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欧州心臓病学会学術集会(ESC 2013) 2013年8月31日~9月4日,オランダ・アムステルダム
新規経口抗凝固薬の使用におけるプラクティカルガイド
2013.10.1
Hein Heidbuchel氏
Hein Heidbuchel氏

欧州心臓病学会(ESC Congress 2013)にて9月1日に行われたサテライトシンポジウム「Novel oral anticoagulants and the cardiologist - Taking pivotal trial evidence into real-world practice」より,Hein Heidbuchel氏(University of Leuven,ベルギー)の発表内容を紹介する。

●新規経口抗凝固薬の使用に関するプラクティカルガイドとは

2013年5月,欧州不整脈学会(EHRA)は「非弁膜症性心房細動患者における新規経口抗凝固薬のプラクティカルガイド」を発表した1)。本ガイドは15の具体的なトピックス(表1)を提示し,4種類の新規経口抗凝固薬(ダビガトラン,リバーロキサバン,アピキサバン,エドキサバン)を使用するにあたっての情報を提供している。

表1 プラクティカルガイドの内容 
新規抗凝固薬について,以下の項目を記載。

(1) 開始とフォローアップのスキーム
(2) 凝固能検査とその評価
(3) 薬物-薬物相互作用と薬物動態
(4) 抗凝固薬間の切り替え
(5) 服薬アドヒアランスの確認
(6) 服用ミスへの対処
(7) 慢性腎疾患患者への対応
(8) 出血合併症はないが過量投与が疑われる場合の対処
(9) 出血合併症の管理
(10) 待機的外科的インターベンションまたはアブレーション施行時の周術期抗凝固療法
(11) 緊急的外科的手技施行時の周術期抗凝固療法
(12) 冠動脈疾患合併心房細動患者への対応
(13) 電気的除細動施行時の周術期抗凝固療法
(14) 急性脳卒中発症時の対応
(15) 癌合併心房細動患者におけるビタミンK拮抗薬との比較

ESCのウェブサイトでは,要約2)や患者用診察情報カード,フィードバックフォームなどがまとめて提供され,すべてPDFでダウンロード可能である(www.NOACforAF.eu)。患者用診察情報カードには,患者の氏名や住所などの個人情報,受診日,血液検査結果,併用薬剤などを記入するようになっており,英語に加えて10の言語で用意されている。また,コンプライアンスや血栓塞栓症/出血合併症発症の有無などの受診時のチェックポイントや,服用を忘れないよう呼びかける文章が記載されている。 ここでは,プラクティカルガイドの15のトピックスのうち主要な項目について,その内容を紹介する。

●抗凝固薬間の切り替え

1) ビタミンK拮抗薬から新規経口抗凝固薬への切り替え*
プロトロンビン時間国際標準比(PT-INR)が治療域を下回っていれば,新規経口抗凝固薬を開始する。治療域の中央値~下限の場合も投与開始(または翌日に開始)。治療域の中央値~上限の場合は,実際のPT-INR値およびビタミンK拮抗薬の半減期から推定して,投与開始時期を決定する。

2) 新規経口抗凝固薬からビタミンK拮抗薬への切り替え
ビタミンK拮抗薬の効果発現までに5~10日を要することから,PT-INRが治療域の下限を超えるまで,新規経口抗凝固薬とビタミンK拮抗薬の併用投与を行う。なお,測定は新規経口抗凝固薬の服用直前に行うことが重要である。新規経口抗凝固薬の最終投与から24時間後にPT-INRを再測定し,抗凝固能を確認する。連続3回の測定でPT-INRが治療域の範囲内となるまで,頻回にPT-INRを測定する。

3) 低分子量ヘパリンから新規経口抗凝固薬への切り替え
低分子量ヘパリンの次回投与時から,ヘパリンの代わりに新規経口抗凝固薬を開始する。

4) 未分画ヘパリンから新規経口抗凝固薬への切り替え
未分画ヘパリン中止時(血中半減期±2時間)から新規経口抗凝固薬を開始する。

●新規経口抗凝固薬と腎疾患

現在承認されている新規経口抗凝固薬3剤の腎排泄率は,ダビガトランでは80%,リバーロキサバンでは35%,アピキサバンでは27%と異なる。欧州では,ダビガトランはクレアチニンクリアランス(CrCl)<30mL/分,リバーロキサバンおよびアピキサバンではCrCl<15mL/分の患者では適応外となっている。

腎機能障害が軽度の場合は,減量は必要ない。中等度の場合は,その程度により投与量を減らす。減量の基準は薬剤によって異なるため,注意が必要である(文献1表7)。

●薬物間相互作用

プラクティカルガイドでは,薬物相互作用および年齢などの臨床因子による血漿中の薬物濃度への影響について,色分けして一覧表にまとめている(文献1表5)。ここでは,4つの新規経口抗凝固薬と相互作用のある薬剤が網羅されている。プラクティカルガイドの中でも特に重要な表である。赤は「禁忌または推奨しない」,オレンジは「減量」,黄色は「該当項目が複数あれば減量を考慮すべき」,白は「影響なし」,斜線は「データがない,または薬物動態データにもとづく推奨」を示す。

●服用ミスへの対処

1) 服用を忘れた場合
埋め合わせのために倍量を服用することは禁止。ただし,服用間隔の半分をすぎていない時点で気がついた場合は,その時点で服用する。半分以上経過して気がついたときは,その時点では服用せず,次の通常服用時間に服用する。

2) 倍量服用してしまった場合
1日1回投与の新規経口抗凝固薬では,通常量のレジメンを継続する。1日2回投与の薬剤では,次の服用タイミングのみ服用を中止し,その次の服用時間から服用を再開する(高リスク患者の場合は,次の服用タイミングから再開する)。

3) 服用したかわからない場合
1日1回投与の新規経口抗凝固薬では,その時点で1回分の用量を服用し,その後は通常の服用とする。1日2回投与の薬剤では,その時点では服用せず,次の服用時間から通常の服用とする。

●まとめ

新規経口抗凝固薬を投与するうえでは,患者教育や適切なフォローアップや,腎機能などに応じた用量調節,抗凝固薬間の切り替えや服用を忘れたときの対処など,実際の状況に即した対応が必要である。今回のプラクティカルガイドは,これらに関する有用な情報をわかりやすく示したものである。今後の臨床現場での活用を期待したい。

*:日本の添付文書での記載内容とは異なります。

文献

  • Heidbuchel H, et al. European Heart Rhythm Association Practical Guide on the use of new oral anticoagulants in patients with non-valvular atrial fibrillation. Europace 2013; 15: 625-51.
  • Heidbuchel H, et al. EHRA Practical Guide on the use of new oral anticoagulants in patients with non-valvular atrial fibrillation: executive summary. Eur Heart J 2013; 34: 2094-106.

Heidbuchel H. Practical use of novel oral anticoagulants: the European Heart Rhythm Association guide.

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