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欧州心臓病学会(ESC 2014)2014年8月30〜9月3日,スペイン・バルセロナ
ACS合併/PCI適応を有する心房細動に対する抗血栓療法-冠動脈ステント留置患者の管理
2014.12.2
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Kurt Huber氏
Kurt Huber氏

欧州心臓病学会(ESC Congress 2014)にて8月31日に開催されたシンポジウム「Warfarin or new anticoagulants in atrial fibrillation patients undergoing PCI」より,Kurt Huber氏(Wilhelminen Hospital,オーストリア)の発表内容を紹介する。

●抗血栓薬の併用療法により出血リスクが増加

今回発表されたESCおよび関連学会による合同文書『急性冠症候群合併および/または経皮的冠動脈インターベンションまたは心臓弁インターベンション施行予定の心房細動患者に対する抗血栓療法の管理』1)の策定にあたり,薬剤溶出性ステント(DES)留置後の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の期間について,多くの議論がなされた。その背景には,抗血栓薬の長期併用療法による出血リスクの問題がある。

とくに心房細動を合併する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行例に対しては,脳梗塞予防のための抗凝固療法と,ステント血栓症予防のためDAPTとの併用療法が必要となるが,長期間継続すると出血リスクが上昇する。デンマークで全国的に行われたコホート調査では,心房細動で入院した患者に対し,退院後にワルファリン+アスピリン+クロピドグレルの3剤併用療法を行った場合,致死性/非致死性出血リスクはワルファリン単独の3.7倍にのぼった2)

●抗血栓療法に関する新たな指針

新たな指針では,抗血栓療法の選択に際し,まず脳卒中リスクと出血リスクを評価するよう推奨された。つぎに臨床状態(安定冠動脈疾患/ACS)を評価し,抗血栓療法のレジメ(種類,投与期間)を決定する。この一連のステップはフローチャートになっている1)。ここでは,PCIを施行した安定冠動脈疾患患者を例にあげて説明する。

<症例>
クラスII狭心症の72歳,男性。 軽度高血圧,脂質異常症を有し,β遮断薬,長時間作用型経口硝酸薬,アスピリンを服用。発作性心房細動を年1,2回発症していた。CHA2DS2-VAScスコア2点,HAS-BLEDスコア2点。安静時心電図,左室駆出率ともに正常だが,運動負荷試験は陽性。CT血管造影により多枝病変が認められ,DESを6本留置したところ,いずれもクリアな再還流が得られた。

本症例は「CHA2DS2-VAScスコア≧2」「HAS-BLEDスコア0~2」に該当し,PCI後6ヵ月間は3剤併用療法(経口抗凝固薬+アスピリン75~100mg/日+クロピドグレル75mg/日),あるいは2剤併用療法(経口抗凝固薬+クロピドグレル)が推奨される。その後,2剤併用療法(経口抗凝固薬+アスピリンまたはクロピドグレル)を12ヵ月後まで継続し,それ以降は経口抗凝固薬単剤療法が推奨される。

●PCI後のDAPTの至適投与期間

PCI後のDAPT至適投与期間については,複数の検討が行われてきた。PRODIGY 3)では,安定狭心症あるいはACS患者を対象に,第1世代DES,第2世代DES,BMSにそれぞれ割り付けたうえで,短期DAPT(アスピリン+クロピドグレルを6ヵ月,その後アスピリン単剤を24ヵ月まで服用)と長期DAPT(アスピリン+クロピドグレルを24ヵ月併用)による主要評価項目(24ヵ月後の全死亡/非致死性心筋梗塞/脳血管イベント)の発生について比較した。その結果,主要評価項目の発生率に群間差はみられなかったが,出血(BARC基準 タイプ2,3,5)発生率は一貫して有意に短期DAPT群で少なかった(3.5% vs. 7.4%,ハザード比[HR]0.46,95%CI 0.31-0.69,p=0.00018)。

また,安定/不安定狭心症または心筋梗塞患者に第2世代DESを留置し,3ヵ月DAPT群と12ヵ月DAPT群を比較したOPTIMIZE 4)では,主要評価項目(全死亡/心筋梗塞/脳卒中/大出血)の発生率に群間差はみられなかった。ステント血栓症発生率も同程度であった。一方で,3~12ヵ月後の出血リスクは,3ヵ月併用群のほうが低い傾向がみられた(HR 0.43,95%CI 0.16-1.11,p=0.07)。

Casseseら5)が行ったメタ解析でも,長期DAPTと短期DAPTとで死亡,心筋梗塞,ステント血栓症のいずれにも差を認めなかったが,脳血管イベントは長期DAPTのほうが多い傾向がみられ(オッズ比[OR]1.51,95%CI 0.92-2.47),TIMI大出血は著明に多かった(OR 2.64,95%CI 1.31-5.30)。

このように,長期DAPTと比較して短期DAPTの出血リスクは低く,ステント血栓症の予防効果も劣らないことを示すデータは複数存在する。

●超遅発性ステント血栓症の減少とDAPT期間の短縮

では,超遅発性ステント血栓症についてはどうか。DESから溶出される薬剤は再狭窄を抑制するが,同時に内皮細胞の再生も遅延させる。そのため,DES留置例ではBMS留置例に比べ再内皮化・被覆化が遅れる。したがって,DES留置例では超遅発性ステント血栓症予防のためにより長期間のDAPTが行われてきた。しかし,第1世代DESと比較して新世代DESでは内皮再生速度が早くなっている6)

実際,PROTECTでは,第1世代DESに比しゾタロリムス溶出性ステント(Endeavor)における遅発性ステント血栓症の発生率は有意に低かった7)。さらに,新旧DESを比較した他の試験(生分解性ポリマーDES vs. 永久ポリマーDES)でも,1~4年後までのステント血栓症発生率は生分解性ポリマーDESできわめて低いことが示されている(HR 0.22,95%CI 0.08-0.61,p=0.004)8)。したがって,第1世代DESでみられた超遅発性ステント血栓症は,DESの進化によってもはや問題にならなくなってきており,DAPT期間も短縮できるようになったと考える。

●新世代DESや新規経口抗凝固薬を用いたエビデンスがまたれる

現在,新世代DESを用い,抗血栓薬の至適併用期間を探索する試験が進行している。生分解性ポリマーDESを使用したGLOBAL LEADERS9)では,ACSまたは安定狭心症患者を対象に,短期DAPT群(アスピリン+ticagrelorを1ヵ月併用,その後はticagrelor単独を23ヵ月投与)と長期DAPT群(アスピリン+ticagrelorまたはクロピドグレルを12ヵ月併用,その後アスピリン単独を12ヵ月投与)で全死亡および新規Q波異常心筋梗塞発生率を比較する。急性期患者において早期にアスピリン投与を中止する点や,新規P2Y12阻害薬を用いる点について,どのような結果が示されるか興味深い。

また,新規経口抗凝固薬+抗血小板薬単剤をワルファリン+DAPTと比較する試験も進行中である。

●まとめ

抗血栓薬の併用期間の違いによる虚血イベント予防効果の差異については明確になっていないが,投与期間の短縮が出血イベントの減少に繋がることは明らかになっている。したがって,併用は可能な限り短期に留めるべきである。なお,新規P2Y12阻害薬にはデータが不十分であり,現時点では経口抗凝固薬との併用は推奨されない。新規経口抗凝固薬に関しても,進行中の試験の結果をまって推奨を再定義する必要がある。適切な患者,適切な薬剤,適切な期間投与を明らかにする取り組みが重要である。

文献

  • Lip GY, et al. Management of antithrombotic therapy in atrial fibrillation patients presenting with acute coronary syndrome and/or undergoing percutaneous coronary or valve interventions: a joint consensus document of the European Society of Cardiology Working Group on Thrombosis, European Heart Rhythm Association (EHRA), European Association of Percutaneous Cardiovascular Interventions (EAPCI) and European Association of Acute Cardiac Care (ACCA) endorsed by the Heart Rhythm Society (HRS) and Asia-Pacific Heart Rhythm Society (APHRS). Eur Heart J 2014 Aug 25.
  • Hansen ML, et al. Risk of bleeding with single, dual, or triple therapy with warfarin, aspirin, and clopidogrel in patients with atrial fibrillation. Arch Intern Med 2010; 170: 1433-41.
  • PRODIGY Investigators. Short- versus long-term duration of dual-antiplatelet therapy after coronary stenting: a randomized multicenter trial. Circulation 2012; 125: 2015-26.
  • Feres F, et al. Three vs twelve months of dual antiplatelet therapy after zotarolimus-eluting stents: the OPTIMIZE randomized trial. JAMA 2013; 310: 2510-22.
  • Cassese S, et al. Clinical impact of extended dual antiplatelet therapy after percutaneous coronary interventions in the drug-eluting stent era: a meta-analysis of randomized trials. Eur Heart J 2012; 33: 3078-87.
  • Joner M, et al. Endothelial cell recovery between comparator polymer-based drug-eluting stents. J Am Coll Cardiol 2008; 52: 333-42.
  • PROTECT Steering Committee and Investigators. Stent thrombosis and major clinical events at 3 years after zotarolimus-eluting or sirolimus-eluting coronary stent implantation: a randomised, multicentre, open-label, controlled trial. Lancet 2012; 380: 1396-405.
  • Stefanini GG, et al. Biodegradable polymer drug-eluting stents reduce the risk of stent thrombosis at 4 years in patients undergoing percutaneous coronary intervention: a pooled analysis of individual patient data from the ISAR-TEST 3, ISAR-TEST 4, and LEADERS randomized trials. Eur Heart J 2012; 33: 1214-22.
  • http://clinicaltrials.gov/show/NCT01813435


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