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第62回日本心臓病学会学術集会(JCC 2014)2014年9月26〜28日,仙台
日本人DVT 患者に対するリバーロキサバン単剤療法の検討-J-EINSTEIN DVT試験
2014.10.8
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山田典一氏
山田典一氏

日本人の深部静脈血栓症(DVT) 患者に対し,初期治療から再発予防までをリバーロキサバンのみで行う単剤療法(シングル・ドラッグ・アプローチ)は,標準療法と遜色ない有効性および安全性を示し,海外で行われた第III相試験との一貫性を確認-9月26日,第62回日本心臓病学会学術集会にて,山田典一氏(三重大学大学院循環器・腎臓内科学)が発表した。

●目的

DVTや肺血栓塞栓症(PE)などの静脈血栓塞栓症(VTE)の治療には,ヘパリンなどの注射薬による初期治療につづいて,経口薬のワルファリンに切り替える方法が一般に行われてきた。しかし,新規経口抗凝固薬の登場により,本領域におけるパラダイムシフトが期待されている。

リバーロキサバンでは,急性症候性DVTならびに急性症候性PE患者を対象とした第Ⅲ相試験として,EINSTEIN DVTならびにEINSTEIN PE 試験1~3)がそれぞれ行われた。これらの結果から,発症初期から再発予防までをリバーロキサバンのみの単剤で治療する「シングル・ドラッグ・アプローチ」という新たな治療コンセプトの有用性が確認され,海外ではすでに本適応症での承認を取得し,臨床応用されている。

一方,本結果を日本人に適用するにあたって,日本人と白人ではリバーロキサバンの至適用量が異なることが懸念された。実際,同一用量のリバーロキサバンを投与した際,日本人では白人に比べ体内曝露量が高くなることが示唆されている。また,欧米と比較してわが国ではワルファリン治療目標域の推奨値(プロトロンビン時間国際標準比[PT-INR])が低く設定されている(海外の2.0~3.0に対し,わが国では1.5~2.5)4)などの違いもある。

そこで,日本人向けの用量設定の下,日本の医療環境を反映した試験を実施すべく,日本人の急性症候性DVT患者を対象に,初期治療ならびに再発予防におけるリバーロキサバンの有効性および安全性を検討することを目的とした国内第III相試験(J-EINSTEIN DVT 試験)が行われた。<J-EINSTEIN PE試験についてはこちら>

●方法

本試験は,症候性PE を合併しない急性症候性DVT患者60例を対象に,多施設共同の無作為化,非盲検試験として実施された。対象者はリバーロキサバン群あるいは標準療法(未分画ヘパリン+ワルファリン)群に4:1の割合で割り付けられ,それぞれ以下の治療が行われた。リバーロキサバンの初期用量は10mg,15mg各1日2回の2つのレジメンで行われ,この2用量については二重盲検とした。なお,予定投与期間は,無作為割付時に担当医師の判断により3ヵ月,6ヵ月,あるいは12ヵ月のいずれかとした。

リバーロキサバン20/15群:23例。10mg 1日2回を21日間投与した後,15mg 1日1回での維持療法を実施。
リバーロキサバン30/15群:25例。15mg 1日2回を21日間投与した後,15mg 1日1回での維持療法を実施。
標準療法群:12例。未分画ヘパリン持続静注+ワルファリンの併用療法を少なくとも5日間行い(活性化部分トロンボプラスチン時間[APTT]1.5~2.5倍),PT-INR>1.5に到達した後,ワルファリン単独療法に切り替え(目標PT-INR 1.5~2.5)。

有効性の主要評価項目は予定投与期間中の症候性VTE,安全性の主要評価項目は重大な出血あるいは重大ではないが臨床的に問題となる出血とした。

●患者背景

対象患者の性別,年齢,体重について,リバーロキサバン20/15群,同30/15群,標準療法群に差は認めず,治験薬の平均投与期間にも差を認めなかった(191.8日,186.8日,192.1日)。本試験では,無作為割付前に48時間以下の前治療(未分画ヘパリンまたはフォンダパリヌクス)を受けていた症例の組み入れは許可されていたが,これらの非経口抗凝固薬による前治療を受けた症例は各群約4割を占め,平均投与期間は各群それぞれ0.7日,0.8日,0.6日であった。

●結果

症候性VTE はリバーロキサバン30/15群で1例(4.0%)認められた。重大な出血は全群で認めず,重大ではないが臨床的に問題となる出血はリバーロキサバン20/15群3例(13.6%),同30/15群2例(8.0%),標準療法群1例(8.3%)にみられた。

さらに有効性の副次的評価項目について,スクリーニング時,治験薬投与開始21日後および予定服薬期間終了時の画像検査所見に基づき評価した。治験薬投与開始21日後の「血栓退縮効果」において,「改善(消失を含む)」であった症例はリバーロキサバン20/15群18例(78.3%),同30/15群18例(75.0%),標準療法群10例(83.3%)であった。「血栓の消失」はそれぞれ4例(17.4%),6例(25.0%),2例(16.7%)であった。予定投与期間終了時では,「改善(消失を含む)」はリバーロキサバン20/15群20例(100%),同30/15群20例(87.0%),標準療法群11例(91.7%),「血栓の消失」は10例(50.0%),10例(43.5%),4例(33.3%)に認められた。

有害事象はリバーロキサバン20/15群18例(81.8%),同30/15群21例(84.0%),標準療法群11例(91.7%)で認めた。このうち重篤なものは4例(18.2%),3例(12.0%),1例(8.3%)で,いずれも3群で同程度であった。

●結論

日本人DVT患者に対するリバーロキサバン単剤療法は,わが国のガイドラインで推奨される標準療法との比較において,有効性および安全性に明らかな差は認められず,国際共同試験の結果とも一貫性が確認された。

発表後の質疑応答において,「リバーロキサバンの薬価はワルファリンにくらべ高いにもかかわらず,本試験では非劣性が示されただけにすぎないともいえる」との指摘があった。山田氏はこれに対し「ワルファリンは効果発現まで時間がかかることから,ヘパリンなどの注射剤との併用が必須となり,現在わが国ではDVT患者を外来で管理することは難しい。リバーロキサバンは,ヘパリンでのブリッジの必要はなく,急性期から慢性期にわたって単剤治療を可能とすることで,入院期間の短縮,ひいては外来のみでの治療の実現が期待できる。コスト・ベネフィットについては今後の精査が必要であるが,リバーロキサバンによりDVTの治療戦略が大きく変わる可能性がある」と述べた。

文献

  • EINSTEIN Investigators. Oral rivaroxaban for symptomatic venous thromboembolism. N Engl J Med 2010; 363: 2499-510.
  • EINSTEIN-PE Investigators. Oral rivaroxaban for the treatment of symptomatic pulmonary embolism. N Engl J Med 2012; 366: 1287-97.
  • Prins MH, et al. Oral rivaroxaban versus standard therapy for the treatment of symptomatic venous thromboembolism: a pooled analysis of the EINSTEIN-DVT and PE randomized studies. Thromb J 2013; 11: 21.
  • 肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断,治療,予防に関するガイドライン(2009年改訂版).http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_andoh_h.pdf

→J-EINSTEIN DVT and PE構造化抄録
(Yamada N, Hirayama A, Maeda H, Sakagami S, Shikata H, Prins MH, Lensing AW, Kato M, Onuma J, Miyamoto Y, Iekushi K, Kajikawa M. Oral rivaroxaban for Japanese patients with symptomatic venous thromboembolism - the J-EINSTEIN DVT and PE program. Thromb J. 2015 Jan 17;13:2. doi: 10.1186/s12959-015-0035-3. )


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