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第39回日本脳卒中学会総会(STROKE 2014)2014年3月13〜15日,大阪
心原性脳塞栓症急性期における新規経口抗凝固薬の役割
2014.3.24
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中原一郎氏
中原一郎氏

 心原性脳塞栓症急性期患者におけるリバーロキサバンの投与の有用性は高く,入院期間の短縮や予後改善に寄与している可能性がある-3月13日,第39回日本脳卒中学会総会にて,中原一郎氏(小倉記念病院脳卒中センター脳神経外科)が発表した。

●背景・目的

 非弁膜症性心房細動(NVAF)に起因する心原性脳塞栓症の発症ならびに再発予防を目的とした新規経口抗凝固薬投与について,現在,データが蓄積されつつある。しかし,二次予防に関するエビデンスとしては,大規模臨床試験の登録患者が発症1~2週後以降のものに限られており,急性期における投与指針は確立されていないのが現状である。

 虚血性脳卒中患者における抗凝固療法の再開時期について,欧州不整脈学会(EHRA)では梗塞サイズに応じて決める「1-3-6-12日ルール」(一過性脳虚血発作[TIA]は1日目,小規模梗塞では3日目,中規模梗塞では6日目,大規模梗塞では12日目)を提唱しているが1),これはエビデンスにもとづくものではない。

 そこで,リバーロキサバンを投与した心原性脳塞栓症急性期患者を対象に,投与量や投与開始時期について検討・考察を行った。

●対象

 対象は,2012年8月~2013年8月にNVAFに起因する心原性脳塞栓症と診断され,脳卒中センターカンファレンスによる適応判断のもとに急性期からリバーロキサバンを投与した37例である。平均年齢は76.0歳(60~90歳),男性は24例,入院時のNational Institutes of Health stroke scale(NIHSS)スコアは平均8.43(0~40)で,比較的軽症~中等症の症例が主であった。

 CHADS2スコアは平均3.1点で,J-ROCKET AF(平均3.2点)2)とほぼ同程度の脳梗塞リスクを有する患者であった。その他,クレアチニンクリアランス(ClCr)50 mL/分未満は35%であった。

 発症前の抗凝固療法はワルファリン11例(30%)(来院時の平均プロトロンビン時間国際標準比[PT-INR]1.23),ダビガトラン3例(8%)で,無投与は23例(62%)と多かった。心房細動の病型は持続性28例,発作性9例(発症前に抗凝固療法を受けていたのはそれぞれ39%,33%)であった。

●心原性脳塞栓症急性期におけるリバーロキサバン投与の実際

1. 投与量

 投与量は10mg/日が23例,15mg/日が14例であった。ClCr 50 mL/分未満のみ10mg/日投与対象となるが,10mg/日投与例のうち半数近くが15㎎/日投与とすべき症例であると考えられた。HAS-BLEDスコアにもとづく出血性合併症リスクや,全身状態を考慮して減量投与が判断された可能性もあるが,この10例の腎機能,年齢,体重およびNIHSSスコアは,15mg/日投与を行った症例と大きな差異がなかった。比較的脳梗塞軽症の例で,15mg/日を選択すべきところ10mg/日を選択した可能性も否定できないが,出血リスクを考慮して,急性期では減量投与で開始されたとしても,慢性期では投与量の見直しが必要になるのではないかと考えられた。

2. 投与方法

 ヘパリンによるブリッジング実施は18例(49%),非実施は19例(51%)で,NIHSSスコアの平均はそれぞれ10.2,6.7であった。梗塞範囲が広いなどの重症例や,後頭蓋窩症例などでリバーロキサバンの投与開始は延期される傾向がみられた。

 治療開始時に粉砕投与(経管投与)を行った症例は10例(27%),非経管投与は27例(73%)で,NIHSSスコアの平均はそれぞれ14.8,6.1であった。重症例や意識障害のある症例,意識障害がなくても嚥下障害のある症例で経管投与から開始されている傾向があったが,意識レベルの改善度,嚥下リハビリテーションの効果などをみながら,可能な限り急性期入院中にリバーロキサバン経口投与に移行すべきと考えられた。

3. 投与開始時期

 投与開始日は,入院後平均4.1日(0~18日)であった。重症度ごとにみると,NIHSSスコアが比較的低い軽症~中等症例で早期から投与が開始されており,スコア0~4の症例における投与開始日は平均2.8日,5以上の症例では5.2日であった。

4. 急性期血流再開療法

 NIHSSスコア5以上であった33例のうち,急性期血流再開療法を行ったのは11例で,rt-PA静注単独は8例,血管内治療(EVT)は8例に行った(3例はrt-PA静注を併用したが無効,5例はrt-PA静注が非適応のためEVTのみ)。EVT実施直後から症状が改善したことで,同日からリバーロキサバン15mg/日の内服を開始し,良好な予後が得られた症例もあった。

5. 投与開始後の経過

 在院日数は平均15.4日(0~35日),退院時NIHSSスコアは4.86(0~23),退院時modified Rankin scale(mRS)は2.16(0~5)であった。発症30日後までに出血イベントはみられなかったが,虚血イベントとして,1例で軽症脳梗塞再発,1例で上肢塞栓症がみられ,前者はリバーロキサバン15mg/日を継続したが,後者はヘパリンおよびワルファリンへの変更を行った。

 37例中16例で発症30日後以降のMRI撮像を行った結果,2例で新たな微小出血がそれぞれ1ヵ所認められた。

●結論

 NVAFに起因する心原性脳塞栓症急性期患者に対するリバーロキサバンの投与は安全であった。急性期における新規経口抗凝固薬の投与に関しては,先行研究より以下のようなメリットとデメリットがあげられる。とくにTIAを含む軽症例や,rt-PA静注療法やEVTにより血流再開が得られた症例などで有用である可能性がある。われわれの使用経験からは,リバーロキサバンの早期投与は,入院期間の短縮や予後改善に寄与している可能性が示唆された。現在,RELAXED研究(NVAFの急性期脳梗塞/TIAにおけるリバーロキサバンの投与開始時期に関する多施設共同非介入登録観察研究)が進行中であり,さらなる症例の蓄積による今後の検討がまたれる。

[新規経口抗凝固薬のメリット]

  • ヘパリンによるブリッジングの必要がなく日常生活動作(ADL)を損なわないため,比較的軽症~中等症の症例で回復期リハビリテーション施設への早期転院が可能
  • ワルファリンによる管理不良患者,または投与中に脳梗塞や頭蓋内出血を発症した患者にも有用である可能性

[デメリット]

  • 脳梗塞急性期患者におけるエビデンスが不十分
  • もやもやエコーや左房内血栓症例での抗凝固強化ができない
  • 出血性梗塞による悪化が懸念される症例では早期の中和が確立していない
  • 経口投与不可の患者では投与できない場合もある
  • 療養型施設など医療費が包括となる施設での受け入れが困難となる場合がある

文献

  • Heidbuchel H, et al. EHRA Practical Guide on the use of new oral anticoagulants in patients with non-valvular atrial fibrillation: executive summary. Eur Heart J 2013; 34: 2094–106.
  • Hori M, et al. Rivaroxaban vs. warfarin in Japanese patients with atrial fibrillation-The J-ROCKET AF study-. Circ J 2012; 76: 2104-11.

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