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第77回日本循環器学会学術集会(JCS 2013) 2013年3月15〜17日,横浜
J-ROCKET AFとROCKET AF −リバーロキサバンのエビデンス−

2013.3.27

堀 正二氏
堀 正二氏(大阪府立成人病センター)

日本独自の臨床試験J-ROCKET AFの結果は14,000例以上を対象とした国際共同研究試験ROCKET AFとの一貫性が認められ,サブグループ解析でもリバーロキサバンの有用性を確認——第77回日本循環器学会学術集会(3月15日〜17日,パシフィコ横浜)で17日に行われた「ミート・ザ・エキスパート10:トライアリストが語る,新しい凝固因子阻害薬のエビデンス」にて,堀正二氏(大阪府立成人病センター)がこれまでに得られているリバーロキサバンのエビデンスを総括した。

●背景

リバーロキサバンによる非弁膜症性心房細動患者における脳卒中発症抑制効果については,ワルファリンと比較した無作為化二重盲検試験として,日本を除く45ヵ国ではROCKET AF(14,264例)1)が,日本では日本独自の試験J-ROCKET AF(1,280例)2)が行われた。

これは,日本人と白人では至適用量が異なることから,日本人に適した用量設定の下,日本独自の試験を行ったためである。すなわち,ROCKET AFではリバーロキサバン20mg/日(腎機能障害患者では15mg/日)が投与されたのに対し,J-ROCKET AFでは,PK-PDデータにもとづき,日本人では15mg/日(腎機能障害患者では10mg/日)への減量投与が選択された。また,目標プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)も異なり,ROCKET AFでは一律に2.0〜3.0としたが,日本では70歳未満では2.0〜3.0,70歳以上では1.6〜2.6と,日本のガイドラインに完全準拠し,日本の実臨床により近い環境下での管理が行われた。また,ROCKET AFでは有効性(脳卒中または全身性塞栓症),J-ROCKET AFは主として安全性(重大な出血または重大ではないが臨床的に問題となる出血)の検証とし,さらに有効性・安全性におけるROCKET AFとの一貫性を確認することで,ROCKET AFの外挿可能性について評価が行われたのが特徴である。

ROCKET AFでは,有効性主要評価項目について,ワルファリンに対する非劣性が示され(ハザード比[HR]0.79,非劣性p<0.001),治験薬投与下でのワルファリンに対する優越性も確認された(HR0.79, 優越性p=0.02)。安全性主要評価項目(重大な出血または重大ではないが臨床的に問題となる出血)は同程度であったが,頭蓋内出血(HR0.67,p=0.02)や,死因となる出血(HR 0.50,p=0.003)については有意な低下が認められた。

●J-ROCKET AF

J-ROCKET AF対象患者の年齢(中央値)はリバーロキサバン群71.0歳およびワルファリン群71.2歳,脳卒中/一過性脳虚血発作既往は63.8%および63.4%,CHADS2スコア(平均)は3.27および3.22であった。クレアチニンクリアランス(CLcr)<50mL/分,すなわち減量対象となる10mgが投与された割合は22.1%および22.4%,両群ともに約90%がワルファリンによる前治療例であった。

新規経口抗凝固薬とワルファリンとの比較試験では,ワルファリン群におけるtime in therapeutic range(TTR),すなわち目標PT-INRが目標とする治療域内にあった時間の割合が重要となる。J-ROCKET AFのワルファリン群におけるTTRは65.0%,目標PT-INRを下回っていた時間の割合は28.0%,超えていたのは6.9%であった。

安全性主要評価項目はリバーロキサバン群18.04%/年およびワルファリン群16.42%/年と同程度であった(HR 1.11,95%CI 0.87〜1.42,非劣性p<0.001)。その内訳では,重大な出血はそれぞれ3.00%/年および3.59%/年,重大ではないが臨床的に問題となる出血は15.42%/年および12.99%/年であった。重大な出血に関する部位別の解析では,頭蓋内出血ならびに重大な消化管出血の発現頻度がリバーロキサバン群で半数程度であった。

有効性主要評価項目については,検出力は十分ではなかったが,リバーロキサバンは抑制傾向を示した(HR 0.49,95%CI 0.24〜1.00,p=0.050)。すべての脳卒中は1.2%/年および2.5%/年(p=0.044),虚血性脳卒中は0.8%/年および2.0%/年(p=0.040)と,いずれもリバーロキサバン群でワルファリン群にくらべ有意に抑制された。出血性脳卒中は両群で同程度であった(0.3%および0.5%,p=0.676)。

●サブグループ解析

CHADS2スコア別の解析では,J-ROCKET AFにおける有効性主要評価項目についてのCHADS2スコア別のHRは,2点:HR 0.46,95%CI 0.09〜2.36,3点:HR 0.57,95%CI 0.14〜2.39,4点:HR 0.57,95%CI 0.18〜1.73,5点:HR 0.25,95%CI 0.03〜2.27であり,CHADS2スコアにかかわらず,リバーロキサバンの優位性は一貫して認められた。ROCKET AFと比較しても,CHADS2スコア別にみた有効性および安全性評価項目については同様の傾向を示し,CHADS2スコアの間に交互作用も認められなかった。

J-ROCKET AFでは約60%3),ROCKET AF4)では約50%が脳卒中または一過性脳虚血発作の既往を有していた。J-ROCKET AFにおける有効性主要評価項目についてのHRは,一次予防集団:HR 0.51,95%CI 0.23〜1.14,二次予防集団:HR 0.39,95%CI 0.08〜2.02と総じてリバーロキサバン群で優る傾向がみられた。リバーロキサバンのワルファリンに対する有効性および安全性評価項目は,ROCKET AFとの比較においても,一次予防,二次予防のいずれについても同様の傾向を認めた。

J-ROCKET AF5),ROCKET AF6)ともに約20%に中等度腎機能障害(CLcr 30〜49mL/分)がみられた。J-ROCKET AFにおける有効性主要評価項目についてのHRは,腎機能正常患者:HR 0.36,95%CI 0.14〜0.93,中等度腎機能障害患者:HR 0.82,95%CI 0.25〜2.69であった。また,安全性評価項目についても腎機能の程度による交互作用は認められなかった。これらのことから,リバーロキサバンのワルファリンに対する有効性,安全性は腎機能の程度とそれにともなう用量調節による影響がみられず,中等度腎機能障害患者に対する10mgへの減量投与の妥当性も示された。

●まとめ

日本人の非弁膜症性心房細動患者において,リバーロキサバンのワルファリンに対する安全性の非劣性が検証された。有効性については検証力が十分でないものの,抑制傾向が示された。J-ROCKET AFの結果は国際共同研究であるROCKET AFと一致していた。また,サブグループ解析によってもリバーロキサバンの一貫した有用性が確かめられた。

本セッションでは,新規経口抗凝固薬の大規模臨床試験にたずさわった試験責任者らによる試験概要の解説後,各薬剤の試験デザインや用量設定根拠などに関して議論が展開された。用量設定に関して,ダビガトランでは2用量での検討,リバーロキサバンではCLcrにもとづく用量設定の下,各用量の有用性が検討されているのに対し,アピキサバンでは低用量での効果については十分検討なされていないのではないか?また,体格の小さい日本人に対して,国際用量は果たして適切といえるのか,たとえばバイオアベイラビリティが低い薬剤では個人差が大きくなることから,曝露量の差が検出されなかったといったことはないのだろうか—など,白熱した議論が展開された。

文献
  1. Patel MR, et al. Rivaroxaban versus warfarin in nonvalvular atrial fibrillation. N Engl J Med 2011; 365: 883-91. [構造化抄録
  2. Hori M, et al. Rivaroxaban vs. warfarin in Japanese patients with atrial fibrillation-The J-ROCKET AF study-. Circ J 2012; 76: 2104-11. [構造化抄録
  3. Tanahashi N, et al. Rivaroxaban versus warfarin in Japanese patients with nonvalvular atrial fibrillation for the secondary prevention of stroke: a subgroup analysis of J-ROCKET AF. J Stroke Cerebrovasc Dis 2013 Jan 22.
  4. Hankey GJ, et al. Rivaroxaban compared with warfarin in patients with atrial fibrillation and previous stroke or transient ischaemic attack: a subgroup analysis of ROCKET AF. Lancet Neurol 2012; 11: 315-22. [構造化抄録
  5. Hori M, et al. Safety and efficacy of adjusted dose of rivaroxaban in Japanese patients with non-valvular atrial fibrillation-Subanalysis of J-ROCEKT AF for patients with moderate renal impairment-. Circ J 2013; 77: 632-8. [構造化抄録
  6. Fox KA, et al. Prevention of stroke and systemic embolism with rivaroxaban compared with warfarin in patients with non-valvular atrial fibrillation and moderate renal impairment. Eur Heart J 2011; 32: 2387-94. [構造化抄録

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