抗血栓療法トライアルデータベース|ESC 2015レポート
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欧州心臓病学会(ESC 2015)2015年8月29~9月2日,英国・ロンドン
リバーロキサバン治療中の低リスクVTE患者における重大な出血事象リスク
2015.10.2
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Jeffrey Kline氏
Jeffrey Kline氏

出血リスクスコアで出血低リスクと判定された静脈血栓塞栓症(VTE)患者では,リバーロキサバン治療中に重大な出血事象が生じる可能性は1%未満と示唆-8月31日,欧州心臓病学会(ESC 2015)にて,Jeffrey Kline氏(Indiana University School of Medicine,米国)が発表した。

●背景・目的

135例を対象とした担当医への調査によると,新規経口抗凝固薬(NOAC)で治療中のHestia基準1)*で低リスクとされた肺塞栓症(PE)患者の退院後の治療に対し,不安を抱くということが報告されている2)。不安要因としてもっとも多くあげられたのは,「患者の治療経過がわからなくなること」であるが,そのほかにも「治療費用」や「法的な責任」があげられていた。ここでいう「法的な責任」とは,おもに「NOACの服用が適切に行われないリスク」と「NOACにより生じる重大な出血事象リスク」の問題である。事実,外来治療中のPE患者では,統計学的に有意ではないものの,重大な出血事象リスクが高くなることがコクランシステマティックレビューより報告されている3)

一方で,ビタミンK拮抗薬服用中の静脈血栓塞栓症(VTE)患者については,出血リスクスコアに関する検討が過去に行われており(1998年Beythら 4),1999年Kuijerら5),1989年Landefeldら6),2008年Ruíz-Giménezら7)),それぞれスコアリングシステムに違いはあるものの,いずれの研究においても,「出血低リスク」と判定された集団では,6ヵ月を超える期間における重大な出血事象発現率は%未満であった。

本試験では,上述の4研究4~7)で用いられた出血リスクスコアをリバーロキサバン服用患者に適用し,「出血低リスクと判定された患者では,リバーロキサバンによる重大な出血事象リスクは1%未満である」との仮説を立て,これを検証した。なお,本試験はEINSTEIN-DVT試験8)およびEINSTEIN-PE試験9)の二次分析として行った。

●対象

DVTまたはPE患者を対象にしたEINSTEIN-DVT/PE試験において,リバーロキサバン群(最初の3週間はリバーロキサバン15mg,1日2回投与し,その後3~12ヵ月間20mg,1日1回投与)に割り付けられた患者(安全性解析対象者4,130例)を本解析の対象とした。

●方法

主要評価項目として,30日以内および全治療期間に発現した重大な出血事象(ISTH出血基準),重大ではないが臨床的に問題となる出血事象(NMCR出血事象)の発現を評価した。各リスクスコアの採点に必要な患者データは,症例報告書に記載されたSMQ(Standardised MedDRA Queries)コードから抽出し,欠損データは「正常」とみなした。

●結果

1. Beythらのリスクスコアの場合

Beythらのリスクスコアに含まれる項目は,65歳以上,脳卒中既往,消化管出血既往,重篤な併存疾患(血清クレアチニン>1.5mg/dL,最近の心筋梗塞発症,重篤な貧血[ヘモグロビン<10g/dL],糖尿病)であり,各項目につき1点を計上する。

リバーロキサバン群のうち,同基準で低リスク(0点)と判定されたのは,2,249例(54.5%)であった。低リスク患者において,重大な出血事象は30日以内では5件(0.2%),全試験期間では9件(0.4%),NMCR出血事象は30日以内では79件(3.5%),全試験期間では159件(7.1%)に発現した。

2. Kuijerらのリスクスコアの場合

Kuijerらのリスクスコアはもっともシンプルで,含まれる項目は60歳以上(1.6点),女性(1.3点),悪性腫瘍(2.2点)の3つである。

リバーロキサバン群のうち,同基準で低リスク(0点)に判定されたのは1,186例(28.7%)であった。低リスク患者において,重大な出血事象は30日以内では3件(0.3%),全試験期間では4件(0.3%),NMCR出血事象は30日以内では31件(2.6%),全試験期間では65件(5.5%)に発現した。

3. Landefeldらのリスクスコアの場合

Landefeldらのリスクスコアに含まれる項目は,65歳以上,脳卒中既往(現在または既往のどちらかは1点,両方は2点),消化管出血既往,重篤な併存疾患(血清クレアチニン>1.5mg/dL,最近の心筋梗塞発症,重篤な貧血[ヘモグロビン<10g/dL]),心房細動である。脳卒中既往以外の項目は1点を計上する。

リバーロキサバン群のうち,同基準で低リスク(0点)に判定されたのは2,407例(58.3%)であった。低リスク患者において,重大な出血事象は30日以内では7件(0.3%),全試験期間では11件(0.5%),NMCR出血事象は30日以内では90件(3.7%),全試験期間では175件(7.3%)であった。

4. Ruíz-Giménezらのリスクスコアの場合

Ruíz-Giménezらのリスクスコアに含まれる項目は,75歳超,活動性の癌,臨床的に明らかなPE(以上1点),最近の重大な出血事象(2点),血清クレアチニン>1.2mg/dL,貧血(女性:ヘモグロビン<12g/dL,男性:<13g/dL)(以上1.5点)である。 リバーロキサバン群のうち,同基準で低リスク(0~1点)に判定されたのは2,622例(63.6%)であった。低リスク患者において,重大な出血事象は30日以内では5件(0.2%),全試験期間では12件(0.5%),NMCR出血事象は30日以内では88件(3.4%),全試験期間では180件(6.9%)であった。

●結論

Kuijerらのものを除く3つの出血リスクスコアでは,低リスクの基準に「65歳未満」,「出血既往なし」,「併存疾患なし」が共通して含まれていた。どの出血リスクスコアであっても,「低リスク」と判定されたリバーロキサバン服用患者では,30日以内の重大な出血事象の発現率は0.5%未満であった。 したがって,65歳未満で出血歴,併存疾患のいずれもないVTE患者においては,リバーロキサバン治療中に重大な出血事象が生じる可能性は1%未満であることが示唆された。

*:Hestia基準:患者が外来で治療可能かどうかを判断する基準で,血行動態不安定,血栓溶解療法/塞栓除去術の必要性,活動性出血/出血高リスクなど11項目のうち,一つでもあてはまれば外来での管理は不可能とする。

文献

  • Zondag W, et al. Hestia criteria can safely select patients with pulmonary embolism for outpatient treatment irrespective of right ventricular function. J Thromb Haemost 2013; 11: 686-92.
  • Kahler ZP, et al. Physician attitudes toward immediate discharge of low-risk pulmonary embolism patients from the emergency department. Acad Emerg Med 2014; 21:S31.
  • Yoo HH, et al. Outpatient versus inpatient treatment for acute pulmonary embolism. Cochrane Database Syst Rev 2014; 11: CD010019.
  • Beyth RJ, et al. Prospective evaluation of an index for predicting the risk of major bleeding in outpatients treated with warfarin. Am J Med 1998; 105: 91-9.
  • Kuijer PM, et al. Prediction of the risk of bleeding during anticoagulant treatment for venous thromboembolism. Arch Intern Med 1999; 159: 457-60.
  • Landefeld CS and Goldman L. Major bleeding in outpatients treated with warfarin: incidence and prediction by factors known at the start of outpatient therapy. Am J Med 1989; 87: 144-52.
  • Ruíz-Giménez N, et al. Predictive variables for major bleeding events in patients presenting with documented acute venous thromboembolism. Findings from the RIETE Registry. Thromb Haemost 2008; 100: 26-31.
  • EINSTEIN Investigators. Oral rivaroxaban for symptomatic venous thromboembolism. N Engl J Med 2010; 363: 2499-510.
  • EINSTEIN-PE Investigators. Oral rivaroxaban for the treatment of symptomatic pulmonary embolism. N Engl J Med 2012; 366: 1287-97.

Kline J, et al. Comparison of four bleeding risk scores to identify rivaroxaban-treated venous thromboembolism patients at low risk for major bleeding. Eur Heart J 2015. 3917.


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