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欧州心臓病学会(ESC 2014)2014年8月30〜9月3日,スペイン・バルセロナ
リバーロキサバンは血管傷害後の新生内膜増殖を抑制
2014.9.22
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原 知也氏
原 知也氏

活性型血液凝固第X因子(FXa)阻害薬であるリバーロキサバンは,血管傷害後の新生内膜増殖を有意に抑制-9月2日,欧州心臓病学会(ESC Congress 2014)にて,原知也氏(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部循環器内科学)らが報告した。

●背景・目的

動脈硬化性疾患は,マクロファージを中心とした慢性炎症を基盤として発症する。最近の研究から,複数の凝固因子が血栓形成のみならず,さまざまな細胞に発現するプロテアーゼ活性化受容体(PAR)を介して,炎症反応にも関与することが知られている1~3)。なかでも,PARのサブタイプPAR-2が慢性炎症に強く関与する可能性が示唆されている4)

PAR-2の主要なリガンドの一つであるFXaを直接的に阻害するリバーロキサバンは,抗凝固作用による血栓塞栓症の抑制のみならず,急性冠症候群患者における心血管イベント抑制にも有用であることが示されている5~7)

そこで本研究では,リバーロキサバンはPAR-2の主要なリガンドの一つであるFXaを抑制することで,慢性炎症や動脈硬化を抑制し,血管傷害後の新生内膜増殖を抑制するとのいう仮説を立て,その検証を行った。

●方法

in vivoでの検討は,大腿動脈をワイヤにより機械的に傷害したマウスを用い8),リバーロキサバン5mg/kg/日を7日または4週投与し,傷害血管における新生内膜増殖と傷害血管での炎症性物質産生の変化を対照群(非投薬)と比較した。

in vitroでの検討では,野生型マウスの腹腔マクロファージとマウスマクロファージ株RAW264.7を用いて,FXaやリバーロキサバンを付加した際の炎症性物質産生の動向を検討し,同時に特異的PAR-1アゴニストおよび特異的PAR-2アゴニストの作用を観察した。マクロファージの炎症性物質産生は,単球走化性蛋白質(MCP)-1,インターロイキン(IL)-β,TNF-αなどの発現量(定量的RT-PCR)により評価した。ラットの血管平滑筋細胞(VSMC)にも同様の刺激を加え,増殖・遊走活性の変化を検討した。

●結果

血管傷害マウスにおけるリバーロキサバン投与群と非投与群では,体重,血圧,血糖,血清脂質値に有意差は認めなかった。リバーロキサバンの血中濃度は臨床的な使用濃度の下限域であった。リバーロキサバン4週間投薬後に傷害動脈を採取し,新生内膜増殖の病理組織学的観察を行った結果,内膜面積**,内膜/中膜面積比*が対照群にくらべ有意に縮小していた。

また,リバーロキサバン7日投与後に傷害動脈において各種炎症メディエーターのmRNA発現量を測定した結果,リバーロキサバン投与群はF4/80**,単球走化性蛋白質(MCP)-1**,インターロイキン(IL)-1β*,TNF-α*,トランスフォーミング増殖因子(TGF)-β1**,ストロマ細胞由来因子1(SDF-1)**,顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)*といった炎症メディエーターや増殖因子の発現が対照群より有意に少なかった。

野生型マウス腹腔内マクロファージにFXaを添加したところ,MCP-1**,IL-1β**,TNF-α***の発現量は有意に増加したが,リバーロキサバンはこれらの増加を有意に抑制した(MCP-1*,IL-β**,TNF-α**)。RAW264.7に対しても同様に,FXa刺激にてこれらの炎症性サイトカインが増加し,リバーロキサバンはこれらの上昇を抑制した。さらに,RAW264.7にPAR-1アゴニストを添加した結果,MCP-1*とTNF-α* のmRNA発現量が有意に増加,PAR-2アゴニストを添加するとIL-1β*,TNF-α***のmRNA発現量が有意に増加した。

次に,リバーロキサバンがVSMCの増殖活性に与える影響について検討した。まず,ラットVSMCを用いて創傷治癒/細胞遊走アッセイを実施したところ,FXa付加時にはVSMCの遊走・増殖*が有意に亢進したが,リバーロキサバンの付加により抑制された*。MTS assayでも同様に,FXa付加にて増殖***が亢進し,リバーロキサバンの付加により抑制された*
*p<0.05,**p<0.01,***p<0.0001

●結論

FXa阻害薬であるリバーロキサバンの投与により,血管傷害後の新生内膜増殖が抑制された。リバーロキサバンは少なくとも部分的にマクロファージと血管平滑筋細胞のFXa-PARs経路を遮断し,炎症反応や細胞増殖を抑制することで抗動脈硬化作用を示す可能性が示された。

文献

  • Borissoff JI, et al. The hemostatic system as a modulator of atherosclerosis. N Engl J Med. 2011; 364: 1746-60.
  • Croce K, et al. Intertwining of thrombosis and inflammation in atherosclerosis. Curr Opin Hematol. 2007; 14: 55-61.
  • Major CD, et al. Extracellular mediators in atherosclerosis and thrombosis: lessons from thrombin receptor knockout mice. Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2003; 23: 931-9.
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  • Mega JL, et al. Rivaroxaban versus placebo in patients with acute coronary syndromes (ATLAS ACS-TIMI 46): a randomised, double-blind, phase II trial. Lancet. 2009; 374: 29-38.
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