抗血栓療法トライアルデータベース|ESC 2015レポート
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欧州心臓病学会(ESC 2015)2015年8月29~9月2日,英国・ロンドン
日本人心房細動患者における大出血リスク因子
-伏見心房細動患者登録研究
2015.9.24
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石井充氏
石井充氏

日本人の心房細動患者では,HAS-BLEDスコアでの「高齢」,「出血既往」,「抗血小板療法」の3つの因子に加え,「男性」も大出血の独立した因子-8月31日,欧州心臓病学会(ESC 2015)にて,石井充氏(京都医療センター循環器内科)が発表した。

●背景・目的

心房細動は加齢により発症率が上昇する疾患であり,社会の高齢化にともない,その患者数は年々増加している。心房細動患者では脳卒中リスクが上昇することから,発症抑制のため抗凝固療法が行われるが,その一方で,出血リスクが高まることが懸念される。本解析は,国内の前向き観察研究である伏見心房細動患者登録研究(Fushimi AF Registry)より,大出血のリスク因子を検討した。

●対象・方法

伏見心房細動患者登録研究は,京都市伏見区の心房細動患者全例の登録を目指す住民ベースの前向き研究で,リアルワールドでの心房細動患者の臨床背景の評価,ならびに臨床転帰の長期追跡を目的としている。伏見区は28万3,000人の人口を抱える京都市南部の人口密集地区であり,年齢別人口構成が日本全体と近似していることから,日本の典型的な都市部コミュニティを表しているとされる。

本解析は,2011年3月~2014年11月,79施設より登録された4,173例のうち,追跡データの得られた3,390例を対象とした。追跡期間中(中央値777日)の大出血発現の有無により,大出血群108例(3.2%)と非大出血群3,282例(96.8%)に分けて両群の臨床背景を比較し,ロジスティック回帰分析により大出血の予測因子を検討した。

●結果

1. 患者背景

全対象患者の平均年齢は73.7歳,平均CHADS2スコアは2.03点であった。 大出血群は非大出血群にくらべ高齢で(それぞれ76.2歳,73.6歳,p=0.014),男性が多かった(71.3%,59.0%,p=0.009)。心房細動のタイプは発作性がそれぞれ43.5%,48.1%,持続性が6.5%,8.1%,永続性が50.0%,43.8%であり,同程度であった。平均血圧(収縮期血圧:それぞれ125.2mmHg,124.2mmHg,拡張期血圧:68.3mmHg,70.6mmHg),心拍数77.9拍/分,77.8拍/分についても,有意差を認めなかった。

併存疾患については,大出血群では非大出血群にくらべ,心不全(それぞれ38.0%,26.5%,p=0.01),冠動脈疾患(27.8%,14.4%,p=0.0004),慢性腎臓病(48.2%,34.6%,p=0.0043),血管疾患(19.4%,9.2%,p=0.0015),大出血の既往(8.33%,2.44%,p=0.0023),抗血小板薬の使用(42.6%,28.7%,p=0.0026)が有意に多かった。また,平均CHADS2スコア(それぞれ2.28,2.02,p=0.046),ならびに平均CHA2DS2-VAScスコア(3.69,3.35,p=0.039)も大出血群のほうが有意に高かった。一方,体重,高血圧,糖尿病,脂質異常症,脳卒中既往,飲酒習慣などには差がなく,抗凝固薬処方(それぞれ58.3%,52.8%,p=0.26)についても同程度であった。

すなわち,大出血群では非大出血群にくらべ,男性が多く,高齢で,併存疾患数,大出血既往,抗血小板薬使用が多いという特徴がみられた。

2. 大出血のリスク因子

多変量解析により大出血発現の予測因子を検討したところ,男性(オッズ比[OR]1.88,95%CI 1.23-2.93,p=0.003),65歳以上(OR 2.17,1.13-4.71,p=0.018),大出血の既往(OR 4.22,1.88-8.52,p=0.001),抗血小板薬の使用(OR 1.76,1.17-2.63,p=0.007)が独立リスク因子であった。高血圧,腎疾患,抗凝固薬の処方については有意ではなかった。

各因子別に大出血発現率を比較すると,女性よりも男性(p=0.018),65歳未満例よりも65歳以上例(p=0.0007),大出血の非既往例よりも既往例(p<0.0001),抗血小板薬の非使用例よりも使用例(p=0.003)のほうが高値であることが示された。

●結論

日本の前向き登録研究によるリアルワールドのデータより,日本人心房細動患者では,HAS-BLEDスコアの「高齢」,「出血既往」,「抗血小板療法」に加え,「男性」も大出血発現の独立した予測因子であることが示唆された。

Ishii M, et al. Exploration of risk factors for major bleeding in Japanese patients with atrial fibrillation: The Fushimi AF Registry. Eur Heart J 2015; 36(abstract supplement): 809.


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