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HOME > 主要学会レポート > 第85回米国心臓協会学術集会(AHA 2012)
第85回米国心臓協会学術集会(AHA 2012)2012年11月3〜7日,米国・ロサンゼルス
Patel氏に聞く
「有効で利便性の高い治療−新規経口抗凝固薬による新しい時代が始まった」
2012.12.21
Patel MR氏
Manesh R. Patel氏

●はじめに,ROCKET AF1)についてご説明いただけますか。
ROCKET AFは,非弁膜症性心房細動患者の脳卒中または全身性塞栓症発症抑制において,リバーロキサバンのワルファリンに対する非劣性を検証した,国際的な大規模臨床試験です。

検討の結果,有効性についてはリバーロキサバンの非劣性が示されました。安全性(重大な出血事象または重大ではないが臨床的に問題となる出血事象)は両群間で同程度でしたが,死因となった出血および頭蓋内出血はリバーロキサバン群のほうが有意に少なかったことが大きな特長です。

この試験により,リバーロキサバンの有効性および安全性が確認され,ワルファリンに代わる選択肢であることが示されたといえます。

●ROCKET AFで対象とした中等度から高リスクの患者は,臨床医が普段みている患者を代表するものなのでしょうか。
実臨床ではさまざまな患者がいます。年齢層は幅広く,抱えているリスク因子も多岐にわたります。ROCKET AFはCHADS2スコア≧2(中等度から高リスク)の患者を対象としており,これは実地臨床における患者集団の大部分であるといえるでしょう。リスクの低い患者もいますが,CHADS2スコアにかかわらず,一貫した有効性および安全性が示されたことは,低リスク患者でも有効であることを示していると考えます。

●今回のAHA 2012では,除細動,アブレーションに関するサブ解析が発表されました。
通常CHADS2スコア3以上の患者に対し除細動が行われることはまれです。ROCKET AFでも除細動やアブレーションの施行は少なく,14,264例中364例にすぎませんでした。しかし,心房細動患者の管理を考えるうえで,除細動やアブレーションは重要な問題です。

除細動/アブレーション施行例を対象とした解析の結果,リバーロキサバン群における有効性,安全性のいずれもワルファリン群と同程度でした。リバーロキサバンが除細動/アブレーション施行例に対しても有用であると示されたことは,高く評価したいと思います。

●日本では国際共同試験とは別に独自の試験(J-ROCKET AF2))が行われ,日本人におけるリバーロキサバンの安全性が示されました。この結果についてどのようにお考えですか。
J-ROCKET AFでは,安全性について,リバーロキサバンのワルファリンに対する非劣性が証明されました。また,症例数は十分ではありませんが,有効性についても明確なイベント抑制傾向がみられました。リバーロキサバンについて,日本人患者でも確固たる裏付けが得られたという,非常に意義深い結果です。また,欧米とは体格の異なる日本人患者に対するリバーロキサバンの用量の妥当性が示されたことも,診療にあたる日本の仲間を安心させたことと思います。

●近年,国際主要学会から心房細動患者管理に関するガイドラインや推奨が出されていますが,どの程度受け入れられているとお考えですか。
欧州心臓病学会(ESC)ガイドラインの一部アップデート3)では,CHA2DS2-VAScスコアを用いて真の低リスク患者を特定すること,また,リスクのある患者に対してはワルファリンよりも新規抗凝固薬を優先して投与することを推奨しました。このように,現在の主要なガイドラインの趨勢は新規抗凝固薬を重視する方向に進んでいます。これは正しい判断だと思います。臨床試験で確認された有用性データを基に,国や地域を問わず,多くの医師がワルファリンよりも新規抗凝固薬を使いたいと考えているのではないでしょうか。

患者の視点からも,新規抗凝固薬のほうが好ましいと考えます。新規抗凝固薬はワルファリンと少なくとも同程度の有効性を有しており,PT-INRモニタリングの必要がなく,薬物相互作用が少ないなど,利便性に関してはワルファリンをはるかにしのいでいます。ただし,新規抗凝固薬は複数あり,それぞれに特徴があります。どの新規抗凝固薬にするか,医師は患者の意向を確認することが必要でしょう。リバーロキサバンは忍容性が良好であり,魅力的な治療プロファイルを有しています。特に,ワルファリン服用患者で,食事制限によるQOL低下を感じられている方や,併用薬剤の多い方,1日1回の投与を希望する人に適していると思います。

しかしながら,心房細動患者の管理を考えるとき,抗凝固薬療法を受けていない患者がいることを忘れてはなりません。たとえばGARFIELD Registryでは,まったく抗凝固薬を使用していない心房細動患者が全体の約40%を占めることが示されています。脳卒中リスクにさらされているすべての心房細動患者が抗凝固薬を用いるべきであることを考えると,これは非常に残念な状況です。新規抗凝固薬の登場と普及により,この問題が改善されることを望みます。

●新規抗凝固薬が適切でないのはどのような患者でしょうか。
使用中に出血や潰瘍などが発現した,忍容性に問題のある患者です。そのような患者にはワルファリンを試みる必要があります。ただしワルファリンに関しても,リスク因子は似たようなものですが。また,服薬コンプライアンスも問題になります。ワルファリンは半減期が長いため,コンプライアンスが低い患者に適しているという意見がありますが,私はまったく同意できません。コンプライアンスが不良な患者は,処方されたのがワルファリンであろうが,新規抗凝固薬であろうが,きちんと服用しないと考えられるからです。

●新規抗凝固薬に対して,Patel先生の診られている患者の反応はどうですか。
素晴らしい薬だといわれます。抗凝固薬をはじめて使用する患者ではごく自然に開始できていますし,ワルファリンを使用してきた患者にとっては,モニタリングのための通院や食事制限など,これまでの大きな負担がなくなることはまさに画期的な進歩と感じられるようです。

新規抗凝固薬は,冠動脈疾患に対する有用性についてはもうしばらく様子をみる必要がありますが,心房細動や静脈血栓塞栓症の管理については大きな前進をもたらしました。有効で利便性の高い治療が可能な,新しい時代が始まったのです。

(インタビュー:2012年11月7日)

文献

  • Patel MR, et al.; the ROCKET AF Investigators. Rivaroxaban versus Warfarin in Nonvalvular Atrial Fibrillation. N Engl J Med 2011; 365: 883-91. [構造化抄録
  • Hori M, et al.; on behalf of the J-ROCKET AF study investigators. Rivaroxaban vs. Warfarin in Japanese Patients With Atrial Fibrillation. Circ J 2012; 76: 2104-11. [構造化抄録
  • Authors/Task Force Members, Camm AJ, et al. 2012 focused update of the ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation: An update of the 2010 ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation. Eur Heart J 2012; 33: 2719-47.
Dr. Manesh Patel(Duke University Medical Center,米国)

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