抗血栓トライアルデータベース
抗血栓トライアルデータベース
home
主要学会情報
テキストサイズ 
第78回日本循環器学会学術集会(JCS 2014)2014年3月21〜23日,東京
腎機能正常の心房細動患者に対する新規経口抗凝固薬の低用量投与の患者背景や転帰
2014.4.14
印刷用PDF

 実地臨床においては,腎機能が保たれていても体格,性別や脳卒中/出血のリスクに応じて低用量の新規経口抗凝固薬が選択されている−3月23日,第78回日本循環器学会学術集会にて,宮本康二氏(国立循環器病研究センター)が発表した。

●背景・目的

 非弁膜症性心房細動(NVAF)患者に対する新規経口抗凝固薬は,程度の差はあるものの,いずれも腎排泄型であり,腎機能低下例では低用量を投与することが添付文書に記載,もしくは推奨されている。しかし,実地臨床においては,腎機能が保たれていても低用量が選択されることがある。本研究では,腎機能が保持されているNVAF患者における新規経口抗凝固薬の低用量投与について,その状況(患者背景)および転帰の検討を行った。

●対象

 ダビガトランまたはリバーロキサバンを投与されたNVAF患者1,020例のうち,推算クレアチニンクリアランス(eClCr)≧50mL/分の867例を対象とした。平均年齢は67歳,男女は642/225例で,心房細動の病型は発作性515例,持続性352例であった。

 ダビガトラン群は573例で,低用量(220mg/日)は356例(62%),通常用量(300mg/日)は217例(38%),リバーロキサバン群は294例で,低用量(10mg/日)は114例(39%),通常用量(15mg/日)は180例(61%)であった。

●患者背景の比較(リバーロキサバン vs. ダビガトラン)

 リバーロキサバン投与例はダビガトラン投与例にくらべ高齢で(69歳 vs. 67歳,p<0.01),体重(63kg vs. 66kg,p=0.003),eClCr(74 vs. 81mL/分,p<0.0001)は有意に低かった。脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)の既往(36% vs. 26%,p=0.001),平均CHADS2スコア(2.0 vs. 1.7,p=0.0008),平均CHA2DS2-VAScスコア(3.2 vs. 2.7,p=0.0003)も有意に高く,比較的高リスクの患者にリバーロキサバンが投与される傾向がみられた。

●患者背景

1. ダビガトラン

 220mg/日投与例は300mg/日投与例にくらべ高齢で,女性が多く,低身長,低体重であった。高血圧および糖尿病合併率は有意に高かった。eClCrは220mg/日投与例のほうが有意に低く(73±17mL/分 vs. 96±26mL/分,p<0.0001),抗血小板薬併用率,CHADS2スコア,CHA2DS2-VAScスコア,HAS-BLEDスコアは有意に高かった。

2. リバーロキサバン

 10mg/日投与例は15mg/日投与例にくらべ高齢で,女性が多く,低身長,低体重であった。高血圧,糖尿病合併率は同程度であった。eClCrは10mg/日投与例のほうが有意に低く(65±14mL/分 vs. 79±20mL/分,p<0.0001),CHA2DS2-VAScスコアは有意に高かった。抗血小板薬併用率,CHADS2スコア,HAS-BLEDスコアは同程度であった。

 ダビガトラン,リバーロキサバンともに,女性,高齢,低身長,低体重,eClCr低値,脳卒中リスクの高い患者で低用量が投与されていた。また,ダビガトランでは出血リスクの高い患者に低用量が投与されていた。

●イベント発症率と投与中止率

1. ダビガトラン

 血栓塞栓イベント発症率は220mg/日投与例4例(1%),300mg/日投与例3例(1%)で差はなかったが,出血イベント発症率(33例[9%]vs. 7例[3%],p=0.006),有害事象による投与中止率(76例[21%]vs. 22例[10%],p=0.0005)は220mg/日投与例で有意に高かった。

 出血の有無で患者背景を比較すると,出血発症例は高齢で(平均73歳 vs. 66歳,p=0.0003),平均CHA2DS2-VAScスコアが有意に高く(3.3 vs. 2.7,p=0.03),eClCrは有意に低かった(71±18mL/分 vs. 82±24mL/分,p=0.005)。また,出血発症例では,低用量投与の割合が高かった(330/220mgの内訳は,それぞれ7/33例 vs. 210/323例,p=0.006)。

2. リバーロキサバン

 血栓塞栓イベント発症率は10mg/日投与例1例(0.9%),15mg/日投与例4例(2%)で差はなかったが,出血イベント発症率(14例[12%]vs. 6例[3%],p=0.003),有害事象による投与中止率(15例[13%]vs. 6例[3%],p=0.001)は10mg投与例で有意に高かった。

 出血の有無で患者背景を比較すると,出血発症例は高齢で(平均76歳 vs. 68歳,p=0.002),平均CHA2DS2-VAScスコアが有意に高く(4.1 vs. 3.1,p=0.02),eClCrは有意に低く(65±10mL/分vs. 74±20mL/分,p=0.04),低用量投与の割合が高かった(15/10㎎の内訳はそれぞれ6/14例 vs. 174/100例,p=0.003)。

●結論

 実地臨床においては,腎機能が保たれていても,体格,性別や脳卒中/出血のリスクに応じて低用量の新規経口抗凝固薬が選択されていた。出血イベントは低用量投与例で増加がみられたが,それは患者背景の差異によるものと考えられ,用量の減量のみで回避することは難しいと考えられた。

 腎機能が保たれている症例に対する低用量投与は,通常用量にくらべ血栓塞栓イベントの増加はみられなかったが,症例数が少ないことや観察期間が短いことをふまえると,今後のさらなる検討が必要である。

JCS 2018

AHA 2017

ESC 2017

JCS 2017

STROKE 2017

AHA 2016

JCC 2016

ESC 2016


▲TOP
抗血栓療法トライアルデータベース