の場合は,非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)またはワルファリンによる抗凝固療法の実施を強く推奨した。
  • 「地域連携」の項目を新たに追加した。

2. 脳梗塞・TIA

  • rt-PA静注療法の治療可能時間が延長され,発症から4.5時間以内のrt-PA静注療法をグレードAとして推奨した。
  • 抗血小板薬2剤併用は,発症早期の非心原性脳塞栓症または一過性脳虚血発作(TIA)の治療法として推奨項目に追加した。
  • NVAF患者への選択的トロンビン阻害薬,第Xa因子阻害薬の経口投与は,ワルファリンと同等もしくはそれ以上の脳梗塞,全身性塞栓症の抑制効果があるとした。
  • 慢性期の抗血小板療法について,シロスタゾールの推奨レベルをアスピリン,クロピドグレルと同じグレードAとした。
  • 脳梗塞・TIA患者の再発予防におけるNOACの役割は,まだ十分なエビデンスはないものの,ワルファリンをしのぐ有効性,安全性が期待されるとした。

3. 脳出血

  • おもに急性期における血圧管理の重要性について,新たなエビデンスを追加した。
  • 脳出血急性期において,できるだけ早期に収縮期血圧を140mmHg未満に低下させることを推奨した。
  • 脳出血急性期に用いる降圧薬として,カルシウム拮抗薬の微量点滴静注を推奨した。

4. くも膜下出血

  • 開頭クリッピングと脳血管内治療の進歩にともない,治療法選択のアルゴリズムは改良され続けている。開頭外科治療と血管内治療のそれぞれの立場から,患者と脳動脈瘤の所見を総合的に判断して決定するよう改訂した。
  • 血管内治療の長期成績についてのデータが蓄積されている。血管内治療では補助手段を用い,高い塞栓率を目指すことが推奨された。
  • 全身的薬物療法として,ファスジルやオザグレルナトリウムの投与をグレードBからグレードAに変更した。

5. 無症候性脳血管障害

  • 脳画像診断の進歩により,脳微小出血が検出できるようになった。脳梗塞急性期にrt-PA静注による血栓溶解療法を行う場合,微小脳出血をともなうことが投与禁忌の理由とはならないことを追加した。
  • 無症候性頸動脈狭窄は脳梗塞発症の原因となるため,一次予防としての動脈硬化リスク因子の管理が勧められることを追加した。

6. その他の脳血管障害

  • 凝固亢進状態(抗リン脂質抗体症候群,高ホモシステイン血症,先天性血栓性素因)を「その他の脳血管障害」に移行した。
  • 悪性腫瘍にともなう凝固亢進状態をきたし脳卒中を生じるTrousseau症候群を追加した。
  • 大動脈解離,遺伝性脳血管障害(Fabry病,常染色体性優性遺伝性脳動脈症[CADASIL],常染色体性劣性遺伝性脳動脈症[CARASIL])を取り上げた。
  • コリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジル,ガランタミン,リバスチグミン,N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体阻害薬であるメマンチンは血管性認知症に有効であるとする試験結果がある。リバスチグミンはグレードC1,その他はグレードAで推奨されているが,保険適応ではない。

7. リハビリテーション

  • 維持期リハビリテーションに関しては,メタアナリシスも増え,推奨グレードが高くなった。
  • おもな障害・問題点に対するリハビリテーションにおいても,全般にエビデンスとなる論文を追加した。
  • 特に上肢機能障害,歩行障害のリハビリテーションや,ボツリヌス療法,中枢性疼痛,嚥下障害,認知障害,体力,骨粗鬆症に関する論文を多数追加した。

文献

  • 篠原幸人ほか.脳卒中治療ガイドライン2009.協和企画,東京,2009.
  • http://www.cebm.net/ocebm-levels-of-evidence/

脳卒中治療ガイドライン2015
編集:日本脳卒中学会脳卒中ガイドライン委員会,小川 彰,出江紳一,片山泰朗,嘉山孝正,鈴木則宏
発売日:2015年6月25日
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