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第79回日本循環器学会学術集会(JCS 2015)2015年4月24〜26日,大阪
リバーロキサバンはPAR-2シグナル伝達経路抑制を介して,心房の炎症・線維化抑制に寄与する可能性が示唆
2015.5.13
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近藤秀和氏
近藤秀和氏

リバーロキサバンはFXa阻害を介した抗炎症,抗線維化作用を有し,心保護的に働く可能性がある-4月24日,第79回日本循環器学会学術集会(JCS 2015)にて,近藤秀和氏(大分大学医学部循環器内科・臨床検査診断学講座)が発表した。

●背景・目的

ワルファリンは非弁膜症性心房細動患者の脳卒中予防に多く使われてきたが,ワルファリンを長期投与することで,ビタミンK阻害による内皮機能障害あるいは石灰化が生じるとの報告が散見される1~3)。対して,非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)である第Xa因子(FXa)阻害薬および直接トロンビン阻害薬は,いずれもプロテアーゼ活性化受容体(PAR)-2シグナル伝達経路を間接的に阻害するため,抗炎症作用を有する可能性が報告されている4, 5)。またマウスを用いた検討では,PAR-2過剰発現により心肥大が誘発され,PAR-2をノックアウトすると心筋梗塞後の心リモデリングが抑制されることが報告されている6)

そこで,心臓圧負荷モデルマウスを用いて,FXa阻害薬リバーロキサバンのPAR-2シグナル伝達経路抑制を介する抗炎症作用について検討を行った。

●方法

実験には,6週齢のマウス(CL57/B6)を用いた。横行大動脈狭窄術(TAC)を施すグループとシャム術(偽手術)を施すグループに分け,それぞれにリバーロキサバンあるいはvehicleを投与した。群分けは以下のとおりである。

  • TAC-RVX群(TAC術の後,リバーロキサバン30mg/kgを1日1回経口投与)
  • TAC-vehicle群(TAC術の後,vehicle投与)
  • シャム-RVX群(シャム術の後,リバーロキサバン30mg/kgを1日1回経口投与)
  • シャム-vehicle群(シャム術の後,vehicle投与)
試験薬を2週間投与した後,心筋線維化の程度,種々の線維化マーカーおよび炎症マーカー,PAR-2の発現などを測定・評価した。

●結果

リバーロキサバンを投与した2群(TAC-RVX群,シャム-RVX群)では,尾静脈出血時間(TVBT),プロトロンビン時間(PT)の有意な延長が確認された。

TAC-vehicle群では,左心室/左心房において線維化の増強がみられたが,リバーロキサバンを投与したTAC-RVX群では,その反応が有意に抑制されていた(左心房p=0.017,左心室p=0.031)。TAC-vehicle群では左心房に血栓の存在も確認されたが,TAC-RVX群では観察されなかった。さらに,TAC-vehicle群では左心房におけるプラスミノーゲン活性化抑制因子(PAI)-1の増加や,大量のマクロファージ浸潤が認められたが,TAC-RVX群ではそれらが抑制されていた。

TAC術は心臓における単球走化活性因子(MCP)-1および線維化マーカー(I型コラーゲン)の発現,左心房における炎症マーカー(腫瘍壊死因子[TNF]-α,インターロイキン[IL]-1βおよびIL-6)mRNAの発現も亢進させた。これらのマーカーは,いずれもTAC-RVX群でTAC-vehicle群に比し有意に低いレベルとなり,リバーロキサバンによる線維化の抑制および炎症反応の抑制が認められた。

その一方で,TAC術により誘発されたPAR-2発現増強に対しては,リバーロキサバンによる抑制作用はみられなかった。

●まとめ

心臓に圧負荷がかかると,PAR-2シグナル経路が活性化し,心房の炎症・線維化の促進に寄与することが考えられる。今回,TAC術後の炎症反応,線維化反応に対するリバーロキサバンの抑制作用が明らかになった。その機序として,リバーロキサバンはPAR-2発現自体に対する抑制作用を示さなかったことから,FXa阻害によるPAR-2シグナル伝達経路を抑制することで,抗炎症作用,抗線維化作用を発揮し,心保護に働く可能性があると考えられた。

文献

  • Koos R, et al. Relation of oral anticoagulation to cardiac valvular and coronary calcium assessed by multislice spiral computed tomography. Am J Cardiol 2005 15; 96: 747-9.
  • Krüger T, et al. Warfarin induces cardiovascular damage in mice. Arterioscler Thromb Vasc Biol 2013; 33: 2618-24.
  • Chatrou M, et al. Vascular calcification: the price to pay for anticoagulation therapy with vitamin K-antagonists. Blood Rev 2012; 26: 155-66.
  • Bogatkevich GS, et al. Antiinflammatory and antifibrotic effects of the oral direct thrombin inhibitor dabigatran etexilate in a murine model of interstitial lung disease. Arthritis Rheum 2011; 63: 1416-25.
  • Spronk HM, et al. Pleiotropic effects of factor Xa and thrombin: what to expect from novel anticoagulants. Cardiovasc Res 2014; 101: 344-51.
  • Antoniak S, et al. Protease activated receptor-2 contributes to heart failure. PLoS One 2013; 8: e81733.


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