抗血栓トライアルデータベース
抗血栓トライアルデータベース
home
主要学会情報
テキストサイズ 
欧州心臓病学会(ESC 2014)2014年8月30〜9月3日,スペイン・バルセロナ
FXa阻害薬リバーロキサバンが糖尿病マウスにおける血管内皮機能を改善
2014.10.15
印刷用PDF
島袋充生氏
島袋充生氏

活性型血液凝固第X因子(FXa)阻害薬リバーロキサバンは,eNOSのリン酸化減衰を抑制することで内皮機能障害を抑制する可能性が示唆-8月31日,欧州心臓病学会(ESC Congress 2014)にて,島袋充生氏(徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部心臓血管病態医学分野)が報告した。

●背景・目的

血管の損傷や炎症が生じると,FXaおよびトロンビンなどの血液凝固因子はプロテアーゼ活性化受容体(PAR)を介して種々の標的細胞に作用することが知られている。このPARのシグナル伝達経路には,一酸化窒素(NO)合成を制御する内皮型NO合成酵素(eNOS)のリン酸化1)が関わることが報告されている2)。最近,糖尿病モデルマウスにおけるeNOSリン酸化の異常についての報告もなされたが3),血管内皮傷害の発生に対するPARの関与には不明な点が多い。

そこで,血管内皮傷害におけるPARの役割を明らかにするため,糖尿モデルマウスKK-Ayに対するFXa阻害薬リバーロキサバンの影響を検討した。

●方法

実験には8週齢の雄KK-Ayマウスを用いた。糖尿病モデルマウスであるKK-Ayは正常マウスと異なり,eNOS活性が低い状態に保たれている(セリン1177のリン酸化が低下しスレオニン495のリン酸化が亢進)という特徴を有する3)。このマウスを2群に分け,リバーロキサバンまたはvehicleを3週投与した。リバーロキサバンは飼料に混入した(0.005%,約6mg/kg/日)。

3週後,大動脈輪を採取し,微小オーガンバスシステムにより血管作動性物質に対する反応を測定した。使用した血管作動性物質は,血管収縮作用を有するフェニレフリン,内皮依存性血管拡張物質のアセチルコリン,NOドナーのニトロプルシドナトリウムである。以上に加え,ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用い,最終糖化生成物(メチルグリオキザール:AGE)のeNOSリン酸化に対する作用と,それに対するリバーロキサバンの効果を観察した。

●結果

リバーロキサバン群とvehicle群で,摂食量,体重,収縮期血圧,耐糖能,インスリン感受性に有意差はなかった。しかし,リバーロキサバン群はvehicle群に比べ,アセチルコリン添加時の大動脈輪の血管拡張反応が改善していることが示された(10-8 mol/L,p<0.05)。フェニレフリン,ニトロプルシドナトリウムに対する反応性に有意差は認められなかった。

AGEはHUVECのeNOSにおけるセリン1177のリン酸化を容量依存的に減衰させたが(p<0.05),リバーロキサバンを同時に添加した場合のセリン1177のリン酸化は維持された(AGE単独投与との比較:p<0.05)。スレオニン495のリン酸化に対しては,AGE,リバーロキサバン添加による有意な影響はみられなかった。

●結論

FXa阻害薬リバーロキサバンは,糖尿病モデルマウスKK-Ayの血管内皮機能を改善した。本結果は,AGEがもたらすeNOSセリン1177のリン酸化減衰をリバーロキサバンが抑制し,eNOS活性を維持したことによるものと思われる。

文献

  • Mount PF, et al. Regulation of endothelial and myocardial NO synthesis by multi-site eNOS phosphorylation. J Mol Cell Cardiol 2007; 42: 271-9.
  • Suzuki H, et al. Distinct Roles of Protease-Activated Receptors in Signal Transduction Regulation of Endothelial Nitric Oxide Synthase. Hypertension 2009; 53: 182-88.
  • Matsumoto S, Shimabukuro M, et al. Azilsartan, an angiotensin II type 1 receptor blocker, restores endothelial function by reducing vascular inflammation and by increasing the phosphorylation ratio Ser(1177)/Thr(497) of endothelial nitric oxide synthase in diabetic mice. Cardiovasc Diabetol 2014; 13: 30.


▲TOP
抗血栓療法トライアルデータベース