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欧州心臓病学会(ESC 2014)2014年8月30〜9月3日,スペイン・バルセロナ
X-VeRT-除細動を受ける非弁膜症性心房細動患者におけるリバーロキサバンの有効性および安全性
2014.9.6
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Riccardo Cappato氏
Riccardo Cappato氏

リバーロキサバンは除細動を受ける非弁膜症性心房細動患者において,効果的かつ安全なビタミンK拮抗薬の代替薬-9月2日,欧州心臓病学会(ESC Congress 2014)にて,Riccardo Cappato氏(University of Milan,イタリア)が発表した。

●背景・目的

心房細動患者において,除細動は正常洞調律に戻すために行われる一般的な手技である1)。適切な抗凝固療法が行われない場合,周術期の血栓塞栓症リスクは5~7%2)とされている。ビタミンK拮抗薬は除細動周術期に標準的に用いられる抗凝固療法であり3),心房細動が48時間以上持続する,あるいは持続時間不明の場合に,除細動前3週間および除細動後4週間の投与が推奨されている。一方,新規経口抗凝固薬(非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬[NOAC])の投与はpost hoc解析で支持されているのみで,その適切な投与方法を含め,前向きに検討されたものはない4~6)

本試験は,待機的除細動を予定している非弁膜症性心房細動患者において,NOACによる心血管イベント予防の有効性および安全性について検討する初めての前向きランダム化比較試験として,リバーロキサバン1日1回投与と用量調整ビタミンK拮抗薬との比較を行った。有効性の主要評価項目は脳卒中,一過性脳虚血発作(TIA),全身塞栓症,心筋梗塞,心血管死の複合,安全性の主要評価項目はISTH出血基準の重大な出血事象とした。

なお,リバーロキサバンの非劣性を検証するために必要なサンプル数は25,000~30,000例と推測されたが,そのような大規模な試験を行うことは現実的に不可能である。このため,1,500例規模の比較で,臨床的に有用な情報を得ることとした。

●対象

16ヵ国,141施設より,以下の基準に合致する患者を対象とした。
対象:発作が>48時間持続するか,もしくは持続時間が不明の18歳以上の非弁膜症性心房細動患者で,待機的電気的除細動を予定されている症例1,504例。
除外:急性血栓塞栓イベント,血栓症,心筋梗塞,および脳卒中発症から14日以内(後遺障害のある重篤な脳卒中は3ヵ月以内),TIAから3日以内,心内血栓,粘液腫,弁膜症,活動性出血もしくは出血高リスク,クレアチニンクリアランス<30mL分,以下の薬剤を服用中(>100mg/日の長期アスピリンもしくは抗血小板薬2剤併用,強力なcytochrome P450 3A4阻害薬,P糖蛋白阻害薬)。

●方法

電気的除細動施行の時期(早期もしくは遅延)は担当医の裁量とし,リバーロキサバン,ビタミンK拮抗薬をそれぞれ2:1の割合で無作為に割りつけるPROBE試験とした。
早期:施行前に試験薬を1~5日間投与し,施行後は6週間継続。
遅延:施行前に試験薬を3~8週間投与し,施行後は6週間継続。

リバーロキサバン群:1,002例(うち安全性の解析対象988例,有効性の解析対象[modified ITT:mITT]978例)。20mg 1日1回(クレアチニンクリアランス30~49mL/分の患者では15mg 1日1回)投与。
ビタミンK拮抗薬群:502例(499例,492例)。目標PT-INRは2.5(範囲2.0~3.0)。

●患者背景

平均年齢はリバーロキサバン群64.9歳,ビタミンK拮抗薬群64.7歳,女性は27.4%,26.9%であった。平均CHADS2スコアは1.3,1.4,CHA2DS2-VAScスコアは2.3,2.3で,いずれも同程度であった。心房細動の病型は新規診断23.8%,21.1%,発作性17.2%,22.7%,持続性55.9%,50.0%,長期持続性3.0%,5.2%で,両群で同様であった。

●結果

心血管イベント発症率は,両群ともに低く,同程度であった(0.51% vs. 1.02%,相対リスク[RR]0.50,95%CI 0.15-1.73,mITT解析対象集団)。本結果は,mITT,ITT,安全性の解析対象集団のいずれにおいても同様であった。このうち,脳卒中はリバーロキサバン群2例(0.20%),ビタミンK拮抗薬群2例(0.41%)で,リバーロキサバン群の2例はいずれも出血性脳卒中,ビタミンK拮抗薬群の2例はいずれも脳梗塞であった。

重大な出血事象も,両群で同程度であった(0.61% vs. 0.8%,RR 0.76,95%CI 0.21-2.67)。致死性出血はリバーロキサバン群1例(0.1%),ビタミンK拮抗薬群2例(0.4%),頭蓋内出血は2例(0.2%),1例(0.2%)。

無作為割付から除細動までの期間中央値は,早期施行例では両群間に有意差を認めなかった(p=0.628)。しかし遅延待機的除細動施行例については,リバーロキサバン群では22日で,ビタミンK拮抗薬群の30日より短縮された(p<0.001)。また,リバーロキサバン群において予定通り除細動を施行できた割合は77.0%で,ビタミンK拮抗薬群の36.3%にくらべ多かった(p<0.001)。この主な原因は抗凝固が不十分であったことによるものであり,リバーロキサバン群では1例のみ,ビタミンK拮抗薬群では95例に認められた。

●結論

リバーロキサバンはビタミンK拮抗薬の有効かつ安全な代替薬であり,迅速な除細動施行を可能とし,予定通りに除細動を施行できる割合が高いことが示唆された。


Christoph Bode氏
Christoph Bode氏

ディスカッサントのChristoph Bode氏(University of Freiburg,ドイツ)は,以下のように述べた。

X-VeRTは,NOACの進歩の上でランドマークとなる,画期的な試験である。今日まで,電気的もしくは薬理学的除細動を施行する患者へのNOAC投与に関しては,ROCKET AF4),RE-LY5),ARISTOTLE6)の後ろ向きpost hoc解析のデータがあるのみで,NOAC群,ワルファリン群の転帰は同様であると示唆されていた。重要な点は,これらの患者はすべて長期抗凝固療法中であったことである。

X-VeRTは,待機的除細動を予定している非弁膜症性心房細動患者において,NOACによる有効性および安全性について検討する,初めての前向きランダム化比較試験である。本試験で統計学的に有意な結果を得るためには約25,000例が必要となり,現実的には実施が難しい。そのため,本試験は臨床的に有用な情報を得られる患者数(約1,500例)による探索的試験といえる。このリミテーションはあるものの,リバーロキサバンは除細動施行の時期(早期/遅延)にかかわらず,ビタミンK拮抗薬の有効かつ安全な代替薬であるという結論が提示された。本結果は,次回のガイドライン改定に盛り込まれるべきと考えられる。

さらに注目すべきは,ビタミンK拮抗薬群では適切な抗凝固を得るために3週間以上必要であるのに対し,リバーロキサバンは治療期間の短縮化が可能であると示した点である。抗凝固が不適切であったのは,ビタミンK拮抗薬群では95例であったのに対し,リバーロキサバン群では1例のみであった。有効な抗凝固が確実に得られるのであれば,除細動施行の時期を前もって計画できることになる。この進歩は明白であり,医療経済面からの解析もまたれる。

未知の領域を切り開く試験はすべてそうであるように,X-VeRTもまた,さらなる検討を必要とする課題をいくつか示した。試験の評価項目にあたる各イベントは試験中のどの時期に発症したのか?検出された血栓や静脈血栓塞栓症にどのように対処したらよいか?本試験では除細動施行時期(早期/遅延)の割付は無作為でなく,早期施行例では遅延施行例にくらべ経食道エコー(TEE)施行率が高かったが(65% vs. 10%),遅延施行例にTEEをさらに施行したらどうなるか?また,本試験の平均CHA2DS2-VAScスコアは両群とも2.3で,約1/3の患者が0~1点という低リスク患者であったが,高リスク患者についてはどうだろうか?というような点である。

しかしながら,X-VeRTにより,患者を治療する上での装備はより充実し,知見も拡大し,さらなる検討がインスパイアされた。輝かしい成果が得られたことについて,祝意を表したい。

論文(Cappato R, et al. Rivaroxaban vs. vitamin K antagonists for cardioversion in atrial fibrillation. Eur Heart J September 2, 2014. doi:10.1093/eurheartj/ehu367)はこちらからご覧いただけます。
http://eurheartj.oxfordjournals.org/content/early/
2014/08/28/eurheartj.ehu367.abstract

発表スライドはこちらからご覧いただけます。
http://www.clinicaltrialresults.org/Slides/ESC%202014/
Cappato%20-%20XVeRT%20Trial.pdf

文献

  • Hernández-Madrid A, et al. Cardioversion for atrial fibrillation in current European practice: results of the European Heart Rhythm Association survey. Europace 2013; 15: 915-8.
  • Stellbrink C, et al. Safety and efficacy of enoxaparin compared with unfractionated heparin and oral anticoagulants for prevention of thromboembolic complications in cardioversion of nonvalvular atrial fibrillation: the Anticoagulation in Cardioversion using Enoxaparin (ACE) trial. Circulation 2004; 109: 997-1003.
  • Camm AJ, et al. 2012 focused update of the ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation: an update of the 2010 ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation. Developed with the special contribution of the European Heart Rhythm Association. Eur Heart J 2012; 33: 2719-47.
  • Piccini JP, et al. Outcomes after cardioversion and atrial fibrillation ablation in patients treated with rivaroxaban and warfarin in the ROCKET AF trial. J Am Coll Cardiol 2013; 61: 1998-2006.
  • Nagarakanti R, et al. Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation: an analysis of patients undergoing cardioversion. Circulation 2011; 123: 131-6.
  • Flaker G, et al. Efficacy and safety of apixaban in patients after cardioversion for atrial fibrillation: insights from the ARISTOTLE Trial (Apixaban for Reduction in Stroke and Other Thromboembolic Events in Atrial Fibrillation). J Am Coll Cardiol 2014; 63: 1082-7.


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