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米国心臓協会学術集会(AHA 2015)2015年11月7~11日,米国・オーランド
第Xa因子阻害薬の中和剤アンデキサネットのリバーロキサバンに対する中和作用を検討した第III相試験ANNEXA-R Part 2が発表
2015.11.26
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Mark Crowther氏
Mark Crowther氏

第Xa因子阻害薬の特異的中和剤アンデキサネットは良好な忍容性を示し,抗第Xa因子活性を迅速に中和-11月11日,米国心臓協会学術集会(AHA 2015)にて,Mark Crowther氏(McMaster University,カナダ)が発表した。

●背景・目的

Andexanet alfa(PRT064445,以下アンデキサネットと記す)は,第Xa因子としての活性はもたないが,第Xa因子阻害薬との親和性が第Xa因子より高いことから,その特異的中和剤として開発された1)。アンデキサネットがデコイとなることで,第Xa因子阻害薬と第Xa因子との結合を競合的に阻害し,結果として第Xa因子阻害薬による抗凝固作用が抑制される。直接第Xa因子阻害薬(リバーロキサバン,アピキサバン,エドキサバンなど)のみならず,間接第Xa因子阻害薬(フォンダパリヌクス,エノキサパリンなど)双方の抗凝固作用を抑制する。

ANNEXA-Rは,アンデキサネットのリバーロキサバンに対する中和作用を検証する第III相,無作為化,二重盲検試験である2)。本試験は,高齢者健康成人39例をアンデキサネット(26例,男性42.3%)またはプラセボ(13例,同46.2%)に2:1で割り付け,静脈内ボーラス投与後(Part 1)および2時間の追加点滴後(Part 2)に連続的に検証する2部構成となっている。今回は,Part 2の結果が発表された。

●方法

50~68歳の被験者に対し,リバーロキサバン20mg/日を4日間投与した。第4日,最終投与の4時間後に,アンデキサネットまたはプラセボ800mg(30mg/分)を静脈内にボーラス投与し,その後8mg/分で120分(総量960mg)の点滴を行った。

主要評価項目は,ベースライン時からアンデキサネット投与後(点滴終了の10分前から5分後の間における最小値)における抗第Xa因子活性変化率,副次評価項目は,投与後にベースライン時に比べ抗第Xa因子活性が80%以上低下した患者の割合である。

●結果

アンデキサネット投与後,抗第Xa因子活性は2~5分で迅速に低下し,主要評価項目(抗第Xa因子活性変化率)は-97%であった。プラセボ群では-45%であり,両群間に有意差を認めた(p<0.001)。アンデキサネットによる抗第Xa因子活性の中和は,2時間の点滴中から点滴終了の1~2時間後まで持続していた。

副次評価項目(抗第Xa因子活性が80%以上低下した患者の割合)は,アンデキサネット群26/26例(100%)であったのに対し,プラセボ群では0/13例(0%)であった(p<0.0001)。

また,ボーラス投与後の非蛋白結合リバーロキサバン血中濃度は,アンデキサネット群で4.2ng/mLと,プラセボ群の23.4ng/mLに比べ有意に低下し(p<0.001),リバーロキサバンの抗凝固作用消失レベル(4.0ng/mL)と同程度となった。トロンビン産生も,アンデキサネット群では26/26例(100%)で回復が認められたのに対し,プラセボ群では0/13例(0%)であった。

なお,全例で点滴に起因する反応や重篤な有害イベントはみられなかった。D-ダイマー(正常上限値の2倍超)ならびにプロトロンビンフラグメント1+2(F1+2)の一過性の上昇がみられたが,いずれも24~72時間以内に正常値まで低下した。第X因子または第Xa因子に対する抗体,アンデキサネットに対する中和抗体も認めなかった。

●まとめ

アンデキサネットにより,抗第Xa因子活性ならびに非蛋白結合リバーロキサバン血中濃度は迅速に低下し,トロンビン産生は回復した。ボーラス投与後,アンデキサネットにより凝固パラメーターのほぼ完全な正常化が得られ,2時間の点滴中も持続した。凝固バイオマーカーの回復は点滴後1~2時間持続し,忍容性も良好であった。

Crowther氏はアンデキサネットに関し,2015年末には米食品医薬品局(FDA)への申請を予定していること,急性大出血患者に対するオープン試験を北米および欧州で進行中であることを明らかにした。

Jerrold H Levy氏
Jerrold H Levy氏

ディスカッサントのJerrold H. Levy氏(Duke University School of Medicine,米国)は,以下のように述べた。

●中和剤の重要性

抗凝固療法において,中和剤は重要である。第一の理由は,中和剤により抗凝固療法の安全性のマージンが広がることである。また中和剤により,出血患者やインターベンションを必要とする患者の管理が容易になること,患者ケア,ブリッジング,管理に関する新しいストラテジーがもたらされることもあげられる。

現在,アンデキサネット以外の中和剤としては,水素結合により非特異的に結合する無機分子PER977,ポリイオンまたはカチオン相互作用として非特異的に結合する生体分子プロタミンおよびrPF4,特異的モノクローナル抗体idarucizumab(ダビガトランの中和剤),MEDI2452(ticagrelorの中和剤),プロトロンビン複合体濃縮製剤(PCC),第VIIa組み替え因子(rVIIa)がある。このうち,idarucizumabは2015年10月にFDAに承認された。

●ANNEXA-Rからの知見

本試験において,高齢被験者に対するボーラスおよび2時間の静注投与後,アンデキサネットは迅速に抗第Xa因子活性を低下させ,トロンビン産生を回復し,凝固パラメーターを正常化させた。薬物動態/薬力学を考慮すると,凝固能正常化を維持するためには点滴が重要であった。本試験より,すべての第Xa因子阻害薬の特異的中和剤としてのアンデキサネットの重要性が支持された。

しかしながら,緊急手術にあたって止血が必要な場合,本試験で行われた2時間の点滴で十分な中和が得られるのかについては,まだわからない。他の薬剤の必要性や,凝血障害,血小板減少症,あるいは凝固能亢進状態などの患者に対する治療法についても,同様に明らかになっておらず,今後の課題である。

非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)は安全な薬剤であるが,緊急事態発生の際には中和剤が必要となる。アンデキサネットはNOACのみならず,医療施設で広く用いられている低分子量ヘパリンの中和剤としても用いることができる。現在,出血患者を対象とした第IIIb/IV相試験(ANNEXA-4)が進行中であり,アンデキサネットの役割がさらに明らかになることが期待される。

文献

  • Lu G, et al. A specific antidote for reversal of anticoagulation by direct and indirect inhibitors of coagulation factor Xa. Nat Med 2013; 19: 446-51.
  • Siegal DM, et al. Andexanet alfa for the reversal of factor Xa inhibitor activity. N Engl J Med 2015 Nov 11.

Crowther M, et al. ANNEXA™-R Part 2: A Phase 3 Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial Demonstrating Sustained Reversal of Rivaroxaban-Induced Anticoagulation in Older Subjects by Andexanet Alfa (PRT064445), a Universal Antidote for Factor XA (FXA) Inhibitors.

Levy JH. Discussant of the ANNEXA™-R Part 2: A Phase 3 Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial Demonstrating Sustained Reversal of Rivaroxaban-Induced Anticoagulation in Older Subjects by Andexanet Alfa (PRT064445), a Universal Antidote for Factor XA (FXA) Inhibitors.

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