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欧州心臓病学会(ESC 2014)2014年8月30〜9月3日,スペイン・バルセロナ
John Camm氏に聞く「リバーロキサバンを投与すれば,ほとんどの患者が問題なく除細動を受けることができる」
2014.10.9
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John Camm氏
John Camm氏

●欧州心臓病学会(ESC)では今回,関連学会との合同文書『急性冠症候群合併および/または経皮的冠動脈インターベンションまたは心臓弁インターベンション施行予定の心房細動患者に対する抗血栓療法の管理』1)を発表しました。おもなポイントについてご説明いただけますか。

ビタミンK拮抗薬および抗血小板薬単剤/2剤の併用は,それぞれ心房細動に関連した血栓塞栓症イベント,およびステント内血栓症などの冠動脈疾患イベント予防のために行われており,すでにある程度の経験が得られています。しかし,至適投与レジメンや投与期間を検証した臨床試験はそれほど多くありません。したがって,これまでガイドラインの策定までには至っておらず,エキスパートによるコンセンサスとして,抗凝固療法を要する心房細動と抗血小板療法を要する急性冠症候群を合併している患者に対しては,抗凝固薬と抗血小板薬の併用はできるだけ最小限に留めるべきとしていました。

現在,この患者集団における抗血栓療法をめぐって,二つの大きな変化が起きています。 一つは,抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)に抗凝固薬を加える3剤併用療法は必要ないかもしれないという点です。WOEST2)では,抗凝固療法を必要とするPCI施行例において,ワルファリン+クロピドグレルの2剤併用をワルファリン+クロピドグレル+アスピリンの3剤併用と比較しました。2剤併用では3剤併用にくらべ,主要評価項目(出血イベント)は顕著に少なく,副次評価項目(死亡+心筋梗塞+脳卒中+標的血管再血行再建術+ステント血栓症)も抑制されました。つまり,アスピリンはなくてもよいかもしれない,という結果だったのです。

ただしこの試験には,心房細動患者に対する治療を考える材料とするうえでは,若干の問題があります。全例が心房細動患者ではないこと(合併率は69%)に加え,オープンラベル試験であることや,比較的小規模の試験であることです。抗血小板薬の使用を減らしていくという方向性を示すエビデンスとしては弱いものであったといえます。しかしながら,2014年の米国心臓協会(AHA)・米国心臓学会議(ACC)・米国不整脈学会(HRS)の心房細動治療ガイドラインでも,急性冠症候群をともなう心房細動患者に対し,クロピドグレルと抗凝固薬の併用療法を用いることは可能としています。

WOESTの結果は,今回の合同文書にも取り入れられました。われわれは正しい方向に向かっていると考えていますが,もちろん,今後,より強固なエビデンスが必要であり,現在いくつかの臨床試験が進行中です。

もう一つの変化は,抗凝固薬がビタミンK拮抗薬のみの時代から,NOACの時代へシフトしている点です。しかし現時点では,抗血小板薬単剤/2剤併用にNOACを追加した場合のエビデンスは,さらに乏しい状況です。既存の臨床試験のサブ解析結果などをみると,ワルファリンの場合と同様に,NOACに抗血小板薬単剤・二剤目と追加していくと,抗凝固薬単剤投与にくらべて出血イベントが増加するようですが,いまのところ,NOACがビタミンK拮抗薬に匹敵する有用性はないと解釈する理由はありません。Danish National Registryの最近のデータ3)も,このことを裏付けるものとなっています。

現在,リバーロキサバンとダビガトランのそれぞれについて,抗血小板薬と併用した場合(高用量+抗血小板薬単剤,および低用量+抗血小板薬2剤)の有効性や安全性をビタミンK拮抗薬と比較する臨床試験が開始されており,約2年後には結果が出る予定です。したがって今回の合同文書では,さしあたっての対応として,急性冠症候群を合併している,あるいはPCIやステント留置を施行する心房細動患者に対し,抗血小板薬単剤にNOACを追加投与することも可能としています。

●ESCのホットラインセッションではいくつかの試験の結果が発表されました。なかでもX-VeRTは,除細動を受ける非弁膜症性心房細動患者においてNOACの有効性・安全性を検討したはじめてのRCTとして注目を集めました。研究グループのメンバーのお立場から,コメントをお願いします。

本試験の重要な意義は,除細動施行予定患者におけるNOACの使用について,実用的なエビデンスを提供しようとしている点にあるといえるでしょう。48時間以上発作が持続する心房細動患者が電気的除細動を受ける場合,その後の予測される脳卒中発症率は5~6%と高く,非常に危険です。そのため,予防として長年ビタミンK拮抗薬が使用されてきました。そのようななかで近年,NOACが使用可能になりましたが,除細動を受ける患者にNOACを用いる場合のエビデンスは,まだあまりありません。

既存のNOACの第III相試験から,それぞれ除細動施行患者に関するpost hoc解析が発表されています4~6)。すべて比較的少数の症例における解析ですが,NOACのイベント発症率はビタミンK拮抗薬と同程度で,除細動施行患者にも安全に使用可能であるとの結論でした。それらをうけて,2014年初頭に発表された米国のAHA/ACC/HRSの心房細動治療ガイドライン7)では,電気的除細動施行患者における脳卒中リスク予防のために使用可能な薬剤として,ワルファリンの他にリバーロキサバン,アピキサバン,ダビガトランが含められました。

しかし,より堅固なエビデンスとして,やはり臨床試験が必要です。一般に,除細動施行周術期における脳卒中発症率は,ワルファリンにより約1%まで抑制されるため,発症数は非常に少なくなります。そのため,非劣性試験を行うために必要なサンプル数は25,000~30,000例となり,現実的に不可能です。そこで本試験では,臨床的に意味のある情報が得られると考えられた約1,500例(リバーロキサバン群約1,000例,ワルファリン群約500例)を目標とし,除細動患者を対象とした試験としては過去最大規模での検討を行うことにしました。

全体の成績は,有効性主要評価項目(脳卒中,TIA,全身性塞栓症,心筋梗塞,心血管死)の発症率は,ワルファリン群1.02%(5例),リバーロキサバン群が0.51%(5例)と統計学的有意差には至りませんでしたが,リバーロキサバン群で50%のリスク低下が認められました。重大な出血事象などの出血イベントについても,両群間で同程度でした。

本試験デザインの肝は,除細動の早期施行と遅延施行という層別化解析を行っていることにあります。早期とは,すでにある程度の期間の抗凝固療法期間を経て適切な抗凝固状態にある患者,あるいは経食道心エコーにより左心耳に血栓がないことが確認できた患者であれば,1~2日以内に除細動を実施できるという意味です。遅延除細動施行は,それより標準的な方法で,ワルファリンまたはリバーロキサバンの投与を,適切に3週間以上実施しました。これは,ワルファリン群では,適切な抗凝固状態(プロトロンビン時間国際基準比[PT-INR]2.0~3.0)を達成するのに時間がかかるためです。

この試験における重要な知見は,リバーロキサバンを投与すれば,ほとんどの患者が予定通りに除細動を受けることができることを示した点です。ワルファリンは効果発現までに時間を要し,至適目標域に到達するまで,定期的にPT-INRを測定し,用量調整をする必要があります。また,至適目標域に到達するまでの日数にも個人差があります。そのため,予定通りに除細動を行えないケースも少なくありません。一方,リバーロキサバンでは,迅速な効果発現が期待でき,ワルファリンのようにPT-INRを測定する必要はありません。必要なことは,患者が決められたとおりに薬剤を服用したかどうかを確認することのみです。PT-INRのコントロールのために,予定された除細動を遅らせる必要はないのです。

遅延待機的除細動が選択された患者では,ワルファリン群の95例が抗凝固療法が不十分と判断され,結果的に予定通りに除細動が行われたのは約36%でした。一方,リバーロキサバン群ではそのような患者は1例のみでした。これは重要な違いです。抗凝固作用が予測可能であり,施行予定を組むことが可能であるリバーロキサバンは,ワルファリンよりもはるかに実用的と考えられます。

さらにこの試験の結論として,有効性主要評価項目についてはリバーロキサバンとワルファリンのあいだに統計的有意差は認めなかったものの,50%のリスク低下を認めました。除細動の際の抗凝固療法として,リバーロキサバンはワルファリンにくらべ有用性が高く,除細動までの期間短縮にも寄与することが確認され,臨床的に意義深い,重要な情報を提示することができたといえます。

●近年,非弁膜症性心房細動患者における脳卒中予防効果をもつNOACが登場し,心房細動に対する注目度が高くなっています。

NOACのほかにも,新しい抗不整脈薬や新たなアブレーション治療が開発されてきており,よりよい心房細動治療が行えるようになってきています。しかしながら一方で,自分が心房細動を有していることすら認識していない患者が多数存在していることも事実です。また,病識があってもまったく治療を受けていない患者や,抗血栓療法を受けていてもアスピリンで代用されていたり,たとえワルファリンを服用していても適切な管理が行われていない患者も多数います。今後NOACの普及によって,増加が続く心房細動患者により適切な抗凝固療法が行われていくべきだと考えます。

一方,NOACについては,患者が実際に服用していることを確認するよい方法がないため,アドヒアランスも今後の検討課題だと思います。このように,心房細動患者の管理に関する課題はまだ多くあります。しかし,まずは心房細動には脳梗塞という大きなリスクがあること,それは抗凝固療法により十分に管理可能であり,治療の選択肢が広がっていることを,一般の人々にむけても広く周知させていくことで,ひとりでも多くの心房細動患者さんを脳梗塞から救うことが大切であると思います。

(インタビュー:2014年9月3日)

文献

  • Lip GYH, et al. Management of antithrombotic therapy in atrial fibrillation patients presenting with acute coronary syndrome and/or undergoing percutaneous coronary or valve interventions: a joint consensus document of the European Society of Cardiology Working Group on Thrombosis, European Heart Rhythm Association (EHRA), European Association of Percutaneous Cardiovascular Interventions (EAPCI) and European Association of Acute Cardiac Care (ACCA) endorsed by the Heart Rhythm Society (HRS) and Asia-Pacific Heart Rhythm Society (APHRS). Eur Heart J August 25, 2014.
  • Dewilde WJ, et al.; WOEST study investigators. Use of clopidogrel with or without aspirin in patients taking oral anticoagulant therapy and undergoing percutaneous coronary intervention: an open-label, randomised, controlled trial. Lancet 2013; 381: 1107-15.
  • Lamberts M, et al. Oral anticoagulation and antiplatelets in atrial fibrillation patients after myocardial infarction and coronary intervention. J Am Coll Cardiol. 2013; 62: 981-9.
  • Piccini JP, et al. Outcomes after cardioversion and atrial fibrillation ablation in patients treated with rivaroxaban and warfarin in the ROCKET AF trial. J Am Coll Cardiol 2013; 61: 1998-2006.
  • Nagarakanti R, et al. Dabigatran versus warfarin in patients with atrial fibrillation: an analysis of patients undergoing cardioversion. Circulation 2011; 123: 131-6.
  • Flaker G, et al. Efficacy and safety of apixaban in patients after cardioversion for atrial fibrillation: insights from the ARISTOTLE Trial (Apixaban for Reduction in Stroke and Other Thromboembolic Events in Atrial Fibrillation). J Am Coll Cardiol 2014; 63: 1082-7.
  • January CT, et al. 2014 AHA/ACC/HRS Guideline for the Management of Patients With Atrial Fibrillation: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines and the Heart Rhythm Society. J Am Coll Cardiol 2014 Mar 28.

Dr. A. John Camm
Professor of Clinical Cardiology, St. George’s University of London, United Kingdom


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