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第39回日本脳卒中学会総会(STROKE 2014)2014年3月13〜15日,大阪
豊田一則氏にSAMURAI-NVAF研究について聞く-
「脳梗塞急性期における適切な治療法が解明できることに期待したい」
2014.3.20
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豊田一則氏
豊田一則氏

●新規経口抗凝固薬の登場以降,心原性脳塞栓症の一次予防および二次予防をとりまく状況は変化してきています。SAMURAI-NVAF研究の主任研究者の立場から,本研究の目的について説明していただけますか。

 本研究は,全国18施設において,非弁膜症性心房細動(NVAF)を有する脳梗塞患者を約1,000例登録し,患者背景の特徴や抗凝固療法の実態を調査することがおもな目的の一つです()。最大の興味は,NVAFを有する脳梗塞患者は二次予防のためにどのような抗凝固薬が選択され,その結果として脳梗塞の再発や薬剤による副作用などの短期・長期的転帰に影響したかを明らかにすることです。

 患者登録は2011年9月~2014年3月までですが,2月24日時点での登録患者数は1,031例となっています。追跡は2年間行いますので,2016年には転帰を含めた最終結果が報告できる予定です。

●患者登録終了前の段階ですが,現時点での傾向など,わかる範囲で教えてください。

 退院時の抗凝固薬選択の特徴をみてみると,重症例にはワルファリンが,軽症例には新規経口抗凝固薬が選択される傾向があります。そのため,単純に比較してみると,退院時にワルファリンが投与された患者では,新規経口抗凝固薬が投与された患者にくらべ,虚血イベント,出血イベントともに多い傾向が出ています。ただし,両者の患者背景がそもそも大きく異なっているため,現時点で薬剤の効果に差異があるというわけではないと考えています。

 また,登録患者の6割は脳梗塞発症前から心房細動があることがわかっていた患者で,残りの4割は登録時の脳梗塞をきっかけとして心房細動があることがわかった患者でした。後者の脳梗塞はより重度であったことが明らかになっています1)。その理由はいくつか考えられます。まず,心房細動が既知であった患者の約半数はワルファリンを服用中に脳梗塞を発症しており,抗凝固療法を受けていたために,脳梗塞が発症しても比較的軽症ですんだ可能性が考えられます。

 そのため,日常診療における問診や定期健診などを通じて,心房細動の存在を早期に発見し,適切な抗凝固療法を行っていくことが,何よりも重要だと考えます。

●SAMURAI-NVAF研究では,新規経口抗凝固薬はワルファリンにくらべて軽症の脳梗塞患者に使われる傾向ということでしたが,各薬剤の使われ方などの特徴などはありますか。

 海外での臨床試験結果をもって薬剤の優劣をつける考え方もあるかもしれませんが,現実には,市販後調査や観察研究などを含めた,日本人に対する実地臨床下での結果を踏まえて評価する必要があると思います。とくにリバーロキサバンについては,他の新規経口抗凝固薬とは異なり,海外用量から減量し,日本独自の用量設定を行っています。このような違いが実地臨床での有効性・安全性にどのように影響するのかは,本研究のような観察研究からも徐々に明らかになっていくでしょう。

 現時点で新規経口抗凝固薬間での選択にあたっては,脳梗塞患者では嚥下障害のある場合が非常に多いため,まずは,剤型的に投与可能かどうかが薬剤選択に影響を及ぼしていると思います。

●脳梗塞急性期における抗凝固療法の意義については,世界的にもまだ議論のあるところですが,SAMURAI-NVAF研究による脳梗塞急性期患者でのエビデンスは,今後どのような影響を及ぼすでしょうか。

 急性期からヘパリンを含む抗凝固療法を行った患者では,出血イベントの増加もなく,比較的安全に導入されている現状についても報告しています2)。本研究はランダム化比較試験(RCT)ではなく,観察研究ですので限界はありますが,少なくとも担当医が抗凝固療法を早期から開始できると判断した患者では,安全に治療できることが示されたわけです。欧州不整脈学会(EHRA)の「NVAFにおけるNOACの実践的ガイド」3)では,「1-3-6-12ルール」(一過性脳虚血発作[TIA]は1日目,小規模梗塞では3日目,中規模梗塞では6日目,大規模梗塞では12日目に投与を開始)が提唱されていますが,決してエビデンスにもとづくものではありません。

 したがって,急性期であっても,出血性梗塞をそれほど心配しなくてよいと考えられる比較的軽症の患者に対しては,臨床現場の判断により,早期から抗凝固療法を始めてもよいのではないかと思います。

 また現在,RELAXED研究(NVAFの急性期脳梗塞/TIAにおけるリバーロキサバンの投与開始時期に関する多施設共同非介入登録観察研究)が開始されています。脳梗塞急性期に新規経口抗凝固薬を使うことの有効性,安全性については,RCTを行わなくても,こういった観察研究での検討で十分明らかになるのではないかと思います。SAMURAI-NVAF研究でも,今後の追跡から得られる結果を引き続き発表していく予定です。このような研究を通じて脳梗塞急性期における適切な治療法が解明されることに期待したいと思います。

(インタビュー:2014年3月13日)

表 SAMURAI-NVAF研究の参加施設
北海道 中村記念病院
宮城県 広南病院,みやぎ県南中核病院
栃木県 自治医科大学
東京都 杏林大学
神奈川県 北里大学,聖マリアンナ医科大学,東海大学医学部附属病院
愛知県 国立病院機構名古屋医療センター,トヨタ記念病院
兵庫県 神戸市立医療センター中央病院
京都府 京都第二赤十字病院
大阪府 国立循環器病研究センター
広島県 脳神経センター大田記念病院
岡山県 川崎医科大学
福岡県 国立病院機構九州医療センター
熊本県 熊本赤十字病院
鹿児島県 国立病院機構鹿児島医療センター

文献

  • 2014年国際脳卒中会議にて発表(Honma K, et al. Atrial Fibrillation Unidentified Prior to Stroke/tia: Background Features, Stroke Severity and Outcome - The SAMURAI-NVAF Study).
  • 2014年日本脳卒中学会総会にて発表(木下直人他.非弁膜症性心房細動を伴う急性期脳梗塞/TIA症例に対する早期抗凝固療法:the SAMURAI-NVAF study).
  • Heidbuchel H, et al. European Heart Rhythm Association Practical Guide on the use of new oral anticoagulants in patients with non-valvular atrial fibrillation. Europace 2013; 15: 625-51.
豊田一則氏
国立循環器病研究センター脳血管内科

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