抗血栓トライアルデータベース
抗血栓トライアルデータベース
home
主要学会情報
テキストサイズ 
第78回日本循環器学会学術集会(JCS 2014)2014年3月21〜23日,東京
PCIを施行する心房細動患者に対する抗血栓療法-CREDO-Kyoto PCI/CABG Registryコホート2
2014.4.14
印刷用PDF
後藤貢士氏
後藤貢士氏

 PCIを受ける心房細動合併患者は,その多くがDAPTで治療されているものの,脳卒中を予防するためには最適な抗凝固療法を行うことがきわめて重要-3月22日,第78回日本循環器学会学術集会で開催された「Roundtable Discussion4/Current Topics Related to Novel Oral Anticoagulants」にて,後藤貢士氏(京都大学医学部附属病院循環器内科)が発表した。

●抗血栓薬3剤併用では出血リスクが上昇する

 心房細動を合併している場合は,脳卒中リスクを評価してワルファリンまたは新規経口抗凝固薬が投与される。一方,冠動脈インターベンション(PCI)を受ける患者に対しては,アスピリンおよびクロピドグレルを併用する抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)が必要となる。そのため,PCI施行の心房細動合併患者に対しては,抗凝固薬+DAPTの3剤併用療法が行われることになるが,このような患者では出血リスクが上昇することが明らかになっている。

 抗血栓療法の種類別に出血発症率を検討したデンマークのコホート研究1)によると,アスピリン単独では2.6%/年であったのに対し,3剤併用では12.0%/年と上昇していた。また,RE-LYのサブ解析2)では,試験薬単独にくらべ試験薬+抗血小板薬単剤併用,試験薬+DAPT併用と投与薬剤数が増えるにしたがい大出血発症率の上昇がみられた。またWOEST 3)では,ワルファリン+DAPTはワルファリン+クロピドグレルにくらべ,全出血の他,全死亡,脳卒中,心筋梗塞,ステント血栓症,標的血管血行再建術の複合のいずれも多かったことが報告されている。

 このように3剤併用では出血リスクが高まることをふまえ,欧米のPCI施行時のガイドライン4, 5)では,3剤併用期間をなるべく短くする方針が示されている。

●PCI施行の日本人心房細動合併患者の実態

 CREDO-Kyoto PCI/CABG Registryコホート2では,PCIを施行した心房細動合併例におけるワルファリンの使用実態,コントロール強度,さらにはワルファリンによる抗凝固療法の安全性および有効性について検討を行った。

 対象は,2005年1月~2007年12月,26施設から登録された患者15,939例のうち,PCIを施行した心房細動合併患者1,057例である。これらの患者を退院時におけるワルファリン投与の有無別に,ワルファリン群506例(48%)または非ワルファリン群551例(52%)に分け,5.1年間(中央値)追跡を行った。主要評価項目は脳卒中(虚血性+出血性),副次評価項目は全死亡,心筋梗塞,大出血である。

●ワルファリン投与の有無による比較

1.患者背景

 非ワルファリン群はワルファリン群にくらべ高齢で,急性心筋梗塞が多く,男性および薬剤溶出性ステント(DES)の使用が少なかった。また,頭蓋内出血,貧血(ヘモグロビン<11g/dL)が多く,末梢血管疾患が少なかった。アスピリンは両群98%と同程度であったが,チエノピリジンは非ワルファリン群97%とワルファリン群の93%にくらべ多く,これを受けてDAPTも非ワルファリン群のほうが多かった(95% vs. 92%)。CHADS2スコアは両群2.4と同程度で,点数分布も同様であった。

2.結果

 主要評価項目である脳卒中の発症率は,ワルファリン群13.8%,非ワルファリン群11.8%で,同程度であった(補正後ハザード比[HR]1.20,95%CI 0.83~1.73,p=0.34)。虚血性脳卒中(11.5% vs. 10.3%,補正後HR 1.22,95%CI 0.82~1.83,p=0.33),出血性脳卒中(3.2% vs. 1.6%,補正後HR 2.68,95%CI 0.78~9.24,p=0.12)も同様の結果であった。  副次評価項目については,全死亡や大出血は同程度であったが,心筋梗塞はワルファリン群のほうが有意に少なかった。

●TTRによる比較

1.患者背景

 ワルファリン群のうち,プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)治療域内時間(TTR)のデータが得られた409例について検討を行った。PT-INR 2.0~3.0を治療域とした場合,治療域内は24.2%,治療域以下は72.4%,治療域以上は3.4%,一方PT-INR 1.6~2.6を治療域とすると,それぞれ52.6%,40.2%,7.2%であり,低めにコントロールされている現状が伺えた。 そこで,ワルファリンのコントロールが良好とされるTTR 65%で分けて解析を行った(TTR≧65%:154例,<65%:255例)。TTR≧65%群はTTR<65%群にくらべ若齢であったが,DAPT併用率やCHADS2スコアには有意差を認めなかった。

2.結果

 主要評価項目である脳卒中の発症率はTTR≧65%群6.9%で,TTR<65%群15.1%にくらべ抑制された(補正後HR 0.37,95%CI 0.16~0.86,p=0.02)。虚血性脳卒中(4.9% vs. 12.6%,補正後HR 0.30,95%CI 0.11~0.81,p=0.02)も抑制されたが,出血性脳卒中は同程度であった(3.1% vs. 3.4%,補正後HR 0.89,95%CI 0.26~3.02,p=0.89)。

 副次評価項目については,全死亡はTTR≧65%群で,TTR<65%群にくらべ有意に抑制され,大出血も抑制傾向がみられた。心筋梗塞は同程度であった。

●まとめ

 PCIを受ける心房細動患者において,退院時におけるワルファリンの使用率は48%にすぎず,使用されていてもそのコントロールは弱く,不十分であった。TTR≧65%のコントロールが良好な患者では,虚血性脳卒中発症率が著明に低かった。これらの患者は,その多くがDAPTで治療されているものの,脳卒中を予防するためには最適な抗凝固療法を行うことがきわめて重要と考えられる。今後更なるエビデンスの構築が重要と考えられた。

文献

  • Sorensen R, et al. Risk of bleeding in patients with acute myocardial infarction treated with different combinations of aspirin, clopidogrel, and vitamin K antagonists in Denmark: a retrospective analysis of nationwide registry data. Lancet 2009; 374: 1967-74.
  • Dans AL, et al. Concomitant use of antiplatelet therapy with dabigatran or warfarin in the Randomized Evaluation of Long-Term Anticoagulation Therapy (RE-LY) trial. Circulation 2013; 127: 634-40.
  • Dewilde WJ, et al. Use of clopidogrel with or without aspirin in patients taking oral anticoagulant therapy and undergoing percutaneous coronary intervention: an open-label, randomised, controlled trial. Lancet 2013; 381: 1107-15.
  • European Heart Rhythm Association, European Association for Cardio-Thoracic Surgery, et al. Guidelines for the management of atrial fibrillation: the Task Force for the Management of Atrial Fibrillation of the European Society of Cardiology (ESC). Eur Heart J 2010; 31: 2369-429.
  • Faxon DP, et al. Consensus document: antithrombotic therapy in patients with atrial fibrillation undergoing coronary stenting. A North-American perspective. Thromb Haemost 2011; 106: 572-84.

JCS 2018

AHA 2017

ESC 2017

JCS 2017

STROKE 2017

AHA 2016

JCC 2016

ESC 2016


▲TOP
抗血栓療法トライアルデータベース