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欧州心臓病学会(ESC 2014)2014年8月30〜9月3日,スペイン・バルセロナ
FXa阻害薬リバーロキサバンがアンジオテンシンII刺激による細胞増殖,炎症活性亢進を抑制
2014.10.16
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箸方健宏氏
箸方健宏氏

活性型血液凝固第X因子(FXa)阻害薬リバーロキサバンが心筋線維化を抑制する可能性が示された。マウス心筋線維芽細胞の実験で,アンジオテンシンIIは細胞増殖と炎症活性を著明に亢進させたが,リバーロキサバンはこれらの変化を有意に抑制した。9月2日,欧州心臓病学会(ESC Congress 2014)にて,箸方健宏氏ら(北里大学循環器内科)が報告した。

●背景・目的

心筋線維芽細胞の増殖と遊走は,心筋の線維化を引き起こすことが知られており,これが心筋リモデリングの進展にも大きく関与している。近年,FXaによるプロテアーゼ活性化受容体(PAR)-1およびPAR-2の活性化が,心筋線維化およびリモデリングに一定の役割を果たしていることが報告された。この知見は,FXa阻害薬が抗凝固作用とは異なる多面的な作用をもつ可能性を示唆するものだが,そのエビデンスはまだ少ない。そこで,マウスの心筋線維芽細胞を用い,アンジオテンシンII刺激下の細胞増殖活性亢進に対するリバーロキサバンの効果を検討した。

●方法

マウス心筋由来線維芽細胞(コンフルエント)にリバーロキサバンを添加したものとしなかったものを3時間培養し,アンジオテンシンII(10 -8 M)による刺激にともなう増殖・遊走,および炎症関連因子の産生について以下のとおり評価し,比較した。

・線維芽細胞の増殖: MTTアッセイを用いて,アンジオテンシンII刺激から12・24時間後に測定。
・線維芽細胞の遊走: アンジオテンシンII刺激から24時間後に測定。
・炎症関連因子の産生: 網羅的な炎症性サイトカイン,ケモカイン産生の解析 (全40項目)を化学発光法によるサイトカインアレイを用い,アンジオテンシンII刺激から18時間後に測定。
・細胞増殖シグナル伝達経路に関する物質: cAMP応答配列結合蛋白,血清応答因子(SRF)/Elk-1,核内因子(NF)-κB,アクチベーター蛋白(AP)-1 1)について,レポーターアッセイおよびデュアルルシフェラーゼアッセイにより評価。

●結果

線維芽細胞の増殖]リバーロキサバン非添加細胞では,アンジオテンシンII刺激による線維芽細胞の有意な増殖がみられた(12・24時間後,p<0.05 vs. 刺激なし)。これに対して,リバーロキサバン(0.01/0.1/1/5μg/mL)を添加した細胞では,その濃度にかかわらず増殖は有意に抑制された(12・24時間後,すべてp<0.05)。

線維芽細胞の遊走]リバーロキサバン非添加細胞では,アンジオテンシンII刺激による線維芽細胞の遊走が有意に増加していたが,リバーロキサバン(0.1μg/mL)を添加した細胞では,遊走は有意に抑制された(p<0.05)。

炎症関連因子]リバーロキサバン非添加細胞では,アンジオテンシンII刺激による広範囲な炎症性サイトカイン,ケモカイン産生量の増加がみられたが,リバーロキサバンを添加した細胞では,I-309(ケモカインC-C-モチーフリガンド1),インターロイキン16,interferon-inducible T-cell alpha chemoattractant(I-TAC),マクロファージ・コロニー刺激因子(M-CSF),単球遊走促進因子(MCP)-5,間質細胞由来因子(SDF)-1,および腫瘍壊死因子(TNF)-αについて,有意な産生の抑制を認めた(p<0.05)。

TIMP-1]リバーロキサバン非添加細胞では,アンジオテンシンII刺激によるTIMP-1産生量の有意な増加がみられたが(p<0.05),リバーロキサバン(0.01/0.1/1/5μg/mL)を添加した細胞では,その濃度にかかわらず,増加は有意に抑制された(すべてp<0.05)。

細胞増殖のシグナル伝達]すべての因子について,リバーロキサバン非添加細胞ではアンジオテンシンII刺激による濃度の増加がみられたが,リバーロキサバンを添加した細胞では,これらの増加はすべて有意に抑制された(p<0.05)。

●考察・結論

リバーロキサバンはFXaを直接的に阻害する薬剤であり,本剤はアンジオテンシンII刺激によるマウス心筋線維芽細胞の増殖・遊走および炎症反応を抑制した。

本研究の結果から,アンジオテンシンII刺激により,心筋線維芽細胞から産生した活性酸素種は凝固系の組織因子(TF)を活性化させ1, 2),これが第VII因子およびFXaに結合してPAR-2を活性化させるとともに,FXaはPAR-1も活性化させる可能性が推測された3, 4)。少なくともin vitro動物モデルにおいて,リバーロキサバンが心筋線維化に対して好ましい影響を与える可能性が示された。

文献

  • Griendling KK et al. Angiotensin II Stimulates NADH and NADPH Oxidase Activity in Cultured Vascular Smooth Muscle Cells. Circ Res 1994; 74: 1141-8.
  • Muller I et al. Intravascular tissue factor initiates coagulation via circulating microvesicles and platelets. FASEB J 2003; 17: 476-8.
  • Camerer E et al. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America. 2006; 103: 14259-60.
  • Borensztajn K et al. Factor Xa: at the crossroads between coagulation and signaling in physiology and disease. Trends Mol Med 2008; 14: 429-40.


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