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米国心臓協会学術集会(AHA 2014)2014年11月15~19日,米国・シカゴ
リバーロキサバンおよびダビガトランによる炎症マーカーへの影響:RIVAL-AF Study中間報告
2014.12.18
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菊地進之介氏
菊地進之介氏

CHA2DS2-VASc高スコアあるいは炎症マーカー上昇例において,リバーロキサバンが抗炎症作用を発揮する可能性が示唆-11月18日,第87回米国心臓協会学術集会(AHA 2014)にて,菊地進之介氏(国立病院機構相模原病院循環器内科)が発表した。

●背景・方法

新規経口抗凝固薬(NOAC)は,作用機序の違いにより活性型血液凝固第X因子(FXa)阻害薬とトロンビン阻害薬に大別される。FXa,トロンビンはいずれも凝固系の活性化以外の多面的作用をもつことが示唆されている。FXaはプロテアーゼ活性化受容体(PAR)-1およびPAR-2を活性化し,炎症促進性に働くと考えられる。一方,トロンビンはPAR -1を活性化することによる炎症促進性の作用だけでなく,プロテインC-トロンボモジュリン系を介した抗炎症作用も有すると考えられている1, 2)。そのため,FXa阻害薬については抗炎症作用による動脈硬化病変の進展抑制作用が期待される。一方,トロンビン阻害薬については,プロテインC-トロンボモジュリン系の活性化抑制にともない炎症マーカーが上昇するという相反する可能性が指摘されている。

メタ解析からは直接型トロンビン阻害薬ダビガトランが冠動脈イベントリスクを増大させ, FXa阻害薬リバーロキサバンは同リスクを減少させることが報告されている3)。また,リバーロキサバンの長期投与により,炎症性メディエーターの発現がダウンレギュレートすることがアポリポ蛋白E欠損マウスを用いた実験から確認されている4)。しかし,臨床におけるNOACの抗炎症作用に関しては明らかになっていない。

そこで,心房細動患者にダビガトランまたはリバーロキサバンを投与し,両薬剤の抗炎症作用を評価する多施設共同ランダム化比較試験RIVAL-AF Studyを実施した。ここでは中間報告として,炎症マーカーの結果について報告する。

●対象

対象は,CHA2DS2-VAScスコア≧1(女性は2以上)の非弁膜症性心房細動患者141例(リバーロキサバン群71例,ダビガトラン群70例)である。 抗凝固療法禁忌,6ヵ月以内に脳卒中,全身性塞栓症,急性冠症候群,末梢動脈疾患を発症,急性心不全,重篤な慢性腎不全,抗血栓薬2剤併用療法を実施,コントロール不良の高血圧の患者などは除外した。

●方法

対象者をリバーロキサバン15mg 1日1回群あるいはダビガトラン150mg 1日2回群に無作為に割り付け,それぞれの試験薬を6ヵ月間投与した。なお,リバーロキサバン群のうち,クレアチニンクリアランス30~49mL/分の患者には10mg 1日1回,ダビガトラン群のうち出血リスクの高い患者には110mg 1日2回投与とした。 本中間解析では,ベースライン時と6ヵ月後の炎症マーカー(高感度CRP[hsCRP],pentraxin-3[PTX-3],インターロイキン[IL]-6,IL-18)ならびにトロンボモジュリンを評価した。

●結果

対象患者の平均年齢(リバーロキサバン群73歳,ワルファリン群72歳),性別(女性31%,30%)をはじめ,合併症,CHA2DS2-VAScスコア,心房細動の病型,併用薬などの患者背景について,両群間に有意な差はみられなかった。 リバーロキサバン群の投与量は15mgが66%,10mgが34%,ダビガトラン群の投与量は300mgが27%,220mgが73%であった。

6ヵ月後,いずれの炎症マーカーについても,リバーロキサバン群,ダビガトラン群ともにベースライン値からの有意な変化はみられなかった。なお,ダビガトラン群ではトロンボモジュリンの上昇が認められた(p=0.003)。

高リスク患者(CHA2DS2-VAScスコア 4~7)におけるサブグループ解析では,リバーロキサバン群でPTX-3の低下が認められた(p=0.03)。また,各炎症マーカー上昇例(ベースライン値が第1~第2三分位)におけるサブグループ解析でも,リバーロキサバン群でhsCRP(p=0.004)およびPTX-3(p=0.001)の有意な低下が認められた。一方,ダビガトラン群では有意な変化はみられなかった。

●結論

トロンボモジュリンは通常,血管内皮細胞表面に存在し抗血栓作用を発揮しているが,血管内皮がダメージを受けると循環血中に遊離する。そのため,血中トロンボモジュリン高値は血管内皮機能障害を反映している可能性がある。今回の検討で,ダビガトラン群ではトロンボモジュリン上昇が認められたが,炎症マーカーに対してはリバーロキサバン,ダビガトランのいずれも有意な作用はみられなかった。しかし,CHA2DS2-VASc高スコアあるいは炎症マーカー上昇例においては,リバーロキサバンが抗炎症作用を示す傾向がみられ,第Xa因子阻害による動脈硬化進展抑制の可能性が示唆された。

文献

  • Esmon CT. Targeting factor Xa and thrombin: impact on coagulation and beyond. Thromb Haemost 2014; 111: 625-33.
  • Spronk HM, et al. Pleiotropic effects of factor Xa and thrombin: what to expect from novel anticoagulants. Cardiovasc Res 2014; 101: 344-51.
  • Mak KH. Coronary and mortality risk of novel oral antithrombotic agents: a meta-analysis of large randomised trials. BMJ Open 2012; 2. pii: e001592.
  • Zhou Q, et al. Evaluation of plaque stability of advanced atherosclerotic lesions in apo E-deficient mice after treatment with the oral factor Xa inhibitor rivaroxaban. Mediators Inflamm 2011; 2011: 432080.

Kikuchi S, et al. Serial Changes of Inflammatory Markers in Patients Treated With Rivaroxaban or Dabigatran: An Interim Report of the RIVAL-AF Study


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