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米国血液学会学術集会(ASH 2015)2015年12月5~8日,米国・オーランド
がん関連血栓症に対する抗凝固療法における診療のパターンおよび治療継続率
2015.12.14
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Alok Khorana氏
Alok Khorana氏

がん関連VTE患者に対する抗凝固療法として,ガイドラインではLMWHが推奨されているが,実臨床下ではワルファリンによる開始がもっとも多く,次いでリバーロキサバン,LMWHであった-12月7日,米国血液学会学術集会(ASH 2015)にて,Alok A. Khorana氏(Taussig Cancer Institute,Cleveland Clinic,米国)が発表した。

●背景

活動性がん患者における静脈血栓塞栓症(VTE)有病率は高く,その治療には,低分子量ヘパリン(LMWH),ワルファリンに加え,近年では非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)が用いられるようになってきた。一方,がん関連VTEの再発予防において,臨床試験からLMWHはワルファリンより優れることが示されており,ガイドラインではLMWHによる6ヵ月以上の抗凝固療法が推奨されている。しかしながら実臨床においては,医療費や患者の好みなども影響し,ガイドラインの推奨どおりの治療はかならずしも実施されておらず,がん関連VTE患者における治療の詳細は明確になっていない。

本研究では,急性VTEの治療をうけるがん患者において,治療のパターンならびに抗凝固療法の継続率を評価した。

●方法

解析にはHumana社*の薬剤処方データベースを用いた。最近の治療パターンを反映させるため,登録期間は2013年1月1日~2014年12月31日の2年間とした。 対象患者は,医療保険に加入してから6ヵ月以上経過後にがんの初回診断をうけ,30日以内に初発VTE(深部静脈血栓症[DVT]または肺塞栓症[PE])と確定診断され,30日以内に抗凝固薬を処方された患者で,試験期間または2014年12月30日まで保険に加入している症例とした。VTEの既往例,がんの診断以前に抗凝固薬を服用,当該VTE発症前に抗凝固薬を処方されていた患者は除外した。

対象患者は最初に処方された抗凝固薬にもとづき,LMWH群,LMWH/ワルファリン群(LMWHからワルファリンへ移行),ワルファリン群,リバーロキサバン群の4群に分類した。フォンダパリヌクス,ヘパリン,アピキサバン,ダビガトランなどその他の抗凝固薬投与患者は数が少なく,解析が不可能であった。LMWH/ワルファリン群では,LMWHからワルファリンへのブリッジングが行われたと考えられるため,薬剤の継続はワルファリンをもとに評価した。

評価項目は,抗凝固薬の継続率(直近の処方薬剤がすべて服用されたと考えられる日から60日以上の非処方期間がない)である。当該の抗凝固薬中止までの期間はKaplan-Meier法にて算出した。中止までの期間はCox比例ハザードモデルを用いて比較した。

*:Humana社は米国の医療保険会社で,本データベースには1,000万人以上が登録されている。

●結果

1. 患者背景

対象患者2,941例の内訳は,LMWH群735例(25.0%),LMWH/ワルファリン群550例(18.7%),ワルファリン群853例(29.0%),リバーロキサバン群709例(24.1%)であった。平均年齢はそれぞれ71.2歳,72.2歳,74.0歳,73.3歳,女性は52.9%,48.4%,50.8%,49.8%。当該VTEの種類は,PE単独はそれぞれ27.2%,25.6%,26.5%,28.2%,DVT単独は53.7%,58.7%,53.8%,55.4%,PE+DVT合併は19.0%,15.6%,19.7%,16.4%。

がんの種類は,ほとんどが固形腫瘍であった(それぞれ91.8%,88.5%,88.7%,89.3%)。VTE超高リスクのがん(胃,膵臓,脳)は16.2%,8.5%,9.4%,6.5%,VTE高リスクのがん(肺,リンパ腫,婦人科,膀胱,精巣,腎臓)は40.2%,32.4%,32.7%,35.3%であった。

2. 抗凝固薬開始時の処方と入院期間

最初の抗凝固薬開始は,大部分が入院中(それぞれ60~76%)または救急部門(20~27%)での処方であり,外来での処方は少なかった(4~14%)。

入院期間は4群間で有意差がみられた。もっとも長かったのはワルファリン群の8.6日(他の3群に対しp<0.05)で,ついでLMWH群6.4日(LMWH/ワルファリン群,ワルファリン群に対しp<0.05),リバーロキサバン群5.9日(ワルファリン群に対しp<0.05),LMWH/ワルファリン群5.5日(LMWH群,ワルファリン群に対しp<0.05)であった。

3. 他の抗凝固薬への変更

最初に開始した抗凝固薬から他の抗凝固薬への変更は,LMWH群が22.9%ともっとも多く,ついでLMWH/ワルファリン群8.9%,ワルファリン群7.3%,リバーロキサバン群4.7%となっていた。LMWH群では12.0%がワルファリンへ,9.9%がリバーロキサバンへ1.0%が他の抗凝固薬(アピキサバン,ダビガトラン,フォンダパリヌクスなど)に変更していた。LMWH/ワルファリン群では3.5%がLMWHへ,4.4%がリバーロキサバンへ,1.1%がその他へ,ワルファリン群では2.2%がLMWHへ,4.2%がリバーロキサバンへ,0.8%がその他へ,リバーロキサバン群では1.0%がLMWHへ,3.1%がワルファリンへ,0.6%がその他へ変更していた。

4. 治療継続率

治療期間中央値はLMWH群3.3ヵ月,LMWH/ワルファリン群7.8ヵ月,ワルファリン群8.1ヵ月,リバーロキサバン群7.9ヵ月であった。最初の抗凝固薬を継続していた患者の割合は,6ヵ月後ではそれぞれ37%,60%,62%,61%,12ヵ月後では21%,37%,34%,36%であった。

LMWH群に比べると,他のすべての薬剤群で治療中止リスクが低かった(LMWH/ワルファリン群:HR 0.39,95%CI 0.33-0.46,ワルファリン群:HR 0.40,95%CI 0.34-0.46,リバーロキサバン群:HR 0.43,95%CI 0.36-0.50,すべてp<0.0001)。

●結論

がん関連VTE患者における抗凝固療法は,ガイドラインではLMWHが推奨されているが,実臨床下ではワルファリンによる開始がもっとも多く,次いでリバーロキサバン,LMWHであった。LMWHはワルファリンならびにリバーロキサバンに比べ,薬剤継続率は低く,治療期間は短かった。LMWH群はワルファリン群およびリバーロキサバン群に比べ,他の薬剤に変更した患者の割合が高かった。現在ガイドラインでは,がん関連VTE患者に対する抗凝固療法としてLMWHが推奨されているが,これらの結果から,至適抗凝固療法については,更なる検討が必要であると考えられた。

Khorana A, et al. Current Practice Patterns and Patient Persistence on Anticoagulant Treatments for Cancer-Associated Thrombosis.


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