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欧州心臓病学会学術集会(ESC 2013) 2013年8月31日~9月4日,オランダ・アムステルダム
伏見心房細動患者登録研究(Fushimi AF Registry):1年後の血栓塞栓イベント発症率
2013.9.19
赤尾昌治氏
赤尾昌治氏(京都医療センター循環器内科医長・診療科長)

リアルワールドでの抗凝固療法はまだ十分に普及しているとはいえず,投与されていても,十分な予防効果が得られていない-欧州心臓病学会(ESC Congress 2013)にて,赤尾昌治氏(京都医療センター循環器内科医長・診療科長)が8月31日に発表した。

●背景・目的

心房細動は高齢者によくみられる不整脈のひとつであり,その罹患者数は,人口の高齢化に伴い増加している。心房細動は血栓塞栓イベントおよび死亡リスクを上昇させるが,血栓塞栓イベントの発症抑制には,抗凝固療法が有効とされている。

Fushimi AF Registryは,2011年3月,京都市伏見区における心房細動患者を可能な限り全例登録し,患者背景や治療の実態調査,予後追跡を行うことを目的として開始された。同区の人口は283,000人で,人口構成は日本全体とよく一致しており,日本の都市型地域医療の典型例であると考えられる。

本研究の患者登録基準は心電図またはホルター心電図で心房細動が認められた症例とし,除外基準は設けなかった。参加施設は77施設(高度循環器専門施設2施設,小~中規模病院10施設,開業医クリニック65施設)で,2011年3月~2012年12月の期間中,3,378例(人口の1.2%)が登録された。

本解析では,2013年4月時点で1年間の追跡が完了した2,548例について,その患者背景や臨床的転帰などを評価した。

●結果

登録時(2,548例)および1年後(2,271例)の時点における抗凝固療法施行率は,それぞれ54.6%および55.0%であった。内訳は,ワルファリンが52.5%および49.4%,ダビガトランが2.1%および5.2%,リバーロキサバンが0%および0.4%で,本研究では大半の症例が新規経口抗凝固薬の普及以前に登録されたことから,抗凝固療法の大半はワルファリンであった。 抗凝固療法の有無別の患者背景は,平均年齢74.2歳および73.0歳,平均CHADS2スコアはそれぞれ2.31および1.78と,抗凝固療法あり群で高かった。

次に,これらの臨床的転帰についてみたところ,脳卒中発症率は抗凝固療法あり群およびなし群でそれぞれ2.89%および3.05%,大出血発現率は1.52%および1.92%と,いずれも有意差は認めなかった。一方,全死亡率は5.41%および8.63%と,抗凝固療法なし群で有意に高かった。

新規経口抗凝固薬の第III相試験とくらべて,Fushimi AF Registryでの脳卒中の発症率が高く,大出血の発現率が低かったことは(第III相試験では脳卒中1.5%,大出血3%程度),抗凝固療法を受けている患者が全体の約半数にとどまっていること(抗凝固薬のunder-use)が背景にあると考えられた。さらに,脳卒中や大出血について抗凝固療法の有無で有意な差がなかった理由として,リアルワールドでは,抗凝固療法が行われていても,出血を怖れるあまり低い強度でのコントロールが行われている可能性が示唆された(抗凝固薬のunder-dose)。

死亡率については,抗凝固療法なし群で高かったが,この理由について赤尾氏は「末期がんや虚弱高齢者など,医師が抗凝固療法を躊躇するような全身状態の悪い患者を含むためと考えられる」と述べた。

次に,脳卒中発症のリスク因子について検討した。発症率の有意な上昇がみられたのは,うっ血性心不全,脳卒中/一過性脳虚血発作(TIA)既往,慢性腎臓病,高齢(75歳以上)であった(いずれもp<0.01)。ステップワイズ重回帰分析の結果,脳卒中/TIA既往(OR 3.14,p<0.01)および75歳以上(OR 2.30,p<0.01)のみが独立したリスク因子であり,他の項目には関連がみられなかった。

●結論

Fushimi AF Registryは,日本のリアルワールドにおける心房細動診療の実態を反映するものである。本研究から,抗凝固療法の普及は約半数と,十分ではない現状が明らかになった。抗凝固療法実施例と非実施例で血栓塞栓イベントや出血イベントの発症率に差はみられなかった。抗凝固療法が行われたとしても,低い強度でのコントロールが行われており,その結果,出血イベント発症率は比較的低いが,血栓塞栓イベント予防が不十分である可能性が示唆された。

伏見心房細動患者登録研究(Fushimi AF Registry)
代表:赤尾昌治氏(国立病院機構京都医療センター)
UMIN試験ID:UMIN000005834
公式ウェブサイト

Akao M, et al. Incidence of thromboembolic events in patients with atrial fibrillation in Japan: one-year follow-up from the Fushimi AF registry. Eur Heart J 2013; 34(Abstract Supplement ), 98. [abstract: P533

AHA 2013での伏見心房細動患者登録研究(Fushimi AF Registry)の発表はこちらからご覧いただけます。

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