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米国心臓協会学術集会(AHA 2015)2015年11月7~11日,米国・オーランド
腎機能低下をともなう心房細動患者におけるリバーロキサバンとワルファリンによる転帰の比較-ROCKET AFより
2015.12.8
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Christopher B Fordyce氏
Christopher B Fordyce氏

腎機能低下をともなう心房細動患者では心血管イベントが増加するが,リバーロキサバンによる抗凝固療法は,出血リスクを増大させずに脳卒中と全身性塞栓症を抑制する-11月9日,米国心臓協会学術集会(AHA 2015)にて,Christopher B. Fordyce氏(Duke Clinical Research Institute,米国)が発表した。

●背景・目的

腎機能障害をともなう心房細動患者に対する抗凝固療法は,出血性合併症が治療によるベネフィットを上回る懸念があることから,実施が躊躇されることも多い。しかし中等度の腎機能低下例では,ワルファリンまたは非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)により,出血リスクを増大させずに確実な抗凝固効果が得られることが報告されている1~3)。一方,RE-LY試験で長期の腎機能への影響を検討した結果,ダビガトラン服用例に比べ,ワルファリン服用例で腎機能低下度が大きかったとされるが4) ,NOAC服用例とワルファリン服用例の比較において,腎機能低下例と腎機能安定例で転帰が異なるのかについては明らかになっていない。

そこで本解析では,ROCKET AFに参加した非弁膜症性心房細動(NVAF)患者のうち,腎機能低下例および腎機能安定例での臨床転帰の違いについて検討し,さらに,これらの患者におけるリバーロキサバンとワルファリンの治療効果の差について,評価を行った。

●方法

ROCKET AFは,CHADS2スコア2点以上または脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)/全身性塞栓症の既往があるNVAF患者14,264例を対象とした,無作為割付,二重盲検試験である。対象患者をリバーロキサバン群(20mg 1日1回,クレアチニンクリアランス[CrCl]30~49mL/分の症例は15mg 1日1回),ワルファリン群(目標INR 2.5[範囲2.0~3.0])に割り付け,追跡を行った。

全例においてスクリーニング時,24週後,52週後,試験終了時の最低4回クレアチニンを測定し, Cockroft-Gault式によるCrClがスクリーニング時から20%以上低下している症例を腎機能低下例,その他の症例を腎機能安定例と定義した。

有効性主要評価項目は脳卒中または全身性塞栓症,副次的評価項目として全死亡,脳卒中,全身性塞栓症または血管死,安全性主要評価項目は重大な出血事象および重大ではないが臨床的に問題となる出血事象,副次的評価項目として頭蓋内出血や出血性脳卒中とした。

●患者背景

解析対象は12,612例で,そのうち腎機能低下例は3,320例,腎機能安定例は9,292例であった。平均年齢(腎機能低下例73歳,腎機能安定例72歳),女性(それぞれ42%,38%),CrCl(それぞれ70 mL/分,67mL/分)についてはほぼ同様であった。脳卒中,TIA,全身性塞栓症の既往はそれぞれ52%,56%であった。

●結果

1. 有効性主要評価項目

有効性主要評価項目は,腎機能低下例2.37件/100患者・年で,腎機能安定例1.82件/100患者・年と同程度であった(ハザード比[HR]1.25,95%CI 0.89-1.75,p=0.19)。血管死(2.21件/100患者・年,1.41件/100患者・年,HR 1.47,95%CI 1.05-2.06,p=0.026),脳卒中+塞栓症+血管死+心筋梗塞(5.66件/100患者・年,3.87件/100患者・年,HR 1.40,95%CI 1.13-1.73,p=0.002),全死亡(3.10件/100患者・年,1.93件/100患者・年,HR 1.49,1.12-1.98,p=0.007)については,腎機能低下例のほうが多かった。

2. 安全性主要評価項目

安全性主要評価項目は腎機能低下例11.97件/100患者・年で,腎機能安定例11.44件/100患者・年と同程度であった(HR1.05,95%CI 0.90-1.21,p=0.55)。重大な出血事象(3.69件/100患者・年,3.16件/100患者・年,HR 1.08,95%CI 0.83-1.40,p=0.59),頭蓋内出血(0.68件/100患者・年,0.63件/100患者・年,HR 1.00,95%CI 0.54-1.83,p=0.99)も同様に,有意差を認めなかった。

3. 治療薬の比較

治療薬で比較すると,リバーロキサバン群ではワルファリン群に比べ,腎機能低下例での脳卒中/全身性塞栓症が抑制され(HR 0.50,95%CI 0.27-0.93,腎機能安定例:HR 0.97,95%CI 0.76-1.25),治療薬と腎機能の間に交互作用を認めた(p=0.050)。

安全性主要評価項目については,抗凝固薬間の有意差はなかった(腎機能悪化例:HR 1.06,95%CI 0.80-1.39,腎機能安定例:HR 0.98,95%CI 0.89-1.08,交互作用のp=0.61)。腎機能低下例では,リバーロキサバン群ではワルファリン群に比べ,ヘモグロビンの≧2g/dLの低下が多くみられたが(HR1.96,95%CI 0.79-4.87),この差異は腎機能安定例ではみられなかった(交互作用のp=0.047)。一方,頭蓋内出血は腎機能低下例,安定例いずれも一貫してリバーロキサバン群で低値であった(それぞれHR:0.62,95%CI0.20-1.90,HR 0.81,95%CI0.53-1.22)。

●結論

心房細動患者における腎機能低下は血管死,脳卒中+全身性塞栓症+血管死+心筋梗塞の複合,全死亡の発生増加と関連していた。腎機能低下例では,リバーロキサバンはワルファリンに比べ脳卒中または全身性塞栓症の発症を抑制し,出血性合併症は増加させず,むしろ頭蓋内出血の発現は低値であった。 本結果より,心房細動患者における腎機能低下は心血管イベントの増大と関連していること,腎機能低下例に対する抗凝固療法は出血リスクを過度に増大させることなく実施可能であり,その際にはリバーロキサバンのほうがワルファリンより望ましいことが示唆された。

文献

  • Hijazi Z, et al. Efficacy and safety of dabigatran compared with warfarin in relation to baseline renal function in patients with atrial fibrillation: a RE-LY (Randomized Evaluation of Long-term Anticoagulation Therapy) trial analysis. Circulation. 2014;129:961-70.
  • Fox KA, et al. Prevention of stroke and systemic embolism with rivaroxaban compared with warfarin in patients with non-valvular atrial fibrillation and moderate renal impairment. Eur Heart J. 2011 Oct;32(19):2387-94.
  • Pathak R, et al. Meta-analysis on risk of bleeding with apixaban in patients with renal impairment. Am J Cardiol. 2015;115:323-7.
  • Böhm M, et al. Changes in Renal Function in Patients With Atrial Fibrillation: An Analysis From the RE-LY Trial. J Am Coll Cardiol 2015; 65: 2481-93

Fordyce CB, et al. On-treatment Outcomes in Patients With Worsening Renal Function With Rivaroxaban Compared With Warfarin: Insights From ROCKET AF.

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