抗血栓トライアルデータベース
抗血栓トライアルデータベース
home
主要学会情報
テキストサイズ 
第79回日本循環器学会学術集会(JCS 2015)2015年4月24〜26日,大阪
NOAC投与下の頭蓋内出血の特徴
2015.5.12
印刷用PDF
矢坂正弘氏
矢坂正弘氏

ワルファリンに比べ非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)投与下での頭蓋内出血の発現は少なく,発現しても比較的重症化しにくい-4月25日,第79回日本循環器学会学術集会(JCS 2015)にて,矢坂正弘氏(国立病院機構九州医療センター脳血管・神経内科科長)が発表した。

●心房細動治療におけるNOACの特徴

非弁膜症性心房細動(NVAF)患者に対する抗凝固療法には,長年にわたりワルファリンが使われてきた。しかしワルファリンには,コントロールの難しさ,他の薬剤や食品との相互作用に加え,頭蓋内出血の多さが問題とされてきた。これらを解決すべく,近年NOACが開発された。

●NOAC投与下の頭蓋内出血の少なさとその理由

大規模臨床試験(RE-LY,ROCKET AF,ARISTOTLE,ENGAGE-AF)1~5)において,NOACはワルファリンと同等,もしくはそれ以上の有効性・安全性を示し,頭蓋内出血についてはすべての薬剤で顕著な発現抑制を示した(HR 0.30~0.67)。 その主因としては,以下の4点があげられる。

  • 凝固カスケードにおける凝固抑制ポイントが少ない(ワルファリンの4つ[第II因子,第VII因子,第IX因子,第X因子]に対し,NOACは直接トロンビン阻害薬[ダビガトラン]では第IIa因子,第Xa因子阻害薬[リバーロキサバン,アピキサバン,エドキサバン]では第Xa因子を特異的に抑制)
  • 血中濃度の安全域が広い(「出血を起こす用量と抗血栓作用を示す用量の差」がワルファリンよりも大きい)
  • 最高血中濃度(ピーク)と最低血中濃度(トラフ)の存在(トラフ時は出血リスクが比較的少ない。NOACではピークとトラフの変動があるが,ワルファリンでは一定である)
  • 第VII因子への影響がない(ワルファリンは脳内に多く存在する組織因子と第VII因子の結合による凝固カスケードの発動を抑制する)

●NOAC投与下の頭蓋内出血の特徴

ワルファリンでは,いったん脳出血が起こると,たとえ血圧やプロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)のコントロールが良好であっても大出血になりやすいことが知られている。一方,ダビガトラン投与下で頭蓋内出血を発現した日本人NVAF患者8例での症例研究6)では,血腫の拡大は全例ともみられなかった。リバーロキサバン(5例)およびワルファリン(56例)投与下での頭蓋内出血発現例を比較したレトロスペクティブ研究7)においても,リバーロキサバン投与下での血腫量はワルファリン投与下に比べ顕著に少なく(4mL vs. 11mL,p=0.03),血腫の拡大も認めなかったと報告された。

以上をまとめると,ワルファリンでは頭蓋内出血の発現リスクが高い上に,いったん起こした場合には血腫サイズが大きく,血腫拡大が起こりやすいのに対し,NOACでは頭蓋内出血発現率は比較的低く,起こした場合の血腫サイズは小さく,血腫拡大は起こりにくい。これは,第VII因子への影響の有無の違いによるものが一因として考えられる。

●NOACの中和薬

抗凝固療法中に頭蓋内出血をはじめとする出血性合併症が起こった場合,薬剤の抗凝固作用を早急に是正させる必要性が生じる。しかし現在のところ,NOACではワルファリンでのビタミンKのような中和薬は存在しない。

各NOACの中和方法は確立されていないが,直接トロンビン阻害薬では活性炭の経口投与や血液灌流,透析,4因子含有プロトロンビン複合体(PCC)製剤,リコンビナントまたは活性化第VIIa因子などが,第Xa因子阻害薬では活性炭の経口投与,PCC製剤,リコンビナントまたは活性化第VIIa因子などが候補として考えられている。

また,NOACの中和薬(idarucizumab[ダビガトラン],andexanet alfa[リバーロキサバン,アピキサバン],PER977[エドキサバン])の第III相試験も現在進行中である。

文献

  • Connolly SJ, et al. RE-LY Steering Committee and Investigators. Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2009; 361: 1139-51.
  • Connolly SJ, et al. Randomized Evaluation of Long-Term Anticoagulation Therapy Investigators. Newly identified events in the RE-LY trial. N Engl J Med 2010; 363: 1875-6.
  • Patel MR, et al. the ROCKET AF Investigators. Rivaroxaban versus warfarin in nonvalvular atrial fibrillation. N Engl J Med 2011; 365: 883-91.
  • Granger CB, et al. ARISTOTLE Committees and Investigators. Apixaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2011; 365: 981-92.
  • Giugliano RP, et al. the ENGAGE AF-TIMI 48 Investigators. Edoxaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2013; 369: 2093-104.
  • Komori M, et al. Intracranial hemorrhage during dabigatran treatment. Circ J. 2014; 78: 1335-41.
  • Hagii J, et al. Characteristics of intracerebral hemorrhage during rivaroxaban treatment: comparison with those during warfarin. Stroke. 2014; 45: 2805-7.


▲TOP
抗血栓療法トライアルデータベース