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第39回日本脳卒中学会総会(STROKE 2014)2014年3月13〜15日,大阪
PT-INR治療域内でのワルファリン投与中に発症した脳梗塞の特徴
-Fukuoka Stroke Registryの結果より-
2014.4.11
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中村麻子氏
中村麻子氏

 プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)治療域内でのワルファリン投与中に脳梗塞を発症した患者の特徴は,若齢,慢性腎臓病,以前の脳梗塞既往,ならびに脳梗塞の病因が心原性脳塞栓症以外であること-3月14日,第39回日本脳卒中学会総会にて,中村麻子氏(国立病院機構福岡東医療センター脳血管内科)が発表した。

●背景・目的

 ワルファリン投与中の非弁膜症性心房細動(NVAF)患者のなかには,PT-INRが治療域内であっても脳梗塞を発症する場合がある。その詳細な特徴は明らかにされていないが,心房細動による心原性脳塞栓症以外の機序が発症に関与している可能性も示唆されている1~3)。そこで,福岡脳卒中登録研究(Fukuoka Stroke Registry)のデータを用い,ワルファリン投与中でPT-INRが治療域内であったにもかかわらず脳梗塞を発症した患者の特徴を検討した。

●対象・方法

 対象は,1999年6月~2012年3月に登録された発症後24時間以内の脳卒中患者10,394例のうち,ワルファリンによる抗凝固療法中に発症したNVAF合併脳梗塞の患者614例である。発症後24時間以内に測定されたPT-INR値により,患者を治療域(≧2.0)ならびに非治療域(<2.0)の2群に分けて検討を行った。

 脳梗塞の病型については,3つの項目(脳梗塞の原因がNVAFのみ/病巣を灌流する主幹動脈に50%以上の狭窄病変や潰瘍病変がない/皮質枝領域を中心とした梗塞もしくは穿通枝領域であっても病巣が1.5cm超)をすべて満たす場合に心原性脳塞栓症と診断した。いずれかに該当しない,またはNVAF以外の原因を有する場合は,心原性脳塞栓症以外の病因による脳梗塞と診断した。

●治療域群における脳梗塞発症に関連する因子

 治療域群は非治療域群にくらべ,若齢で(それぞれ74.5歳 vs. 76.9歳,p=0.04),慢性腎臓病の割合(62% vs. 48%,p=0.03),脳梗塞既往(56% vs. 43%,p=0.04),心原性脳塞栓症以外の病因の割合(47% vs. 13%,p<0.001)が高かった。

 治療域群における脳梗塞発症と関連していた因子は,年齢(1歳あたりのオッズ比[OR]0.97,95%CI 0.94-1.00,p=0.03),慢性腎臓病(OR 1.94,1.12-3.42,p=0.02),脳梗塞既往(OR 1.81,1.06-3.11,p=0.03),心原性脳塞栓症以外の病因(OR 5.56,3.19-9.69,p<0.001)であった。

●治療域群と非治療域群のリスクスコアの比較

 CHADS2スコア,CHA2DS2-VAScスコア,R2CHADS2スコアのいずれについても,両群に有意差はみられなかった。また,治療域群,非治療域群のそれぞれについて,CHADS2スコア,CHA2DS2-VAScスコア,およびR2CHADS2スコアの分布を検討したが,いずれのスコアについても,患者数との明らかな関連は両群ともに認められなかった。

●まとめ

 先行研究より,ワルファリン投与中でPT-INRが治療域内であったにもかかわらず発症した脳梗塞はラクナ梗塞が多いこと3),また,抗凝固療法を治療域で行うと心原性脳塞栓症の発症は抑制されるが,非心原性脳塞栓症は抑制されない1)と報告されている。本研究でも,NVAF合併脳梗塞患者には,若齢で,慢性腎臓病の合併率,脳梗塞既往の割合が高く,心原性脳塞栓症以外の病因の割合が高いといった特徴がみられた。

 PT-INRが治療域内であった患者と非治療域であった患者とのあいだに,CHADS2スコア,CHA2DS2-VAScスコア,およびR2CHADS2スコアの差はみられなかった。

文献

  • Hart RG, et al. Cardioembolic vs. noncardioembolic strokes in atrial fibrillation: frequency and effect of antithrombotic agents in the stroke prevention in atrial fibrillation studies. Cerebrovasc Dis 2000; 10: 39-43.
  • Miller VT, et al. Ischemic stroke in patients with atrial fibrillation: effect of aspirin according to stroke mechanism. Stroke Prevention in Atrial Fibrillation Investigators. Neurology 1993; 43: 32-6.
  • Schwammenthal Y, et al. Relation of effective anticoagulation in patients with atrial fibrillation to stroke severity and survival (from the National Acute Stroke Israeli Survey [NASIS]). Am J Cardiol 2010; 105: 411-6.

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