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欧州心臓病学会学術集会(ESC 2013) 2013年8月31日~9月4日,オランダ・アムステルダム
リアルワールドにおけるビタミンK拮抗薬継続率と予後
2013.9.20
後藤信哉氏
後藤信哉氏(東海大学医学部内科学系循環器内科教授)

リアルワールドにおけるビタミンK拮抗薬の中止率は高く,服薬管理とともに患者教育に注力することが重要-欧州心臓病学会(ESC Congress 2013)にて,後藤信哉氏(東海大学医学部内科学系循環器内科教授)が8月31日に発表した。

●非弁膜症性心房細動患者におけるビタミンK拮抗薬継続率

抗凝固療法の適応を有する非弁膜症性心房細動(NVAF)患者において,ビタミンK拮抗薬投与率は50~60%にとどまっている1)。たとえ投与されていても,プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)のコントロールが不良であることが多いと指摘されている。ビタミンK拮抗薬投与の際には用量調節のための定期的な採血が必要となるが,それは患者の負担となる。さらに,ビタミンKを含有する食事の摂取制限のほか,出血リスクにも注意が必要である。これらの問題点がビタミンK拮抗薬の継続率を低下させ,抗凝固療法が十分に実施されていない状況を作り出している。

NVAF患者のリアルワールドでの治療実態や臨床転帰に関する世界規模での観察研究GARFIELD registry*の第1コホート集団の結果,CHADS2スコア2点以上の症例の38%(2,302例)がビタミンK拮抗薬投与を受けていなかった2)。投与されていない理由について調査したところ,「出血リスク」7.4%,「患者のコンプライアンスに対する懸念」5.3%,「ガイドラインの推奨」1.4%,「転倒リスク」6.5%,「脳卒中リスクが低い」4.1%などを理由とした,医師判断によるものが全体の48%を占めていた。その他は「患者の拒否」7.2%,「他の病態により抗血小板薬を服用している」5.1%などであった。

ビタミンK拮抗薬の継続率は,ランダム化比較試験のような患者管理が厳しく行われる状況でも高くない。試験終了時点までの中止率はROCKET AFでは22%3),ARISTOTLEでは28%4)と報告されている。

また,脳梗塞後患者の退院後のリアルワールドでの内服状況調査では,ビタミンK拮抗薬の初年度の中止率は26~43%であった5)。最近のデータでも,1年後の中止率は32%,2年後は43%,5年以内では61%となっている。

●GARFIELD registryのビタミンK拮抗薬服用患者の特性と転帰

GARFIELD registryの第1コホートでは,6週以内に診断された新規のNVAF患者5,525例(全体の52.1%)が前向きに登録され,そのうち2,948例(53.4%)がビタミンK拮抗薬の服用を開始した。これらの症例について,患者特性および転帰の検討を行った。平均年齢は70.6歳,男性は57.4%。病歴は,うっ血性心不全22.6%,高血圧80.0%,糖尿病23.2%,脳卒中/一過性脳虚血発作既往15.0%,末梢動脈疾患6.9%,出血2.4%であった。

塞栓症リスクスコアであるCHADS2スコアは2.0±1.1,CHA2DS2-VAScスコアは3.3±1.6,出血リスクスコアであるHAS-BLEDスコアは1.1±0.8であり,典型的な心房細動患者像と考えられた2)

ビタミンK拮抗薬を中止した場合のイベント発症率について,中止時期別に解析を行った。死亡率は,開始から4ヵ月以内に中止した場合は23.5%,4~8ヵ月以内に中止の場合は14.5%,8~12ヵ月以内に中止の場合は1.2%であった。脳卒中/全身性塞栓症は3.0%,0.6%,0.5%,重大な出血は3.8%,2.4%,0.6%で,いずれも開始から4ヵ月以内に中止した場合に高い傾向がみられた。特に死亡率が高かった理由について,後藤氏は「がんなど,全身状態の悪い患者が含まれていたためと考えられる」と述べた。

●新規経口抗凝固薬とビタミンK拮抗薬の治療継続率の比較

米国のデータ6)では,ダビガトラン投与患者3,370例における継続日数は389日,ワルファリン投与患者1,775例では135日であった。6ヵ月後の継続率はダビガトランの64%に対しワルファリンでは50%,1年後では41%および24%と,ダビガトランのほうが高かった。なお,ダビガトラン,ワルファリンとも,脳卒中リスクが低い患者では治療を中止する傾向にあった6, 7)

●まとめ

脳卒中リスクを有するNVAF患者において,ビタミンK拮抗薬の中止率は高かった。投与されていない理由として,患者自身による中止よりも医療従事者による中止判断が多かった。また,リアルワールドにおけるビタミンK拮抗薬の継続率も十分ではなかったことから,患者の服薬管理とともに,患者指導の重要性が示唆された。

新規経口抗凝固薬の登場は,利便性の観点から服薬アドヒアランスの向上とともに,さらなる予後改善が期待できる可能性がある8)

文献

  • Gomes T, et al. Persistence with therapy among patients treated with warfarin for atrial fibrillation. Arch Intern Med 2012; 172: 1687-9.
  • Kakkar AK, et al. Risk profiles and antithrombotic treatment of patients newly diagnosed with atrial fibrillation at risk of stroke: perspectives from the international, observational, prospective GARFIELD registry. PLoS One 2013; 8: e63479.
  • Patel MR, et al. Rivaroxaban versus warfarin in nonvalvular atrial fibrillation. N Engl J Med 2011; 365: 883-91.
  • Granger CB, et al. Apixaban versus warfarin in patients with atrial fibrillation. N Engl J Med 2011; 365: 981-92.
  • Glader EL, et al. Persistent use of secondary preventive drugs declines rapidly during the first 2 years after stroke. Stroke 2010; 41: 397-401.
  • Francis K, et al. 2012年American Society of Hematologyで発表。
  • Fang MC, et al. Warfarin discontinuation after starting warfarin for atrial fibrillation. Circ Cardiovasc Qual Outcomes 2010; 3: 624-31.
  • Ezekowitz MD, et al. The evolving field of stroke prevention in patients with atrial fibrillation. Stroke 2010; 41: S17-20.

*Global Anticoagulant Registry in the Field(GARFIELD Registry)は,日本を含む約50ヵ国,1,000を超える施設から,心房細動と診断された患者55,000例を登録し,リアルワールドでの治療実態や臨床的転帰を評価する世界規模の前向きコホート研究である。登録は5つの連続コホートに分けて行い,最低2年間の追跡を予定している。第1コホート(10,616例),第2コホート(11,710例)は登録が終了し,2013年9月現在,第3コホートの患者を登録中である。

Goto S. The reality of persistence and compliance in atrial fibrillation.

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